抄録
われわれは, 民間伝承で胃癌等の消化器系癌患者に用いられて来た五葉松 (Pinus parviflora Sieb. et Zucc.) の松かさ抽山液には, ヒト骨髄性白血病細胞ML-1をマクロファージ様細胞に分化誘導する物質が存在することを見いだした.本論文は, この物質の精製法の確立について報告する, 分化誘導物質の精製は, 標的細胞のML1細胞にNBT還元能を誘導する活性を指標にして行った.本物質は, 松かさ熱水抽出液を濃縮後, エタノール沈殿SephadexG-200によるゲルろ過, DEAE-Sepharose CL-6Bイオン交換クロマトグラフィーで約327倍に精製され, 収率は11%であった.本物質は, 7.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で, 黄褐色の単一バンドとして移動し, PAS染色陽性であった.以上の実験結果は, 松かさ由来の分化誘導物質は分子中に, 強力な酸性基と糖を含むことを示唆している.