昭和医学会雑誌
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治療に抵抗した軟部好酸球肉芽腫症の一例
高野 信也黒田 一相馬 恵森田 和田中 博Kazuyuki HORIUCHI
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1986 年 46 巻 4 号 p. 575-579

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抄録
治療に抵抗した軟部好酸球肉芽腫症 (いわゆる木村氏病) を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告した.症例は44歳, 男性である.アミロイドーシス, 慢性腎不全にて昭和54年8月より当院にて透析中であるが, 昭和56年1月頃より左耳前部腫脹が出現した.同年5月25日に当院外科にて全身麻酔下で左耳前部腫瘍部分切除術を施行した.その結果, 木村氏病の診断を得た.昭和57年8月頃より, 再び, 左耳前部腫脹が出現した.昭和58年1月11日, 耳下腺造影を目的として当科を受診した.治療はステロイド内服, Tranirast内服で行った.Tranirastは, ナンテンに含まれる桂皮酸の誘導体と蛋白代謝産物であるアントラニル酸の縮合体であり, 経口投与が可能なchemical mediatorsの遊離抑制剤として本邦で開発された.1型のみならず, II型および皿型反応に対しても抑制作用を有しているとされている.我々は, 本疾患を1型アレルギーによる疾患と考え, Tranirastの投与を2年以上も続けたが, 腫瘤のコントロールはできなかった.Tranirastの薬理作用から考えても, I型, II型, III型のみならずIV型 (遅延型) も関与した混合型のアレルギー反応と考えることもできる.
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