昭和医学会雑誌
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高齢者大腿骨頚部内側骨折骨頭の組織学的並びに骨形態計測学的研究
広瀬 秀史
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1988 年 48 巻 2 号 p. 185-204

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抄録
高齢者大腿骨頸部内側骨折における人工骨頭置換術の際, 摘出された24個の骨頭を南澤らに従い, 典型的骨折型 (Typical type) , 混合型 (Mixed type) , 三日月型 (Crescent type) の3型に分類し肉眼的観察の後, 中央前額断面にて半切し, bone slabより脱灰並びに非脱灰全割切片を作製し, 骨頭内外側縁における栄養動脈の温存および骨折に対する組織学的修復反応を観察し, さらに骨形態計測学的検討に受傷時の単純X線像より, 骨の粗鬆化の程度を示すSingh分類, 骨折骨頭の転位の程度を示すGarden分類による検索を加え, 骨折骨頭の運命について推論を試みた.組織学的観察にて, 骨頭栄養動脈の1つであるsuperior retinacular arteryの温存されている症例はなかった.しかし, 典型的骨折型では, もう1つの栄養動脈であるinferior retinacular arteryの温存を示す症例があり, 骨形態計測学的にも, Control群に比べ, 平均破骨細胞数の増加と分画吸収面の有意 (p<0.05) の高値を認め, 血行温存による骨折修復に対する組織学的反応像が観察された.一方, 混合型, 三日刀型骨折型では, 骨頭内に栄養動脈の温存を示す症例はなく, 骨折修復に対する組織反応像にも乏しかった.さらに, この2つの骨折型では, 骨の粗鬆化も強く, 残存する骨頭内骨髄量も少ないことから, 骨頭が骨癒合に成功し温存される可能性は非常に低いのではないかと思われた.そして, 三日月型骨折型では, 骨頭は骨髄を含め散在性に壊死を呈しており, 骨頭外側縁の骨皮質下には, micro trabeculae fractureやcontact micro radiogramにては, 骨の脆弱性を示す骨梁が観察され, 典型的骨折型や混合型骨折型とは全く異る骨折の発生病態を示唆するものと考えた.
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