昭和医学会雑誌
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モルヒネの用量-反応関係からみた針鎮痛の求心路を介して出現するモルヒネ鎮痛
田中 正明佐藤 孝雄岡本 太郎武重 千冬
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1987 年 47 巻 2 号 p. 159-166

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抄録
針麻酔の鎮痛 (針鎮痛) には有効性の個体差があり, この有効性の個体差は針鎮痛と同程度の鎮痛を出現するモルヒネ鎮痛にもみられ両者はよく相関する.針鎮痛の有効群のみに現われるモルヒネ鎮痛は, 針鎮痛を発現する機序を介して現われる鎮痛である事を, モルヒネを腹腔内, 脊髄クモ膜下腔, 脳室内に投与したモルヒネの用量一反応関係によって検した.痛みの閾値はラットの尾逃避反応で測定し, モルヒネの脳室内, 脊髄クモ膜下腔投与はそれぞれあらかじめ, 第3脳室及び脊髄腰膨大部に挿入したカニューレを介して行った.腹腔内, 及び脊髄クモ膜下腔投与のモルヒネ鎮痛の用量一反応関係は, 有効群と無効群とでは異なり, 有効群では腹腔内投与では0.5mg/kgに, 脊髄クモ膜下腔投与では0.05μgに最大値を示す用量一反応関係と, 前者では10mg/kg以上, 後者では10μg以上に最大値を示す用量一反応関係との二つが加算された用量一反応関係を示した.これに反し無効群ではそれぞれ10mg/kg, 10μgに最大値を示す単一の用量一反応関係を示した.これをScatchard's plotで表現すると, 有効群では2本の直線となり無効群では1本の直線となった.針鎮痛を発現する経穴から下垂体に到る経路にあたる前側索の切断, 中脳中心灰白質背側部の局所破壊で有効群の用量一反応関係は無効群のそれとほぼ同じ様になり, 単一の用量一反応関係を示す様になった.脳室内投与のモルヒネは, 針鎮痛有効群, 無効群ともに単一の用量一反応関係を示し, ただ有効群の方が左方移動する傾向を示した.またScatchard's plotを行っても単一の直線となった.以上の結果からモルヒネを脊髄クモ膜下腔や腹腔内に投与して針鎮痛有効群にのみ現われ, 前側索や中脳中心白質背側部破壊後は出現しなくなる鎮痛は, モルヒネが針鎮痛の求心路を脊髄で活動させて現われる鎮痛であることが明らかとなった.
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