昭和医学会雑誌
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経穴の刺激で現われる中脳中心灰白質背側部の誘発電位からみた針鎮痛の有効性の個体差とそれに対するD-Phenylalanineの作用
菱田 不美岡本 太郎武重 千冬
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1987 年 47 巻 2 号 p. 153-158

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抄録
針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) を発現する経穴から下垂体に到る経路にあたる中脳中心灰白質背側部 (D-PAG) からは経穴の刺激によって特異的に誘発電位が出現するので, この電位を発現させる経穴の刺激閾値, 各刺激強度に対する電位の振幅を指標として, 針鎮痛の有効性の個体差を検し, さらに, 有効性の個体差をなくし針鎮痛無効な動物を有効にするD-phenylalanine (DPA) の作用を検した.ラットの尾逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として有意 (P<0.05) の鎮痛が現われるか否かでラットを針鎮痛有効群と無効群とにわけ, それぞれの動物のD-PAGに電極を挿入して経穴の刺激で出現する誘発電位を30回加算した.腹腔内に1mg/kgのナロキソンを投与すると投与後15分でD-PAGの誘発電位は完全に出現が阻止された.これに反し, 非経穴 (腹筋) の刺激で中脳中心灰白質外側部 (L-PAG) に出現する誘発電位は全く影響をうけなかった.D-PAGに誘発電位を出現させる刺激閾値は有効群と無効群とでは異なり, 0.05msec持続の頻度1Hzの刺激では約1 voltの差がみられた.また各刺激強度で出現する誘発電位の振幅もつねに無効群の方が低く, 刺激強度を強めても有効群の振幅には達しなかった.DPAを投与すると, 無効群のD-PAGに誘発電位を出現させる刺激閾値は低下し, 有効群の刺激閾値とほぼ等しくなり, かつ振幅の増大も著しく, 有効群の振幅にほぼ等しくなった.これに反し有効群ではDPA作用後も刺激閾値や振幅にさ程の変化は現われなかった.以上の結果から針鎮; 痛の有効性の個体差を発現する部位はD-PAG以下にあり, DPAもその部位に働いて有効性の個体差をなくす事が判明した.D-PAG以下の部位としては脊髄内にあるオピエートレセプターを介する機序である事が本教室の他の研究から考えられている.
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