昭和医学会雑誌
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46 巻, 4 号
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  • 副島 和彦, 神田 実喜男
    1986 年 46 巻 4 号 p. 439-442
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • (Alpha-Naphthyl-Acetate-Esterase染色による検索)
    杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 別所 知彦, 飯田 善樹, 大原 秀治, 鈴木 孝
    1986 年 46 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    70例の非特異性リンパ節炎を7つの年齢層 (0~9歳, 10~19歳20~29歳, 30~39歳, 40~49歳, 50~59歳及び60歳以上) に分けT cellとPlasma cell Seriesの変動を検索した.観察例はすべてANAE染色を施行したリンパ節のスタンプ標本である.Ageingに伴ってT cellは減少がみられ40~49歳のグループで著減を示した.諸家の末稍血における免疫学的検索と同様, 今回の細胞化学的所見の結果はリンパ節内においてもT cellが減少することを示しており, 高齢に伴う細胞性免疫の障害を示唆する現象と思われる.Plasma cell Seriesではageingとの間に密な相関は認められなかった.
  • 杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 別所 知彦, 飯田 善樹, 大原 秀治, 鈴木 孝
    1986 年 46 巻 4 号 p. 449-452
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性非特異性リンパ節炎16例のリンパ節スタンプ標本につきAlpha-Naphthyl-Acetate-Esterase (ANAE) 及びAdenosine Triphosphatase (ATPase) 染色を行なった.ANAE-droplet positive cellが多い症例ではATPase陽性を示すcellは少なく, 逆にATPase-positive cellが多い症例においてはANAE-droplet positive cellは減少がみられた.リンパ節疾患におけるT-, B cellの比を検索する場合, T cellに特異的な陽性を示すANAE及びAcid Phosphatase染色とB cellに陽性を示すATPase染色を併用することはT-, B cellそれぞれのpopulationの算定に有効かつ簡便な方法といえる.なお組織学的所見と比較すると二次小節の増生を主とするリンパ節炎においてはATPase-positive cellが優勢であり, paracortical area (T zone) の増大を示す例ではANAE-droplet positive cellが増加しており, スタンプ標本における両染色の所見と密な関連を示した.
  • 杉山 喜彦, 光谷 俊幸, 塩川 章, 九島 巳樹, 別所 知彦, 渡辺 秀義, 飯田 善樹, 大原 秀治, 鈴木 孝
    1986 年 46 巻 4 号 p. 453-455
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    病理組織学的及び免疫学的にB cell typeのChronic Lymphocytic Leukemia (CLL) と診断された12例につきANAE染色とATPase染色をリンパ節のスタンプ標本を用いて行なった.すべての症例においてANAE活性は減弱がみられたのに反しATPase活性は全例に増加が認められた.ANAE染色がT cellマーカーになるのと同様にATPase染色はB cellマーカーとしてリンパ節疾患の補助診断となりうる方法と思われた.
  • 猪狩 中, 橋本 俊明, 田玉 逸男, 西島 久男, 豊田 益広, 西田 正彰
    1986 年 46 巻 4 号 p. 457-468
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    三環系抗うつ剤AMT, IMPの単独もしくはAMT+IMP併用療法を行なった抑うつ状態を呈する外来患者38例について, 薬物の血清濃度をHPLCを用いて測定し, 得られた血清濃度と精神症状との関係を経時的に追跡して次のような結果を得た.1) HPLCを用いて, 抗うつ剤の単独のみならず多剤併用 (AMT, NRT, IMP, DMI) でも血清濃度の測定が可能であり, なおかつカラムの劣化をおこしにくく, UV254nmでも充分な感度を示し, 簡便かつ正確な方法を考案した.2) AMTでは用量依存性が大きく, 投与開始2週目より臨床効果の出現を認め, 4週目で治療効果の判定が可能であった。3) IMPについては従来指摘されている相関関係は認められないが, 100ng/ml以上の血清濃度に達すると臨床効果が出現する.また, 定常状態に至るまでに2週間以上をようする。4) AMTとIMPの併用療法ではAMTはIMPの影響をうけにくく, 単剤投与時と変わりない動態を示すが, IMPの場合は, 単独投与と併用時において投与量に対しての反応性に若干の差がみられ, 単独投与では用量依存性があまり認められず, 症状改善を遅延させる可能性もある.IMPは個体の薬物に対する反応性が大きく影響するようであり, 症例の選択が必要のようである.5) IMPの単独投与の場合, いたずらに投与量を変えることは無意味で, 血清濃度の測定による合理的な投与計画を建てることが必要である。6) DRS-S78, HRSを用いて症状の経時的変化を評価することは薬剤の治療効果判定上大いに有効である.7) RSと血清濃度測定との併用で治療効果の予測が従来より早期に可能になる.
  • 森田 一史
    1986 年 46 巻 4 号 p. 469-478
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    筋腱移行部の微細構造を立体的に観察する為, 走査型電子顕微鏡 (scanning electron microscopy: SEM) を用い, 正常家兎の大腿直筋, 内, 外側広筋および腓腹筋の観察を行い, 透過型電子顕微鏡, 光学顕微鏡による筋腱移行部の研究の文献的考察を加え, 比較検討した。筋の収縮, 弛緩に対し, 筋腱移行部にどのような変化が起こるのかを観察する為, 筋を電気刺激により強縮状態とし, そのまま液体窒素で凍結, 固定し, EDTAによる脱カルシウムイオン作用により弛緩状態とし固定し, 両者を比較した.光学顕微鏡による観察は, それらの補助としたが, 以下次の結果を得た. (1) 筋と腱の結合は, 筋内膜, 筋周膜と腱組織の結合織性の結合と, 筋線維先端と腱組織の, 膠原線維を介した結合の2つによる。 (2) 筋組織と腱組織は, 明瞭に区別することができ, 互いの組織内に入り込むことはない. (3) 腱は, 筋腱移行部において板状の形をなしてゆき, その一側面 (境界面と呼ぶ) で筋と結合する.この際, 筋は, 筋線維, 筋原線維の先端をもって腱の境界面に斜めに結合していた. (4) 筋の結合織である, 筋内膜, 筋周膜は, 腱境界面の膠原線維へ移行してゆき, 筋と腱を結合していた. (5) 筋線維は, 腱境界面にその先端を向けて斜めに走行してゆき, その先端では筋原線維ごとに, 細い膠原線維により腱境界面と結合されていた.SEMでは筋原線維のZ膜, 筋節, T系 (T system) の観察が行われ, Z膜でT系により隣接する筋原線維が結びつけられ, 格子を形成していた.筋鞘の観察は充分になし得なかった. (6) 筋原線維先端は, Z膜で終っており, 細い膠原線維は最先端の筋節に結合し, 腱境界面と筋原線維をつないでいた. (7) 筋の矢状断面で, 腱線維と筋線維のなす角を, 筋の腱に対する入射角とすると, 腓腹筋において入射角は, 筋収縮時約35°と増大し, 弛緩時に約25°と減少した。尚筋節は, 筋収縮時約1.4μm, 弛緩時約2.0μmの長さであり, 形も丸みをおびた感じから, 細長い感じとなっていた。 (8) 筋と腱の結合状態は, 筋の矢状面, 前額面で明らかとなり, 横断面でははっきりと確認できなかった.
  • ―末梢血管収縮反応について―
    山崎 信也
    1986 年 46 巻 4 号 p. 479-485
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    騒音の循環器への影響の1つとして, 音による末梢血管収縮反応を指標として取り上げた.この反応は指先脈波を用いて多くの研究者により行われており, 音に鋭敏な反応であることが確認されている.この反応はまた, 年令, 騒音のレベル, 周波数などにより一定の反応があることが知られている.70dB以上の騒音職場の労働者は循環器系への影響や各種神経症の増加が起るだろうことが指摘されている.しかし, 音による末稍血管縮反応が幹線道路沿道のような騒音レベルが70dBA近くの場所に住む人々が静かな所に住む人々と異ったふるまいを示すかどうかをみた研究は殆んどみない.本研究では昼間の騒音が61~76dBAの幹線道路沿道の女性住民86名, 同様に昼の騒音が45~55dBAの静かな住宅地の女性住民42名について65, 75, 85dBAの立ち上り, 立ち下り速度が10dB/sの台形音が約1分周期で6回出現する音をヘッドホンにより曝露し, 指先脈波を記録, 分析した.実験時間は1人約6分間で, 拘束による影響を少なくするようにした.実験中椅座安静を保たせた.結果は, 1) 反応は騒音レベルの上昇に伴い強くなった.2) ピンクノイズよりホワイトノイズに対しての反応の方が強かった.3) 騒音に対しても, ノイズの種類に対しても反応は道路沿道住民の方が住宅地住民より強い反応を示した.特に住宅地住民は低いレベルの65dBAではノイズの種類に対する反応が, 75, 85dBAに対する反応とは反対であった.この結果はこれまでの研究とほぼ一致するもので, 本実験中, 音による血管収管収縮反応は65~85dBAで顕著に出現し, 音に対して鋭敏な指標であることが確認された.本研究の目的の1つは幹線道路沿道住民が道路騒音によりどの程度影響を受けているかを調べる指標として末梢血管収縮反応が適当かどうかを検討するところにある.本実験の結果から幹線道路沿道住民の反応と静かな住宅地の住民の反応とを区別することができたことから, 道路騒音による影響を調べる指標として適当であろうことは推測できるが, 約6分間の間欠騒音曝露の検査方法は検討の余地があろう.しかし, 拘束条件としては, 安静椅座で, 着脱が簡便で負担が殆んどないトランスジューサーを指に着ける等から, 余り強い拘束ではないと考えられる.
  • 櫻井 秀樹
    1986 年 46 巻 4 号 p. 487-506
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    表在性膀胱腫瘍35例に対し, CarboquoneとCytosine arabinosideの膀胱内注入療法を施行し, 著効12例, 有効13例, やや有効1例, 無効9例 (内4例はGradeが変化) であった.正常膀胱粘膜上皮, 炎症膀胱粘膜上皮, 高分化型および低分化型腫瘍細胞について光顕的電顕的に比較検討し, また注入療法前後に腫瘍組織を採取し, その変化を有効例, 無効例および増悪例に分類して光顕的電顕的に観察した.正常膀胱粘膜上皮は, 表層, 中間層, 基底層の三層に分類でき, 表層の細胞ほど核や細胞内小器官の発達が良好であった.また内腟; 面形質膜はAUMを呈する部分も見られた.炎症膀胱粘膜上皮は, 細胞自体に特に顕著な変化は無かったが, 接着装置の減少, 細胞間隙の拡大, 細胞の剥離脱落, 上皮, 粘膜下組織に炎症細胞の浸潤が見られた.膀胱腫瘍細胞では, 細胞配列の不規則化, 表面形態の多様化, SUM部分の増加, 接着装置の減少, 核細胞質比の増大, 核の不整形化, vesicles, mitochondria, Golgi装置, 核小体の減少, free ribosomesの増加, 束状tonofilamentsの増加, 基底膜構造の不明瞭化と消失, 暗細胞の出現などが見られたが, これは低分化となるほど強く見られる傾向があった.注入療法後の変化として, 有効例では, 腫瘍細胞の脱落壊死, 細胞間隙の拡大, microvilliの嚢胞化と破壊, 細胞質の淡明化と融解, 核の腫大と淡明化, 核膜の嚢状化, chromatinの減少, 核小体の消失, mitochondriaの膨化変形, Golgi装置, free ribosomesの減少, 小胞体の拡張傾向と減少, tonofilamentsの減少などが見られたが, この変化は表層程強い傾向があった.基底膜, 間質の露出, 間質に出血と炎症細胞の浸潤が見られた.無効例は径1cm以上の腫瘍が多く, 一部では有効例と同様の変化も見られたが, 大部分の, 特に深層の細胞にはほとんど変化は見られなかった.増悪例, 特にGrade IからGrade IIIに変化した症例では, 一部に腫瘍細胞の変性壊死が見られたが, 大部分の腫瘍細胞は悪性化し, 他の低分化型の浸潤性腫瘍と同様の所見を示した.抗癌剤膀胱内注入療法は, 他の抗癌剤投与法と同様に, 多剤併用療法を用いた方が効果が得られ, 従来から言われているように, 特に腫瘍径が1cm以下の高分化型腫瘍に有効な治療法であるが, 低分化型の浸潤性腫瘍の治療法としては限界があることが示唆された.
  • 長田 道夫
    1986 年 46 巻 4 号 p. 507-516
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    極小未熟児の死因について検討するため, 過去13年間の極小未熟児剖検例144例について, 主病診断の変遷を調べた.次に, NICU導入後の104例について在胎週数別, 出生体重別, SFDとAFD別, 生存期間別, および主病診断と副所見の相関について検討した.1: NICU導入後新生児剖検例に占める極小未熟児の割合が増加した.2: 剖検主病診断ではNICU導入後, 肺拡張不全, 肺出血は減少し, かわってHMD, SEH/IVH, 感染症が増加する傾向にあった.3: NICU導入後の副病変を含めた病理組織学的所見では, 呼吸器疾患は依然多く, それらに対する呼吸管理の困難性を示した.また, SEH/IVHは増加傾向にあり, 致命的である重要な疾患であった.感染症は近年の医療レベルの進歩に伴い急激に増加している疾患であり, 90%はlate onset typeであった.これらは, 中枢神経病変を合併する頻度が低く, 感染症の発症さえなければintact survivalとなる可能性が考えられた.4: 感染症はSFDに多く見られたが, HMD, SEHIIVHなどはこの傾向になかった.奇形は出生体重1250-1499gのSFDにとっては重要な死因であった.5: 主病診断と副病変の関係では, 原発性の低酸素性病変ではSEH/IVHを高頻度に合併しSEH/IVHを主病診断とするものには肺硝子膜形成や, 他の出血性疾患をよく合併していた.感染症は肺炎, BPD, 副腎出血の合併が多かった.
  • 加藤 貞明, 片岡 徹, 河村 正敏, 河村 一敏
    1986 年 46 巻 4 号 p. 517-532
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃癌切除後5年以降の再発 (晩期再発) は, 晩期での再発という観点からみれば, 手術した時点において癌腫は5年生存可能な有利な状況にあることになるし, 一方ではその後再発するという何らかの再発を発来させるrisk factorを併せ持つことになる.晩期再発が発現する背景因子を解明することは, 今後手術理論ならびに術後補助療法を確立し, 胃癌の治療を向上させるうえできわめて重要となる.著者らは, 教室の胃癌治癒切除症例740例 (1956.3-1981.12) を用い, 晩期再発症例を2年未満に再発した早期再発症例および2年以降, 5年未満に再発した中期再発とを対照として比較し, 臨床病理学的検討を行った.治癒切除後の再発は261例であり, 早期再発157例 (60.1%) , 中期再発74例 (28.4%) , 晩期再発30例 (11.5%) であり, 晩期再発は治癒切除症例の4.1%に相当した.治癒切除後の経過年数別再発症例数は2年までに全再発症例の60%が含まれ, 以後漸減し, 10年以降再発は1例のみであった.また, 2年までは相対治癒切除の再発例, 3年以降は絶対治癒切除の再発例が多かった.早期再発症例, 中期再発症例, 晩期再発症例の3群において, 胃癌切除後の予後を左右すると考えられる10因子〔占居部位, 肉眼型, 大きさ (長径) , 深達度, 組織型, リンパ管侵襲, 静脈侵襲, リンパ節転移, 浸潤増殖様式 (INF) , 組織学的stage〕について統計学的に分析, 比較検討した.その結果, 占居部位M・A, 肉眼型0・5型, 深達度m・sm・pm, v (―) , n (―) , INFα, stage Iに晩期再発の頻度が高かった.これらの特徴は, 教室の進行胃癌治癒切除後の10年生例の背景とよく似通っていた.晩期再発症例は比較的良好な予後が得られる有利な状況にあるが, 10年生存症例に比べてわずかながら不利なrisk factorを内蔵し, それにより5年以降に再発を来したものと推測される.また, 絶対治癒切除, 相対治癒切除別からみて, 再発時期にどのような差異があるのかを深達度〔ps (―) , ps (+) 〕およびリンパ節転移〔n0+n1, n2+n3〕, それらが規定因子として関与するstage〔I+II, III+IV〕との関連からみると, 各因子とも早期再発から晩期再発になるに従って絶対治癒切除の頻度が高くなり, 逆に相対治癒切除の頻度が低くなる傾向とともに, n因子よりもs因子がより予後 (再発) に影響を及ぼしていることが判明した.晩期再発の再発形式 (主・副再発を含む延べ数) は, 腹膜12例 (24.5%) , リンパ節11例 (22.4%) が多く, 次いで肝8例, 骨6例, 肝下部4例, 残胃3例, 肺2例などであった.いずれにしろ, 晩期再発は手術した時点で癌遺残が少ないことがその最大の特徴と考えられ, 外科医の手術時の積極性と創意工夫, ならびに術後の補助療法の確立と有効な薬剤の開発により, 早期再発を起こしていたものを晩期再発に, また晩期再発を起こしていたものを完全治癒とするよう努力することが今後の課題と考えられる.
  • 小河 孝則
    1986 年 46 巻 4 号 p. 533-542
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    大気汚染による健康影響を把握するために, K市医師会はモニター方式による健康影響調査を行っている.この方式は, K市医師会会員から選ばれたモニター医師が, 毎月1回, 特定呼吸器疾患の有症者と当日の総受診件数をK市医師会に報告するものである.本研究は, K市におけるモニター方式により得られた健康影響指標の有用性を明らかにすることを目的として, 1973年4月から1983年3月までの10年間に, この方式によって得られた健康影響指標と環境指標との関連を相関分析と多変量解析法を用いて検討した.健康影響指標は, 特定呼吸器疾患のうち喘息性気管支炎, 慢性気管支炎及び気管支喘息の対総受診件数比及び対K市全人口比を用い, 環境指標はK市によって行なわれた大気中の環境濃度を用いた.健康影響指標と環境指標との年次変化の相関分析を行った結果, 有意の相関が認められた指標と認められなかった指標とがあり, 複数の環境指標と健康影響指標との関連を総合的に検討する必要を認めた.重回帰分析法を用いて複合的な大気汚染と健康影響指標との関連を検討した結果, 喘息性気管支炎と慢性気管支炎は説明が可能であったが, 気管支喘息については説明不能であった.そこで, 正準相関分析法を用いて健康影響指標を各々の疾患別にではなく健康影響指標群として, また, 環境指標も各々の環境濃度ではなく環境指標群として, 両群間の相関を求めたところ有意の相関が認められ, 正準得点散布図から健康影響指標群の動向と環境指標群の動向は一致している事が認められた.以上の結果より, K市医師会がモニター方式によって得た健康影響指標は, 環境指標との関連で健康影響把握に有用であることが明らかになった.
  • 内田 均
    1986 年 46 巻 4 号 p. 543-553
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    〔目的〕膝蓋骨の軟骨変性の要因を考察すべく本研究を行った.〔方法〕検体はホルマリン固定した膝蓋骨, 男67個, 女48個, 計115個, 年齢は39歳から93歳, 平均65歳, 左右別は右56個, 左59個であった.軟骨変性の分類は粗〓面, ビロード状化, 軟骨欠損, 辺縁隆起とし, 膝蓋骨軟骨面は解剖学的に認められるものを基準に7区画に分割し, 膝蓋骨形態より内側関節面 (medial facet) と外側関節面 (lateral facet) がほぼ同じ大きさのA群, 内側関節面が外側関節面より小さいB群, 第三関節が明確なC群と3つの型に分類し, 区分別に軟骨変性を観察した.軟骨の厚さの計測は軟骨変性の少ない膝蓋骨を20個選び, ポリエステル系樹脂で加温固化後スライスし, 内側関節面と外側関節面の軟骨最大厚を計測し, 軟骨の厚さを等高線図で表わした.また軟骨の厚さと軟骨下骨の形態との関係を調べ, 軟骨下骨の形態分類から区分別の軟骨変性を観察した.〔結果〕1) 軟骨変性の肉眼的観察結果は粗槌面が97%, ビロード状化が27%, 軟骨欠損が32%, 辺縁隆起が26%みられ, 性, 左右別との相関はなく経年的に増加する傾向がみられた.区分別にはA群B群C群ともに軟骨欠損は内側関節面基部に多く, 辺縁隆起は内側関節面尖部とC群の内側稜に多く, A群はB群C群に比べ軟骨変性は少なかった.2) 軟骨の厚さの計測結果は内側関節面最大厚平均3.24±0.67mm, 外側関節面最大厚平均3.68±0.38mmと外側関節面が厚かった.軟骨の厚さと軟骨下骨形態との関係から中央型: 外側関節面中央部から正中稜にかけて軟骨が厚く, 外側関節面の軟骨下骨が緩やかに陥凹しているもの, 外側型: 外側関節面の外側の軟骨が厚く, 外側関節面の軟骨下骨が外側中心に急峻に陥凹しているもの, 辺縁型: 外側関節面の外側辺縁の軟骨が厚く, 外側関節面の軟骨下骨が直線的なものという形態上の特徴がみられた.3) 軟骨の厚さ及び軟骨下骨の形態分類と軟骨変性との関係は中央型は軟骨変性が少なく, 外側型はビロード状化が48%, 軟骨欠損が48%と多く, 辺縁型は辺縁隆起が41%と多くみられた.膝蓋骨の軟骨変性は様々の因子が重なり形成されると考えられるが, 加齢, 膝蓋骨形態, 軟骨の厚さ及び軟骨下骨の形態等は変性の要因の一つであると考えられた.
  • 小西 由美子, 桑迫 勇登, 安本 和正, 持刃 賢二
    1986 年 46 巻 4 号 p. 555-559
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    内頸動脈内膜血栓除去術の麻酔管理を経験し, 若干の知見を得たので報告する.症例は高血圧とTIA発作の既往を有す73歳, 男性.諸検査ではさしたる異常はなかった.硫酸アトロピン筋注後, 麻酔はバルビタールとS.C.C.にて導入, 挿管し, G.O.Fで維持した.術中は脳波等をモニタし, 適時, 動脈血液ガス分析を行った.stamp pressureの観血的測定後, 内シャントチューブを挿入し, 遮断時間35分で無事手術を終了した.術中, 脳波の変化はなく, 術後も神経学的後遺症を残さずに経過した.術中の重篤な合併症を早期発見する為, 脳波のモニタリング等, きめ細い麻酔管理の大切さを痛感した.
  • 山田 眞, 塩田 直人, 堀 豪一
    1986 年 46 巻 4 号 p. 561-563
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    55歳男性・昭和61年2月・歩行中に自動車にはねられ近医へ搬入されたが, 呼吸困難, 前胸部痛が軽快しないため, 翌朝, 藤が丘病院へ転送された.来院時, 呼吸数43回/分の頻呼吸を示し, 前胸部は呼気のたびに陥凹を認めたが, 胸部体表に損傷はなかった。胸部X線像で胸骨完全横骨折, および肋骨多発骨折と診断し, 呼吸困難の主因は胸骨骨折にあると判断した.用手的に胸骨骨折の転位を整復したが, 安静を保っても転位を起こすため手術を施行した.全身麻酔下に胸骨骨折部を中聾。約7cmの館正中切開を加えたのみで骨折部, および左右の内胸動静脈を+分に確認することができ, 2本の金属鋼線を用いて胸骨を整腹固定した.放置した肋骨骨おれのための疼痛, 呼吸抑制に対しては, バスとバンドを使用することにより軽快が得られ, 術後第1病日から歩行が可能であった。
  • 新川 淳一, 川田 泰司, 水野 健朗, 平林 秀三, 日野 研一郎, 舩冨 等, 田口 進, 八田 善夫, 植田 俊彦, 稲富 誠, 深道 ...
    1986 年 46 巻 4 号 p. 565-570
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は, 75歳女性.右角膜潰瘍, 虹彩炎, 強膜軟化症の治療中, 全身性疾患の存在を疑われ, 当科に入院となる.当初より, 多尿, 多飲を認め, 水制限試験, 高張食塩水負荷試験, DDAVP負荷試験より, 中枢性尿崩症と診断した.本症例は, 梅毒血清反応が強陽性を示し, polyclonal gammopathyを認めた.さらに, 右三叉神経第一枝領域の疼痛, 糖尿病も合併しており, 多彩な病像を呈した.頭部単純X線写真, 頭部CTにて, 明らかな異常を認めなかったため, 特発性と考えざるを得ないが, 高齢発症, 複雑な病像を考慮すると, 続発性尿崩症も否定できず, 病因を考えるうえで示唆に富む症例と思われ報告した.
  • 吉田 一明, 矢嶋 輝久, 児玉 秀文, 竹内 治男, 舩冨 等, 八田 善夫, 杉内 孝謙, 神田 実喜男
    1986 年 46 巻 4 号 p. 571-574
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    56歳, 女性の孤立性肝のう胞の1例を報告した.特に自覚症状はなく, 健康診断におけるLDH高値の精査の際に, 偶然腹部腫瘤を発見された.腫瘤は可動性を有し, 腹部エコー, CTスキャンではのう胞状を呈した.術前起源臓器は同定できなかったものの, 感染, 出血, 破裂などの危険性を考慮し, のう胞摘出術を施行した.のう胞は肝由来であり, 組織学的所見から貯留性のう胞と考えられた.本例は肝から振り子状に発育したため, 可動性に富み, 起源臓器の同定は困難であり, 肝のう胞を診るうえで示唆に富むと考え報告した.なお, LDHは術後も軽度上昇が持続しており肝のう胞とは無関係と考えられた.
  • 高野 信也, 黒田 一, 相馬 恵, 森田 和, 田中 博, Kazuyuki HORIUCHI
    1986 年 46 巻 4 号 p. 575-579
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    治療に抵抗した軟部好酸球肉芽腫症 (いわゆる木村氏病) を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.症例は44歳, 男性である.アミロイドーシス, 慢性腎不全にて昭和54年8月より当院にて透析中であるが, 昭和56年1月頃より左耳前部腫脹が出現した.同年5月25日に当院外科にて全身麻酔下で左耳前部腫瘍部分切除術を施行した.その結果, 木村氏病の診断を得た.昭和57年8月頃より, 再び, 左耳前部腫脹が出現した.昭和58年1月11日, 耳下腺造影を目的として当科を受診した.治療はステロイド内服, Tranirast内服で行った.Tranirastは, ナンテンに含まれる桂皮酸の誘導体と蛋白代謝産物であるアントラニル酸の縮合体であり, 経口投与が可能なchemical mediatorsの遊離抑制剤として本邦で開発された.1型のみならず, II型および皿型反応に対しても抑制作用を有しているとされている.我々は, 本疾患を1型アレルギーによる疾患と考え, Tranirastの投与を2年以上も続けたが, 腫瘤のコントロールはできなかった.Tranirastの薬理作用から考えても, I型, II型, III型のみならずIV型 (遅延型) も関与した混合型のアレルギー反応と考えることもできる.
  • 後藤 裕美, 稲垣 昌博, 中山 貞男, 坂本 浩二, 山田 二三夫, 植田 孝子, 小林 真一, 小口 勝司, 安原 一, 内田 英二, ...
    1986 年 46 巻 4 号 p. 581-587
    発行日: 1986/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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