昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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48 巻, 2 号
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  • 安原 一
    1988 年 48 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 馬場 隆男, 向井 英之, 小林 洋一, 新谷 博一
    1988 年 48 巻 2 号 p. 163-174
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    洞不全症候群 (SSS) において最大洞結節自動能回復時間 (maxSRT) は重症度の指標とされるが, 臨床像と一致しない場合も多く, 自律神経の影響が関与するためと考えられる.そこで, 薬理学的自律神経遮断 (PAB) 後のSRTについて, 臨床電気生理学的検査 (EPS) , HolterECGを用いてその臨床的意義を検討した.対象はRubenstein基準により診断したSSS49例.硫酸アトロピン (AS) 0.04mg/kg静注投与後フ。ロプラノロール (prop.) 0.2mg/kgを静注投与しPABを行い, AS, prop.投与前後でEPSを行った.また, 一般に重症度の指標とされるPAB前のmaxSRT 5000 msecと, PAB前後での最大修正洞結節自動能回復時間 (maxCSRT) の変化率 (△maxCSRT) を用いて, A群: maxSRT<5000 msec, △maxCSRT<200%, B群: maxSRT<5000msec, △maxCSRT≧200%, C群: maxSRT≧5000msecに分類し比較検討した.分類の結果, A群29例, B群14例, C群6例.脳虚血症状を有した例は, A群31%, B群79%, C群100%, 心不全症状を有した例はA群10%, B群29%, C群17%, 心胸郭比 (CTR) はA群50.5%, B群53.2%, C群53.0%, pacemaker (PM) 植え込み例はA群10%, B群71%, C群66%と, 臨床像については, B群はC群類似でA群に比し重症であった.SRTはbeforeでA, B両群間に有意差なく, AS投与後も両群間に有意差を認めないが, PAB後にB群は初めて延長してA群と有意差を生じ, C群との有意差は消失した.しかし, PAB後B群でSRT5000msec以上となったのは8/14 (57%) のみであった.maxR-RはA群2.1秒, B群3.6秒, C群3.8秒とA群に比しB・C群が延長していた.基本周期長 (BCL) はbeforeもPAB後 (すなわち内因性心拍数: IHR) もA・B群間に有意差を認めなかった.EPS時のautonomic chronotropismの程度と方向性を%chronotropyで比較すると, A群に比しB群で交感神経の関与の大きいことが示唆された.洞房伝導時間はB・C群に測定し得ない例が多かった.さらにSSS全体をIHR正常・異常群で比較すると, それぞれの群にA・B・C群は含まれ, IHRでは重症度の判定はできなかった.以上, SSSにおいてPAB前SRT5000msecは重症と言われるが, 5000msec未満の例にも重症例は多く見られる.このような例は交感神経の関与が示唆され, PAB後初めてSRTが延長し, PAB前に重症と判定し得ぬ例であり, PAB前後のCSRTの変化率が重症度判定に有用であった.
  • 八井田 眞, 梅沢 裕美子, 今野 述, 片桐 敬
    1988 年 48 巻 2 号 p. 175-183
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    糖尿病に合併する心筋障害について検索するために, ストレプトゾトシン (STZ) 糖尿病ラットを用い, 心筋の興奮収縮連関の場である心筋小胞体 (SR) および収縮要素を構成する構造蛋白の変化を早期から比較的慢性期にかけて検討し, あわせてインスリンによる抑制効果を確認した.方法: 体重180~200gのWistar系雄性ラットにSTZ65mg/kgを静注し, 1~16週後の糖尿病群 (DM) とSTZ注入後2および4週間インスリン治療した群 (DM+1) と正常対照群 (C) の3群に分けて検討した.血糖体重, 心筋湿重量を測定後, 遠心分画法でSRと粗構造蛋白を抽出し, それらのCa++-ATPase活性を測定し, また, 蛋白分画定量をSDS-ゲル電気泳動 (Laemmli法) により行った.結果: 血糖値はDMで400mg/dl以上に著明に上昇した.体重および心筋湿重量はC, DM+1に比較してすべての時期で有意に減少したが, 心/体重比は4週後より有意に増加した.心筋湿重量1g当りの蛋白量はSR, 構造蛋白ともに有意な変化を示さなかった.SRのCa++依存性ATPase活性は, DMで1週後より42%と著明に低下 (p<0.001) し, その後さらに低下傾向を示した.構造蛋白では4週後より平均27%の有意な低下 (p<0.05) を示した.蛋白の分画定量では, SRはDMで分子量10万のATP-ase主蛋白に一致したバンドの増加を4週後より認めたが, 構造蛋白ではほとんど変化を認めなかった.DM+1では, 血糖はおのおの平均113.5mg/dl (2週) , 131.0mg/dl (4週) に調節された.そして, DMで観察された変化はすべて有意に抑制された.考案および結語: 糖尿病に合併する心筋障害については種々の報告がされており, 糖尿病性心筋症といった概念も提出されている.その成因として心筋内細小血管症や糖尿病の代謝異常そのものによる心筋障害などが言われているが, 結論は出されていない.糖尿病にともなう血行動態変化については一回拍出量の低下, 左室dp/dtの低下などが報告されているが, 拡張障害が最も特徴的とされている.STZ糖尿病ラット心筋では, SRに早期から強い変化が見られており, これは糖尿病心における拡張障害を示す所見であり, 病変の主体をなすものと考えられた.これらのことは, 糖尿病心に特有の心機能不全として糖尿病性心筋症の概念を示唆するものであるかもしれない.糖尿病心筋に見られた変化はインスリン治療により抑制されておりSTZによる変化や血管病変によるものではなく, 糖尿病性代謝異常による直接変化であることが示された.
  • 広瀬 秀史
    1988 年 48 巻 2 号 p. 185-204
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    高齢者大腿骨頸部内側骨折における人工骨頭置換術の際, 摘出された24個の骨頭を南澤らに従い, 典型的骨折型 (Typical type) , 混合型 (Mixed type) , 三日月型 (Crescent type) の3型に分類し肉眼的観察の後, 中央前額断面にて半切し, bone slabより脱灰並びに非脱灰全割切片を作製し, 骨頭内外側縁における栄養動脈の温存および骨折に対する組織学的修復反応を観察し, さらに骨形態計測学的検討に受傷時の単純X線像より, 骨の粗鬆化の程度を示すSingh分類, 骨折骨頭の転位の程度を示すGarden分類による検索を加え, 骨折骨頭の運命について推論を試みた.組織学的観察にて, 骨頭栄養動脈の1つであるsuperior retinacular arteryの温存されている症例はなかった.しかし, 典型的骨折型では, もう1つの栄養動脈であるinferior retinacular arteryの温存を示す症例があり, 骨形態計測学的にも, Control群に比べ, 平均破骨細胞数の増加と分画吸収面の有意 (p<0.05) の高値を認め, 血行温存による骨折修復に対する組織学的反応像が観察された.一方, 混合型, 三日刀型骨折型では, 骨頭内に栄養動脈の温存を示す症例はなく, 骨折修復に対する組織反応像にも乏しかった.さらに, この2つの骨折型では, 骨の粗鬆化も強く, 残存する骨頭内骨髄量も少ないことから, 骨頭が骨癒合に成功し温存される可能性は非常に低いのではないかと思われた.そして, 三日月型骨折型では, 骨頭は骨髄を含め散在性に壊死を呈しており, 骨頭外側縁の骨皮質下には, micro trabeculae fractureやcontact micro radiogramにては, 骨の脆弱性を示す骨梁が観察され, 典型的骨折型や混合型骨折型とは全く異る骨折の発生病態を示唆するものと考えた.
  • 梅津 一彦, 望月 衛, 柳下 俊邦, 片桐 敬
    1988 年 48 巻 2 号 p. 205-213
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 急性心筋梗塞の発症早期に出現する重症心室性不整脈の発生と虚血心筋代謝障害との関連が興味をもたれており, リン脂質の崩壊産物やエイコサノイドなどの研究がなされているが, その源となる膜の構成脂肪酸そのものの変化についての報告は少ない.本研究では, 実験的急性虚血心から膜性微小器官を分画し, リン脂質構成脂肪酸の変化と不整脈発生との関連を検索し, さらに, その機序についてin vitroで検索を行った.成犬30頭をペントバルビタール静脈麻酔下に開胸し, 左冠動脈前下行枝の完全結紮により1時間, 3時間の急性虚血心を作成した.虚血中ホルター心電図を記録し, 心室性期外収縮 (VPC) の多少より不整脈群 (A群) , 非不整脈群 (NA群) に分け, A群はLownの分類3度以上とし, NA群はそれ以下とした.遠心分画法により心筋小胞体 (SR) , ミトコンドリア (Mt) を分離し, Folch水洗法によりリン脂質を抽出, 総リン量定量とガスクロマトグラフィー (GC) によりリン脂質構成脂肪酸の分画定量を行った.さらに, phospholipases (PLase) A2およびCをCa++存在下に反応させたSRよりリン脂質を抽出し, GCを行い, 比較検討した.総リン量は非虚血部SRで平均12.1μgPi/gwwを示し, 虚血1時間でA群74%, NA群で84%におのおの有意に減少 (P<0.001, P<0.05) し, Mtは非虚血部で588μgを示し, 虚血1時間でA群85%, NA群86%におのおの有意に減少 (P<0.01, P<0.05) したが, SR, Mtとも両群間に有意差はなかった.GCにより, リン脂質構成脂肪酸は, C14, C16: 0, C16: 1, C18: 0, C18: 1, C18: 2, C20: 4, C22: 6に分画された.非虚血部SRでアラキドン酸は18.7%を占め, 虚血1時間でNA群は19.9%と変化せず, A群では14.4%と有意に減少 (P<0.01) し, 虚血3時間でも同様であった.Mtでは, A群, NA群とも1時間, 3時間で各脂肪酸群の有意な変化はなかった.PLase A2処理SRではリン量に著しい減少は認めず, C20: 4, C18: 2の著明な減少を認めた.PLaseC処理SRでは, リン量は減少したが, 構成脂肪酸に著明な変化はなかった.本研究では, 最も早期から虚血性崩壊をきたし不可逆性変化の指標となり, リン脂質に富む膜性微少器官であるSR分画, Mt分画を抽出し, 虚血性障害と不整脈発生の関係を検討した.虚血1時間からA群, NA群とも両分画で総リン量の有意な減少が認められ, PLase C処理した結果と同様であり, 早期の虚血性心筋傷害の基礎メカニズムとしてPLaseCの活性化の関与が考えられる.さらに, A群でSRのアラキドン酸の減少を認め, PLase A2処理でアラキドン酸の著明な減少をみたことから, 不整脈発生群ではPLase Cに加えてPLase A2の活性化がおこり, アラキドン酸の遊離が関与している可能性が示唆された.
  • 東郷 実昌, 中山 徹也, 荒木 日出之助, 鈴木 和幸
    1988 年 48 巻 2 号 p. 215-232
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    6歳児 (男子95名, 女子104名) が一部17歳になるまで毎年, 身体・骨盤外計測し, その子の出生時身長, 体重, 両親の身長を信頼できるアンケート方式で求め, 小児・思春期における体格別骨盤発育, 両親の身長とその子の身長・骨盤発育を検討した.1) 6歳時の身長のM±SDを基準にして大, 中, 小 (L, M, S) の3群に分け, その後の発育を検した.身長も骨盤もL, M, Sそれなりに平行して発育する.一方, その子の出生時身長, 体重, 親の身長も一部の例外を除けばすべてL, M, Sの順であった.2) 出生時の身長のM±SDを基準にしてL, S2群に分け, その子の発育を検すると, 男女ともLの出生時体重, 父母の身長はSのそれより有意に大きいが, 6歳以後の身長, 骨盤発育では男子はほとんどLとS間に有意差はないが, 女子では12~14歳ごろまでLの値はSの値より大きい.3) 父母の身長のM±SDを基準にして父母をそれぞれLとS2群に分け, その子の6歳~17歳までの身長, 骨盤発育を比較すると, 父と男子の組合わせではLとS間に有意差はないが, 父と女子, 母と男子, 母と女子の組合わせではLの子の身長, 骨盤はSの子のそれより有意に大きい.その関係は父より母, 男子より女子に著明である.4) 以上のことは両親と子の重回帰分析でも示唆された.すなわち, 9歳ころまでの男子の身長・骨盤発育は両親の身長因子に若干関与するにすぎないが, 女子の身長には17歳まで両親の身長因子が有意に関与し, 同じく女子のTrとExt にも14歳まで母の身長因子が, それ以後は父の身長因子が有意に関与する結果であった.以上のことより, 女子は骨盤発育の面でも男子より遺伝的に定められた体格素因を受け継ぐことが強いようである.
  • ―アミラーゼアイソザイム, アミラーゼ・クレアチニンクリアランス比による再考察―
    桜井 俊宏, 高木 康
    1988 年 48 巻 2 号 p. 233-238
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    開腹手術前後の体液中アミラーゼおよびアミラーゼアイソザイムの変動について, 開腹手術患者50例を対象として検討した.開腹手術後, 血中アミラーゼ活性は1, 3時間と低下するが, 手術後12時間より上昇しはじめ, 24時間で最高値 (術前値の2.78±0.53 (x±SE) ) となり, その後3, 5日と漸減し, 7日頃ほぼ術前値に復した.この時, アミラーゼアイソザイムのうち膵由来のP-アミラーゼは, 術後あまり変動なく, 術前値とほぼ近似した値であった.これに対し, 唾液腺, 腸管由来のS-アミラーゼは総活性とほぼ同様な動きを示し, 開腹手術後の一過性の高アミラーゼ血症はS-アミラーゼによることが判明した.なお, この術後の高アミラーゼ血症と手術時間, 手術症例における病態の進行度との間には直接的な因果関係を認めず, 非特異な機序による上昇であることが示唆された.このアミラーゼに関連して, アミラーゼ・クレアチニンクリアランス比 (ACCR) を検討したところ, 術前値の3.73±1.0 (%) (x±SD) に比べて術後24時間値では4.43±1.55 (%) と有意 (P<0.05) の上昇が認められた.特にP-アミラーゼはS-アミラーゼに比べてその上昇は著しく, 術後の高S-アミラーゼ血症の一因とも推測された.
  • 松村 光芳
    1988 年 48 巻 2 号 p. 239-247
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    近年, 骨髄におけるthrombopoiesisの本態が解明されつつあり, 流血中の血小板容積の変動が骨髄機能を反映することが明らかになってきた.そこで著者は, 小児における血小板数と血小板容積の変動に着目し, 悪性固形腫瘍における骨髄機能の評価法を作成し検討した.健常対照群として, 感染・炎症・出血凝固異常等のない135例を分析し, 血小板-平均血小板容積 (Mean Platelet Volume: MPV) のNomogramを作成した.血小板数は, 29.60±10.25×104/mm3, MPVは8.37±1.08flであった.小児においても従来の成人において報告されているのと同様にnon-linearな負の相関関係を認め, 正常の骨髄機能が営まれている場合には, MPVは血小板数と相関してNomogramを逸脱することなく変動した.小児悪性固形腫瘍5症例 (神経芽細胞腫2例, 横紋筋肉腫1例, Wilms腫瘍1例, Ewing肉腫1例) 計20クールにおいて, 化学療法・放射線療法による高度の骨髄抑制 (CCSGのToxicity Ratingにおいてgrade3以上) は13クールに認められた.血小板減少がみられるのと前後してMPVは低下し, Nomogramを逸脱して推移した.この傾向はクールを進めて骨髄抑制が強くなるに従って増強し, かつ回復までの期間も長かった.CCSG Toxicity Ratingによる骨髄抑制の程度が強くなるほどMPVは小さくなる傾向が認められた (p<0.01) .回復過程において, 血小板数の増加に先立ってMPVおよびPlateletcritは上昇し, 血小板容積分布曲線におけるピークも右方に偏位する傾向がみられた.これらの所見により骨髄機能の回復を予見することが可能であった.これらの客観的評価をより容易にするためにNomogramをA-Eの5領域に分類した.すなわち, 領域A・Bは血小板数10×104/mm3以上でMPVがNomogram範囲内にあり正常な骨髄機能が維持されている状態, 領域Cは血小板数10×104/mm3以上あるもののMPVがNomogram下限を下回り骨髄抑制が示唆される状態, 領域DはMPV・血小板数ともに低下し最も強い抑制が疑われる状態, 領域Eは血小板数は減少しているもののMPVは上昇しているいわゆる回復期と考えられた.患児の一般状態および従来の評価法とともに, この評価法を応用することにより小児悪性固形腫瘍の治療経過中の日々の骨髄機能の把握が日常診療上特別な侵襲もなく可能となり, 治療スケジュールの継続・中止・再開の判断の指標のひとつとしてきわめて有用と考えられた.
  • 塩田 純一, 真木 寿之, 鈴木 義夫, 佐藤 温, 磯野 理, 杉田 幸二郎
    1988 年 48 巻 2 号 p. 249-255
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    目的は実験的虚血性筋病変のうち, 再生筋線維の出現とその成熟過程を経時的に観察し, 再生過程を壊死病変の重篤度および血管分布との関係において明らかにすることである.対象はネコ15匹.方法は腹部大動脈下部, 右総腸骨動脈および右大腿動脈を7時間結紮し虚血筋を作成, 7日後, 10日後, 14日後に屠殺し, 前脛骨筋, 腓腹筋内側頭, ヒラメ筋について病変を組織学的に検討した.結果; (1) 下腿筋の壊死の分布を見ると, 筋の外周および筋内血管の周囲が壊死を免れていた.また, 前脛骨筋が近位・遠位とも障害されているのに対し, 腓腹筋内側頭・ヒラメ筋では近位側のみの障害が認められた。 (2) 下腿筋群においては, 前脛骨筋が最も著しく障害され, ヒラメ筋は障害が少なく, 腓腹筋内側頭は中等度の障害であった. (3) 再生筋線維の分布と成熟過程の検討では, 虚血後7日には, 大きな核と明瞭な核小体を持つ細胞質の少ない不定型のmyoblastが壊死巣と正常筋組織の境界に出現した.虚血後10日には, 正常筋線維の1/2~1/3直径の円形筋線維が虚血巣の多くを占め, 円形筋線維間の間隙が開いていた.壊死巣の外側にはより成熟した再生筋線維が, また, 壊死巣の中心部にはmyoblastが見られた.虚血後14日には, myoblastや小円形筋線維はほとんど見られず, 中心核やintermyofibrillarn etworkの乱れ以外はほとんど正常筋線維と違いのない成熟再生線維が正常筋組織内に散在していた. (4) 各筋の血管分布では, 腓腹筋内側頭, ヒラメ筋でanastomosisの発達が良いが, 前脛骨筋ではanastomosisがほとんど見られなかった.結論; 筋の再生過程は常に壊死の程度と筋内の血管分布に影響され, 加えて, 筋を取り囲む結合組織とのanastomosis, compartmentなど, 筋の置かれた環境が壊死と再生の過程を制御する要素であることが考えられた.
  • 阪川 肇
    1988 年 48 巻 2 号 p. 257-268
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    腰椎分離症, 分離すべり症の自然経過を解明すべく初診後10年以上経過症例に対し検討を加えた.対象は, 55例で男性28例, 女性27例.初診時年齢は4~75歳 (平均40.5±15.9歳) , 経過期間は, 10~16年 (平均11.6±1.5年) , 調査時年齢は14~85歳であった.罹患椎は, 第5腰椎52例 (両側40例, 片側12例) , 第4腰椎2例 (両側1例, 片側1例) 第4, 5腰椎1例 (両側例) .初診時分離のみの症例は35例, 分離すべり症を呈していた症例は20例であった.初診時と調査時における自覚, 他覚症状及び日常生活動作について日整会腰痛治療判定基準 (以下, 日整会判定) を用い比較した.X線学的検査では, 関節突起問分離部の形態的分類およびその推移, 椎間板高の変化, すべり度の判定およびその推移, 罹患椎の不安定性の有無につき検討をくわえた.結果: 臨床症状は日整会判定で初診時平均24.7±2.3点であった臨床症状が調査時平均27.1±2.8点となっており55症例中51症例に改善または不変が認められ, 悪化例は4例 (調査時点数14, 17, 24, 25) のみであった.全体として自覚症状で平均1.0点, 他覚症状平均-0.05点, 日常生活動作では平均1.8点の改善度であり, 日常生活動作の改善が調査時における改善傾向に貢献していた.初診時および調査時に膀胱直腸障害を認めた症例はなかった.X線学的変化では, 初診時亀裂型を呈していた8症例中6例が偽関節型に移行していたが罹患部に癒合の認められた症例はなかった, 初診時分離すべり症を呈していた症例中すべり度が増大した症例は14例であり, 不変2例, 減少4例であった.一方, 新たなすべりの発生を5症例に認めた.椎間板高に関しては調査時, 全体として減少傾向にあった分離症, 分離すべり症との間に特別な関係は見いだせなかった.不安定性が判明した症例は10症例であった.臨床症状とX線学的変化の関係では特別な相関を示したものは認められなかった.以上より, 分離症に関しては, 従来通り保存的療法で経過をみるべきであり, 分離すべり症に関しても, 予防的手術は必要ないものと思われた.
  • 門倉 光隆, 高場 利博, 谷尾 昇, 山城 元敏, 井上 恒一, 舟波 誠, 山本 登, 石井 淳一
    1988 年 48 巻 2 号 p. 269-272
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    人工呼吸器装着を必要とせず, 気道内吸引さえ容易に行えれば, 血液ガス所見や症状の改善が得られる事が期待できるwet caseに対して, 当教室では本来小児の気管切開に使用されるカブ無し小径ポーテックスカニューレ (内径4.5mm, 外径6.2mm) を円錐靱帯切開術 (甲状軟骨正中部下縁の輪状甲状靱帯切開) により挿入し, 容易に気道内吸引を行っている.とくに開胸, 開腹術後, 癌末期状態では粘稠痰喀出が困難となり, これを契機に多臓器不全へと進展し致命的となる場合もある.本法は気道内吸引に極めて有効であるとともに, 発声や経口摂取に何ら影響を与えず, また通常の気切と比較して創も小さく手技も簡単であり, 抜去後の治癒も早い, 等の利点をもつ.以上を症例を提示して報告する.
  • 釜田 秀明, 菊池 良知, 樋口 健一, 米山 啓一郎, 加藤 和夫, 竹内 治男, 小貫 誠, 八田 善夫
    1988 年 48 巻 2 号 p. 273-276
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    慢性胆嚢炎の特殊型ともいえる陶器様胆嚢を67歳女性で経験したので報告する.症例は家庭主婦で, 腹部単純X線写真, 超音波検査, CT検査, ERCP等より陶器様胆嚢, 総胆管結石と診断した.手術を施行し胆嚢は石様に硬く, 淡黄色のコレステロール混合石と総胆管の黒色の胆石を摘出した.胆嚢および総胆管結石は赤外線吸収スペクトルフォトメトリィーで同様なパターンを示し95%以上はコレステロールで, 石灰化成分はリン酸カルシウムが主体であった.本例は, 慢性の胆嚢炎に加え結石の嵌頓による胆嚢管の閉塞をきたし胆汁のうっ滞がなんらかの変化を受け石灰化をきたし形成されたものと思われた.
  • 市橋 浩司, 稲葉 昌久, 平野 勉, 白取 雄, 井出 宏嗣, 杉崎 徹三, 杉山 喜彦
    1988 年 48 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例72歳, 男, 主訴: 体重減少, 発熱, 左鎖骨リンパ節腫脹.1977年に入院した.リンパ節生検によりポジキン病 (混合細胞型) の診断のもとにサイクロフォスファマイド, ヴィンクリスチン, プロカルバジン, プレドニゾロンの治療を受けた.治療後, 発熱, リンパ節腫脹は完全に消失した.1年2か月後, 発熱, 呼吸困難が突然発現し, 胸部レ線上両肺野にび漫性陰影出現を認めた.種々治療にもかかわらず, 1週間後に死亡した.病理学的に両側肺にび漫性にリンパ球, 大喰細胞, ポジキン細胞の浸潤像を認め, 多形核白血球の浸潤は認めなかった.ポジキン病における肺病変は肺門リンパ節腫脹, 肺野の結節状陰影を示す症例が大部分である.本症例のごとく急激に肺野全体にひろがる病像で再発する例は比較的稀であり報告した.
  • 村上 厚文, 小泉 和雄, 小泉 蓉子
    1988 年 48 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    リンパ管腫は単純性, 海綿状, および嚢胞性に分けられるが, このうち後腹膜に発生する嚢胞性リンパ管腫は臨床上稀な疾患であり, 特に乳ビを内容とするものはきわめて珍しいとされている.しかも10歳前後の男子に多く, 外科的療法を必要とする場合が少なくない.最近われわれは8歳の男子で腹部鈍的外傷の1週間後から腹痛を主訴に来院, 腹部所見から急性腹症として開腹したところ, 乳ビを内容とした十二指腸下降脚右方に存在する後腹膜嚢胞性リンパ管腫であった症例を経験した.今回は内痩術のみで嚢胞が消失し良好な経過を得たが診断および治療上まだ問題が残されている疾患の一つであり, 文献的考察を加えここに報告する.
  • 池田 実徳, 坂上 宏, 紺野 邦夫, 會澤 重勝, 岡崎 雅子, 坂本 浩二, 朝比奈 恵子, 大村 陽子, 庄 貞行, 秋山 正基, 中 ...
    1988 年 48 巻 2 号 p. 287-299
    発行日: 1988/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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