昭和医学会雑誌
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実験的虚血性筋疾患
―血栓形成例の筋病変について
鈴木 義夫真木 寿之佐藤 温塩田 純一大石 晴二郎杉田 幸二郎
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1988 年 48 巻 1 号 p. 25-30

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抄録

実験的虚血性筋疾患のうち, 血栓形成例における筋病変の組織学的特徴を明らかにすることを目的として検討した.対象は成猫22匹.方法は腹部大動脈下端部および右大腿動脈鼠径部に血管閉鎖腔を作成し, 3日後に屠殺し, 下腿筋病変を組織学的に検討したが, 血栓形成例と非形成例では理学的および病理学的に明らかな差が認められ, 次のような結果を得た.1) 血栓形成例の理学的所見は運動麻痺, 足底チアノーゼなどが高度であり, 血栓形成部位により対麻痺, 単麻痺を呈し経過上から大きく二つに分類でき, 病理学的に血栓の範囲および筋病変と相関が認められた.一つは理学的所見がきわめて重篤で, 実験の翌日から屠殺時まで単相性に完全な弛緩性対麻痺を来し, 血栓は結紮部と結紮部以下のすべての動静脈に連続して認められ, ほぼ完全に側副血行路が遮断されたものである.筋病理は組織反応を欠く凝固壊死の所見を呈した.他の一つは経過が特有であり, 軽度の対麻痺または単麻痺が実験の翌日に認められ, その後経時的に進行性増悪を示したもので, 血栓は結紮部位に認めるほか, 下腿筋の小動脈に散在性の微小塞栓を認めた.筋病理は微小塞栓にもとつく小梗塞巣であった.2) 各下腿筋群における病変の程度は前下腿筋群の方が後下腿筋群に比べて高度であった.3) 血栓非形成例では明らかな運動麻痺を呈したものはなく, 筋病変は一例にのみphagocytosisを伴う散在性の壊死病変を認めた.

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