昭和医学会雑誌
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ヒト動脈管開存症における弾性線維の動態について
杉内 孝謙
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1986 年 46 巻 6 号 p. 849-856

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抄録

剖検により得られた, 新生児・未熟児の動脈管98例について, 特に動脈管壁内の弾性線維の動態を中心に, 病理組織学的に検索した.98例中, 臨床的に動脈管の開存を認めたものは28例で, 残り70例は臨床的に動脈管開存を認めていない.動脈管開存を認めない群では, その組織像は既知の所見とほぼ一致し, intimal cnshionの出現, 内弾性板の断裂, nucoid substanceの増加等を認めた.これらの所見は, 在胎週数の進行とともに, 強くなる傾向が見られた.臨床的に動脈管開存を認めた群では, 認めない群と比べて, 前述の変化は弱く, それらとは別に壁内の弾性線維の増生を認めた.弾性線維は層形成傾向が認められ, 最終的にsubendotherial elastic laminaを形成している例が見られた.これらの変化は, 生存日数に比例して強くなり, 又, PDA依存性心奇型合併例において著明であった.動物実験を含めた種々の報告によれば, 血管内弾性線維は内部を流れる血流刺激の影響を受けると考えられ, 今回我々が動脈管壁内に認めた弾性線維の変化も, 血流の影響が大きく関与していると思われた.

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