昭和医学会雑誌
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ヒト腰方形筋の筋線維構成について
伊藤 純治呉 中立三丸 修芳田 敬子猪口 清一郎
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1987 年 47 巻 5 号 p. 699-705

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抄録

骨格筋の機能解剖学的研究の一環としてヒトの腰方形筋の筋線維構成を検索し, 他の骨格筋と比較した.材料は本学学生実習に用いた10%ホルマリン固定の成人の腰方形筋13例 (男性7例, 46歳から74歳, 女性6例, 57歳から94歳) である.各筋は剖山後, 重量を測定し, 組織標本作製のためにセロイジン包理, H・E染色を施した.それらの組織標本より当教室が従来行ってきた方法で, 筋の横断面積, 筋線維総数, 1mm2中の筋線維数, 筋線維の太さ, 密度および筋線維総断面積を計測, 算出し, これらの成績を他の骨格筋と比較検討した.結果は次の通りである.筋重量は平均で男性23.9g, 女性9.6gで, 男性は全例が女性よりもまさり, 女性の約2.5倍であった.筋腹の横断面積は平均で男性244.3mm2, 女性101.2mm2で, 筋重量と同様男性は女性の約2.5倍であった.筋線維総数は平均で男性182, 970, 女性57, 636で, 男性は女性の約3倍であった.筋線維の太さは男性945.2~1346.6μm2に対して, 女性では一般に936.0~1179.3μm2で, 1例のみ2222.7μm2であり, 性差はみられなかった.そのヒストグラムでは頂点25%以上の高い正規分布型を示すものはすべて60歳以上の筋線維小の例であった.1mm2中の筋線維数は平均で男性752, 女性578で, 男性が女性よりも多く, 筋線維の密度は男性85.1%, 女性68.9%で, 女性は男性に比べてやや粗であった.筋線維総断面積は男性207.3mm2, 女性69.8mm2で, 約3倍の性差があった.以上の結果より, ヒトの腰方形筋は筋線維構成で, 男女の差が著しく年齢的に60歳代から明かな退縮が認められたが, 女性ではさらにその前からの退縮があることが考えられ, 老年期の退縮は個体差が著しいことが考えられた.

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