昭和医学会雑誌
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カニクイザル外側頸筋の筋線維構成について
長谷川 秀行
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1987 年 47 巻 3 号 p. 415-429

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抄録
カニクイザル成獣10頭 (雌: 6, 雄: 4) の胸骨乳突筋, 鎖骨乳突筋ならびに鎖骨後頭筋について, 筋線維構成を検討し, 同種サルの他筋と比較した.筋線維の分類は, Sudan Black B染色によった.結果は次の如くである.1.研究対象の体重では雌雄差は認められなかったが, 筋重量では雄の方が雌よりも優る傾向が認められた.筋重量はカニクイザルでは環椎肩甲骨筋に大凡匹敵し, 筋別には胸骨乳突筋, 鎖骨後頭筋, 鎖骨乳突筋の順に大で, 雄では体重の順に大となる傾向が認められた.筋腹横断面積についても全く同様の傾向が認められた.2.1mm2中の筋線維数はカニクイザルの筋の中で少ない方の部類にはいり, 筋別には鎖骨乳突筋, 胸骨乳突筋, 鎖骨後頭筋の順に少なくなり, 雄では体重と逆相関の傾向が認められた.3.筋線維総数も大凡環椎肩甲骨筋に匹敵し, 四肢筋, 棘腕筋, 咬筋の約1/3であり, 筋別には胸骨乳突筋, 鎖骨乳突筋, 鎖骨後頭筋の順に多く, 筋重量, 筋腹横断面積とは一致しなかった.4.筋線維型は胸骨乳突筋と鎖骨乳突筋では白筋線維が40%前後で最も多く, 鎖骨後頭筋では白筋線維と赤筋線維が30%台でほぼ等しく, 白筋線維の頻度は前者では棘腕筋中の頻度大なる部位に, 後者はその小なる部位にそれぞれ匹敵した.5.筋線維の太さは白筋線維では鎖骨後頭筋, 胸骨乳突筋, 鎖骨乳突筋の順に大であった.中間筋線維では前2者がほぼ等しく, 後者よりも僅かに優り, 赤筋線維では3筋間に差は認められなかった.他筋と比較して, 3筋線維型とも四肢筋等の比較的大なる筋に匹敵し, 咬筋よりも大であった.6.3筋において3筋線維型ともその太さは体重の増加に伴い増大し, 雄の方が雌よりも優る傾向が認められ, その傾向は赤筋線維と白筋線維で著明であった.7.筋線維の密度は, 胸骨乳突筋と鎖骨乳突筋は高い筋に属し, 鎖骨後頭筋は比較した筋の中で最も低かった.8.以上の事から, カニクイザルの外側頸筋は, 胸骨乳突筋, 鎖骨乳突筋, 鎖骨後頭筋の順に発達し, 前2者は白筋線維系, 後者は赤筋線維が加味された筋線維組成であったが, 筋線維の太さはともに大で四肢筋に匹敵し, 個体の運動能に順応していたが, 鎖骨後頭筋は数的に劣り負担が大き過ぎる所見が認められた.すなわち, 3筋それぞれに霊長類の進化過程の機能的特徴を示していると考えることが出来た.
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