昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
抑うつ状態における抗うつ剤の血中動態と評価尺度との関係に関する研究
猪狩 中橋本 俊明田玉 逸男西島 久男豊田 益広西田 正彰
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 46 巻 4 号 p. 457-468

詳細
抄録

三環系抗うつ剤AMT, IMPの単独もしくはAMT+IMP併用療法を行なった抑うつ状態を呈する外来患者38例について, 薬物の血清濃度をHPLCを用いて測定し, 得られた血清濃度と精神症状との関係を経時的に追跡して次のような結果を得た.1) HPLCを用いて, 抗うつ剤の単独のみならず多剤併用 (AMT, NRT, IMP, DMI) でも血清濃度の測定が可能であり, なおかつカラムの劣化をおこしにくく, UV254nmでも充分な感度を示し, 簡便かつ正確な方法を考案した.2) AMTでは用量依存性が大きく, 投与開始2週目より臨床効果の出現を認め, 4週目で治療効果の判定が可能であった。3) IMPについては従来指摘されている相関関係は認められないが, 100ng/ml以上の血清濃度に達すると臨床効果が出現する.また, 定常状態に至るまでに2週間以上をようする。4) AMTとIMPの併用療法ではAMTはIMPの影響をうけにくく, 単剤投与時と変わりない動態を示すが, IMPの場合は, 単独投与と併用時において投与量に対しての反応性に若干の差がみられ, 単独投与では用量依存性があまり認められず, 症状改善を遅延させる可能性もある.IMPは個体の薬物に対する反応性が大きく影響するようであり, 症例の選択が必要のようである.5) IMPの単独投与の場合, いたずらに投与量を変えることは無意味で, 血清濃度の測定による合理的な投与計画を建てることが必要である。6) DRS-S78, HRSを用いて症状の経時的変化を評価することは薬剤の治療効果判定上大いに有効である.7) RSと血清濃度測定との併用で治療効果の予測が従来より早期に可能になる.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top