昭和医学会雑誌
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足関節果部骨折の内固定法に関する生体力学的研究
田代 善久
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1987 年 47 巻 5 号 p. 707-722

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抄録

足関節果部骨折の固定法には種々の方法があるが, 強固な固定で早期可動訓練が可能なものでなければならない.そこで骨折型別に最良の固定法を見い出すことを目的として, 2次元光弾性実験並びに自由体法解析により, 各種固定法の生体力学的検討を行った.方法: 実験モデルは正常成人下肢骨標本の正面X線像をトレースした原図を元に厚さ6mmのエポキシ板 (E=240.3kg/mm2, α=0.979mm/kg) で作製し, 骨折線に沿って糸鋸にて切断し, 各モデルに対応した固定法を施行した.骨析線・固定法および荷重方法: 内果: 1) 距腿関節裂隙レベル以下の横骨析を (1) K-鋼線固定, (2) K-鋼線固定+Zuggurtung, (3) 螺子固定を施行し, 外転荷重を行った.2) 下関節面内側の“肩”部より斜上方に走る斜骨折を螺子斜位固定し, 内転荷重を行った.3) 下関節面内側の“肩”部より垂直に走る垂直骨折を螺子横位固定し, 内転荷重を行った.外果: 1) 距腿関節裂隙レベル以下の横骨折をK-鋼線固定+Zuggurtungし, 内転荷重を行った.2) 脛腓結合部以上の斜骨折を (1) Plate固定, (2) 螺子2本固定を施行し, 内転および外転荷重を行った.両果: 内果は距腿関節裂隙レベル以下の横骨折をK-鋼線固定+Zuggurtungし, 外果は脛腓結合部以上の斜骨折をPlate固定し, 内転および外転荷重を行った.解析方法: 2次元光弾性実験の等色線写真および等傾線より周辺応力分布・骨折面応力分布および主応力線を作成し, 各モデルとControlのこれらの比較から, 各種固定法の安定性と骨折面の圧迫力の分布を調べるとともに, 主応力線から得られた骨片に作用する力の方向から骨片に作用する力の関係を自由体法でベクトル的に解析した.結果: 1) 内果横骨折のK-鋼線固定では, わずかな外転荷重で骨折部に離開を生じ, 固定性は不良であった.これにZuggurtungを加えると固定性は非常に良好となり, 骨折面の圧迫力は全面に作用しその値は関節面に向かって大であった.2) 同型モデルの螺子固定では, 骨折面の圧迫力が螺子を軸とする回転モーメントとなるため, 螺子より関節面側には作用するが, 反対側はむしろ離開が見られた.3) 内果斜骨折の螺子斜位固定と垂直骨折の螺子横位固定では, いずれもContro1に近い安定性を示すが, 骨折面の圧迫力は螺子より上部には作用するが関節面側にはない.この結果, 螺子は2本で固定しその内1本は出来る限り関節面に近く刺入すべきである.4) 外果横骨折のK-鋼線固定+Zuggurtungでは, 固定性は安定しており, 骨折面の圧迫力は全面に作用し, その値は関節面に向かうほど大となる.5) 外果の斜骨折またはラセン骨折のPlate固定では, 内・外転荷重のいずれに対しても安定性がよく, 骨折面の圧迫力も全而に作用している.螺子2本固定も同様で, 安全性・骨折面の圧迫力とも良好であった.6) 両果骨折では, 内転・外転荷重のいずれの場合にもZuggurtungを十分にしめることで安定性もよく, 骨折面の圧迫力も全面に作用していた.以上の結果より, K-鋼線固定+Zuggurtungの固定性が優れている事・螺子固定は2本用いて内1本は関節面近くに刺入すべき事・外果斜骨折にはPlate固定・螺子2本固定のいずれに対しても過度の荷重を避けるならば良好な結果が得られる事が分かった.これにより, 骨折型別の内固定法の選択基準を定め良結果を得た.

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