昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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ISSN-L : 0037-4342
48 巻, 3 号
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  • 田澤 和之, 片岡 肇一, 矢島 愛治, 斉藤 豊彦, 吉田 英機, 今村 一男
    1988 年 48 巻 3 号 p. 301-306
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 山田 斉, 小林 正樹, 松崎 明廣, 後藤 英道, 長谷川 貢, 嶽山 陽一, 塩原 保彦, 新谷 博一
    1988 年 48 巻 3 号 p. 307-314
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞において心電図上の異常Q波出現は診断上最も重要である.その出現する時間は個々の症例で異なるが, われわれは標準12誘導における異常Q波の出現時間に注目し, 発症後4時間以内にCCUに収容した急性貫壁性心筋梗塞107例について, 早期出現群 (E群: 前壁梗塞4時間未満, 下壁梗塞7時間未満) と晩期出現群 (L群: 前壁梗塞4時間以上, 下壁梗塞7時間以上) の2群に分け, 心筋梗塞の発症機転, 梗塞病態について比較検討した.〔心筋梗塞発症機転〕梗塞前狭心症, 特に1か月以上の長い既往を有する例がL群に有意に多かった (P<0.05) .梗塞前狭心症が不安定狭心症のタイプを示したなかではchanging patternがL群に有意に多く (P<0.05) , new angina of effortがE群に有意に多かった (P<0.01) .発症時胸痛程度はE群に強い傾向を認めた.12誘導中最大のST上昇度は前壁, 下壁梗塞ともE群が有意に高かった (P<0.05) .冠動脈所見では多枝疾患をL群に多く認めたが有意差はなかった.〔梗塞病態〕心筋逸脱酵素のピーク値ではGOT値, 総CK値は前壁梗塞, 下壁梗塞ともE群に有意に高値であった (P<0.05) .Swan-Ganzカテーテルを用いた入院時血行動態では, L群において心係数 (CI) と一同心仕事係数 (SWI) が高く, 肺動脈楔入圧 (PCWP) が低かった.特にCI, SWIは前壁梗塞において, PCWPは前壁下壁梗塞両方において有意であった (P<0.05) .慢性期左室造影による左室駆出率はL群において高値で, 特に下壁梗塞では有意差を認めた (P<0.05) .入院時のKillip分類による重症度はC-III, C-rvが多少E群に多かったが, 有意差は認めなかった.不整脈では心房粗細動・上室性頻拍症や心室頻拍・心室細動の合併がE群において高率であった.急性期死亡率はややE群に多いが, 有意差はなかった.死因ではE群に心破裂が多かった.以上のように, L群はE群に比し梗塞量が少なく, 心機能が良好であり, 異常Q波の出現時間により梗塞病態の推測が可能であり, 臨床上有用な指標と思われた.異常Q波の出現が遅れる因子として側副血行等の心筋防御機構の発達が推測された.
  • ―改善群と不良群の対比―
    後藤 英道, 中島 明彦, 井上 紳, 山田 斉, 岩崎 俊作, 長谷川 貢, 小林 正樹, 藤巻 忠夫, 新谷 博一
    1988 年 48 巻 3 号 p. 315-325
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    CCUにおける治療の進歩により, 急性心筋梗塞の死因としての不整脈死, 心不全死は減少傾向にある.しかし, 重篤な循環不全を呈する心原性ショックによる死亡は明らかな改善が認められず, 現在の心筋梗塞の診療上の問題点である.この点より, われわれは急性心筋梗塞に合併する心原性ショック例について, カテコラミン製剤を中心とする治療によりショックから離脱し得たか否かにより, 改善群と不良群に分け, その臨床病態の差異について検討した.さらに現在, 心原性ショックに対する内科的治療として有力な大動脈内バルーンパンピング法の適用についても検討を加えた.対象は昭和52年8月から61年12月末日までの期間に当科CCUに入院した急性心筋梗塞481例中, Myocardial Infarction Research Unit (MIRU) の心原性ショックの診断基準により判定した50例 (10.4%) で, 改善群は31例, 不良群は19例である.不良群では高齢者, 前壁を含む広範囲な梗塞, 早期収容例, 梗塞発症からショック発症までが早い例, 梗塞の進展または再発作を認める例が多かった.ショック時の心不全の程度では, 不良群で肺野の50%以上に肺ラ音を聴取する重症例が有意に多かった.ショック時に測定された血行動態指標値の対比では, 不良群で心係数, 一回拍出係数一回左室心仕: 事係数は有意に低く, 左室拡張末期圧を反映する肺動脈楔入圧は有意に高いことを認め, 不良群では重症の心機能低下例が多いことを示していた.このため, 末梢循環不全の一徴候である時間尿量も有意に減少していることを認めた.Dopamine, dobutamineなどのカテコラミン製剤の投与開始までの時間, および治療開始用量は両群間で差は認められなかった.大動脈内バルーンパンピング法を使用せずに心原性ショックから離脱し得た改善群21例のカテコラミン製剤の有効投与量は10.6±6.2μ9/kg/分であり, 急性心筋梗塞に合併した心原性ショック例に対しては, dopamineあるいはdobutamineの10μ9/kg/分前後の投与によって, ショックの改善が認められない例に対しては, 速やかに大動脈内バルーンパンピング法を行うことが, 治療上重要であると考えた.
  • 岡本 信也
    1988 年 48 巻 3 号 p. 327-333
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    一期的切除不可能な肝芽腫に対し, 短期間の強力な化学療法により腫瘍の縮少をみた後に, 切除を施行するdelayed primary operationが試みられている.その化学療法として, 教室では以前よりAdriamycin (ADM) の肝動注療法および門脈注入療法に注目し, 臨床例に施行すると共に, 実験的にその有用性および副作用の心毒性について検討してきた.今回著者は一回大量ADM肝動注および門脈注入法を実験的に試みた.実験は雑種成犬を用いて, 肝動注群 (5頭) , 門脈注入群 (5頭) , 末梢投与群 (5頭) の3群を作成し, それぞれにADM一回大量投与 (1.5mg/kg) を施行し, 右心房血, 末梢血ADM濃度 (注入直後, 5分, 10分, 15分, 30分, 60分, 120分) , 剖検にて心筋内ADM濃度, 肝 (左下葉) および骨髄 (脊椎骨) 内ADM濃度を測定し比較検討し以下の結果を得た.1) 末梢投与群の末梢血および右心房血のADM最高血中濃度は他の2群に較べ高かった.2) 右心系 (右心房+右心室) 心筋内ADM濃度は, 末梢投与群が他の2群より高かった.3) 肝組織へのADMの移行は, 動注群と門脈注入群において極めて高値であった.4) 骨髄内のADM濃度は末梢投与群に有意に高かった.5) 末梢血および右心房血のADM最高血中濃度, 心筋内ADM濃度, 肝組織および骨髄内ADM濃度のいずれに関しても, 肝動注群と門脈注入群との間に有意差はなかった.以上の結果よりADM大量一回肝動注療法および門脈注入療法は肝組織内へのADM集積が高く, かつ末稍投与法に較べて心毒性が少なく, また骨髄内ADM移行は殆ど認められなかったことから, delayed primary operationを目指した術前短期化学療法として有効な投与法と考えられた.
  • 中嶋 真, 太田 秀男
    1988 年 48 巻 3 号 p. 335-341
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肝性昏睡の発生機序については未だ解明されていない.一般には肝臓の代謝障害により脳への中毒物質の増加と必須物質の欠如とによるとされている.肝性昏睡を伴う肝硬変患者では, 血中遊離アミノ酸のうちフェニールアラニン, チロシンなど芳香族アミノ酸 (AAA) が正常の2~3倍に増加している.一方分枝アミノ酸 (BCAA) であるバリン, ロイシン, イソロイシンは正常の1/2に低下している.指標としてはMolar-ratio (MR, BCAA/AAA) を用い, 1.0以下になると肝性昏睡が出現するとしている.劇症肝炎ではBCAAは正常でAAAが5~7倍と著しく増加するため, MRは低下し肝性昏睡が出現するとしている.今回われわれは肝性昏睡26例に活性炭血液灌流 (CHP) と血漿交換 (PE) を施行し, 両者の治療による臨床効果について比較検討した.アンモニアは2倍程度の高値を示していたが正常範囲の症例もあり, またNEFAも一定の傾向はなく, 肝性昏睡の原因とは考えにくかった.CHP施行前後では総ビリルビン, アンモニアは減少する傾向にあったが有意差は認められなかった.一方PE施行前後では総ビリルビン, アンモニアはともに有意に減少した.AAAはCHP, PEでも変化せず, BCAAはPEでのみ有意に増加を認めた.意識の改善をみた症例ではCHP, PEによってAAAは減少しBCAAは正常化し, MRの改善を認め, EEGも改善した.明らかにMRとcomagrade, comagradeとEEGとの間には相関が認められた.CHP, PEは肝性昏睡に対しては両者とも有利と考えられたが, 肝硬変症では肝細胞の再生は期待できず, 劇症肝炎においても, 再生については効果はないと考えられた.肝硬変合併切除では残存する肝細胞機能を考えた手術適応が大切であり, 長期的には残存する肝細胞の賦活と再生を促す治療法との併用が必要と考えられた.
  • 宅間 永至, 杉田 幸二郎, 真木 寿之, 伴 良雄, 佐藤 温
    1988 年 48 巻 3 号 p. 343-355
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    未治療の原発性甲状腺機能低下症61例を対象として, 無選択的に筋障害について神経学的面から検討を加えた.1) 筋脱力感を89%に訴え, 動作緩慢80%, 他覚的脱力51%, 筋肥大89%に認めた.深部反射の弛緩相の遅延 (Lambert徴候) は92%, mounding現象71%, 異常感覚は46%が訴え, 他覚的感覚障害は25%に認めた.2) 筋症状の程度に関係なく, 大腿四頭筋生検材料を用いて組織学的検索 (21例) を施行し, 全例に筋原性変化を認めた.その内容は筋線維の大小不同16例 (76%) , 筋鞘核の増加11例 (52%) , 中心核13例 (62%) , リンパ球浸潤6例 (29%) , ムコ蛋白沈着4例 (19%) であった.21例中17例の組織化学検索では, ミトコンドリア異常はsubsarcolemmal hyperactivity5例 (29%) , moth eaton所見4例 (24%) に認めた.Small angulated fiber, 小群集萎縮は21例中12例 (57%) , そのうち, 明らかなneuromyopathy例は3例 (14%) であった.3) 甲状腺機能重症度を血中T4値およびTSH値から判定し, その重症度を組織学的筋障害程度と対比して検討した結果, 組織学的筋障害程度とは関連性がみられなかった.4) 甲状腺機能低下症の罹病期間と組織学的筋障害程度の関連をみると, 罹病期間が短い症例は筋組織病変が軽度であり, 10年以上の症例は高度な筋原性変化に加えて神経原性変化の混在所見も高率となった.5) 筋線維タイプ別分類からみると, 17例中16例 (94%) はタイプII線維数の占める比率が, タイプI線維より高いか, 同率であった.また, タイプII線維の萎縮が8例 (47%) と多く, タイプ1線維の萎縮を2例 (12%) , 筋組織病変が高度になると両型線維の萎縮を3例 (18%) に認め, atrophy factorも高値となった.肥大筋線維はタイプI線維の肥大を2例, 両型線維の肥大を1例認めた.6) 腓腹神経の検索 (6例) では有髄神経線維数の減少, 節性脱髄, endoneurial fibrosisが主体で, 軸索の変化は軽度であった.7) 髄液検査 (21例) では蛋白増加を10例 (48%) に認め, 筋生検施行例 (13例) では髄液圧亢進, 蛋白量増加は筋組織上の神経原性変化とは関連がなかった.筋電図 (23例) は15例 (65%) に異常を認め, 15例中筋原性パターン13例 (87%) , 多相性電位8例 (53%) , 高振幅電位3例 (20%) で, 罹病期間が長期例では神経原性パターンが高率にみられた.末梢運動神経伝導速度は, 正中神経 (16例) で2例 (13%) , 脛骨神経 (7例) で2例 (29%) に遅延を認めた.
  • 池田 実徳, 坂上 宏, 紺野 邦夫
    1988 年 48 巻 3 号 p. 357-361
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれは, 民間伝承で胃癌等の消化器系癌患者に用いられて来た五葉松 (Pinus parviflora Sieb. et Zucc.) の松かさ抽山液には, ヒト骨髄性白血病細胞ML-1をマクロファージ様細胞に分化誘導する物質が存在することを見いだした.本論文は, この物質の精製法の確立について報告する, 分化誘導物質の精製は, 標的細胞のML1細胞にNBT還元能を誘導する活性を指標にして行った.本物質は, 松かさ熱水抽出液を濃縮後, エタノール沈殿SephadexG-200によるゲルろ過, DEAE-Sepharose CL-6Bイオン交換クロマトグラフィーで約327倍に精製され, 収率は11%であった.本物質は, 7.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で, 黄褐色の単一バンドとして移動し, PAS染色陽性であった.以上の実験結果は, 松かさ由来の分化誘導物質は分子中に, 強力な酸性基と糖を含むことを示唆している.
  • 中山 貞男, 栗島 秀行, 大泉 高明, 小林 賢次, 坂本 浩二
    1988 年 48 巻 3 号 p. 363-368
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    コレステロール負荷により誘発したウサギの高脂血症ならびに動脈硬化症に対するclinofibrateの作用を検討した.被検薬物は1%コレステロール飼料 (HCD) に0.2% (w/w) 添加した混餌飼料として, 1日1回1009/匹を与え16週間飼育した.飼育2週毎に耳静脈より採血し, 血漿脂質の測定を行った.16週間後には肝を摘出し肝脂質の測定を行い, 大動脈の形態変化を肉眼的あるいは走査電子顕微鏡 (SEM) を用いて観察した.体重増加と飼料摂取量は対照, HCD, clinofibrate添加の各群で差を認めなかった. Clinofibrateは飼育6~10週にHCD群を上まわる総コレステロール (TC) , リン脂質 (PL) , 遊離コレステロール, 中性脂肪の増加を示し, 総脂質もこれら脂質の増加に関連して増加した.高密度リボ蛋白中のTCはHCD群で飼育6~16週に増加傾向を示したがclino丘brateは影響を示さず, PLも明らかな変化を示さなかった.Atherogenic indexはHCD飼育によるTC, PLの増加で上昇した.Clino丘brateはHCDを上回るatherogenic indexの上昇を示した.胸部大動脈の肉眼的観察ではclinofibrateはHCD以上の内腔表面への脂肪沈着を示した.大動脈弓部内腔表面構造のSEMによる観察では, HCD飼育で対照に比較して山波形構造が膨化し, 内皮細胞核が溝を埋めるような形態変化を示した.ClinofibrateはHCD飼育による形態変化を抑制せず, 山波形構造が不鮮明となり, 肥厚平坦化した内腔表面像を認めた.コレステロール負荷によるウサギの高脂血症ならびに動脈硬化症に対してclino丘brateは改善作用を示さなかった.
  • 飯島 武, 中山 貞男
    1988 年 48 巻 3 号 p. 369-373
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    脂質代謝と下垂体一甲状腺機能に対するdexamethasone (DM) とprednisolone (PS) の影響を検索した.5週齢, 体重1509前後のSD系雄性ラットを用い, DMとPSは0.2, 2.0mg/kgを1日1回7日間皮下投与した.DM0.2mg/kg, PS2.0mg/kgで体重増加は抑制され, DM2.0mg/kgでは減少を認めた.下垂体と甲状腺重量はDM2.0mg/kgで減少した.PS0.2mg/kgでは甲状腺重量の増加を示した.肝重量はDM2.0mg/kgで増加した.血清の脂質 (総コレステロール, 遊離コレステロール, リン脂質, 中性脂肪) とtransaminase (GOT, GPT) はDM2.0mg/kgで明らかな増加を示したが, PS投与では変化がみられなかった.下垂体と甲状腺のtransaminaseはDMやPS投与で変化がなかった.肝組織はDM0.2mg/kgで肝細胞の膨化を認め, 2.0mg/kgでは脂肪沈着によると思われる細胞質の脱落, 核の漏出を示した.血清と甲状腺の甲状腺刺激ホルモン (TSH) はDM投与で変動するものの有意ではなかった.下垂体のTSHはDM2.0mg/kgで減少を示した.PSは血清, 甲状腺, 下垂体のTSHレベルに影響しなかった.DM投与による脂質代謝異常は肝組織障害の程度と相関しており, 下垂体一甲状腺機能に対する影響もPSに比べて強いことが明らかとなった.
  • ―筋紡錘の病変について―
    佐藤 温, 真木 寿之, 鈴木 義夫, 塩田 純一, 武内 透, 杉田 幸二郎
    1988 年 48 巻 3 号 p. 375-381
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    閉塞性血管障害時の筋病理を検討する目的で, 実験的虚血筋を作成, 組織化学的に筋紡錘変化を観察した.対象は雄ネコ9匹の下腿筋.正常対照は4匹.方法は腹部大動脈, 右総腸骨動脈, 右大腿動脈の計3か所を同時に結紮し, 虚血筋を作成.8時間後に結紮を解放, 3日後に屠殺した.ただちに, 右前脛骨筋を摘出し中枢側から4個のブロックに分け, おのおのを液体窒素で凍結クリオスタットで各ブロックの中枢側から薄切を開始し, 顕微鏡下に, 筋紡錘の出現を確認し, その中枢側極部から赤道部, さらに末稍側極部までの標本を作成し, 組織化学的に検索した.結果: 1) 正常対照の筋紡錘; 各ブロックの筋紡錘の平均個数は中枢側より, おのおの4.5, 4.8, 6.3, 3.5個であり, 筋の横断面では, 筋の縦軸に並行して走る前脛骨動脈とその分枝動脈の近傍に筋紡錘は多く, 辺縁部では少なかった.個々の筋紡錘の直径は赤道部では平均100~180μm.カプセル厚は3~7μm.錘内筋はbag fiber2本, chain fiber4~6本で構成され, 赤道部では, NADH-TR, ATP ase (pH4.6) 活性はともに弱く, 傍赤道部から極部では, NADH-TR, ATP ase活性の相違により, bag 1, bag 2 fiberおよびchain fiberに区別できた.2) 筋紡錘の虚血性変化; 筋紡錘周囲の錘外筋に病変の認められない筋紡錘では, すべて錘内筋には変化が認められなかった.錘外筋の障害度が軽度な群では, 錘外筋は選択的にタイプ1線維のNADH-TR活性が低下したが, 錘内筋のNADH-TR活性は良好に保たれた.中等~高度障害群では錘外筋, 錘内筋ともに, NADH-TR, ATP ase活性がともに低下していた.錘内筋の部位 (極部, 傍赤道部, 赤道部) による障害度には, その差は認められなかった.結論: 筋紡錘に対する虚血性変化を検討すると, 錘外筋病変が軽度な群では錘内筋障害度は予想されるよりも軽微であり, 錘外筋と錘内筋の病変障害程度に差が認められた.錘外筋の病変が中等~高度な群では錘内筋は並行して障害された.
  • 朝倉 隆司, 金 有叔, 笹 節子, 石川 自然, 稲葉 美徳, 野嵜 善郎, 奥山 和男
    1988 年 48 巻 3 号 p. 383-391
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    急性期を過ぎた川崎病の子供とその母親を対象にアンケート調査を行い, 不安や生活制限の実態とその心理社会的要因を検討した.有効回答者数は113名 (75.3%) である.子供に対し何らかの不安を持っていた母親は89.4%で, 主な内容は再発 (62.8%) , 後遺症・動脈瘤 (59.3%) , 激しい運動ができない (26.5%) であった.また何らかの生活上の制限を行っていたのは28.3%で, 主な制限は予防注射 (12.4%) , スポーツ (10.6%) , 就寝時刻・夜更し (10.6%) であった.さらに母親の不安並びに子供に加える生活制限に関連する心理社会的要因を検討したところ, 1) 子供の病気がまだ続いているという母親の意識, 2) 子供の川崎病について助言を求める行動を多く取っていること, 3) 川崎病の母親同士や家族・親族らと交換される情報の質, 4) 母親を取り巻く家族のダイナミックス, 5) これまでストレスフルな生活上の出来事にいかに対処してきたか, などの要因が関連していると考えられた.
  • 渡辺 秀義
    1988 年 48 巻 3 号 p. 393-399
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    慢性アルコール性肝傷害における腎糸球体病変について剖検例69例 (脂肪肝41例, 脂肪性肝硬変28例) を, 正常例および非アルコール性肝硬変例を対照に用いて, 比較検討した.慢性アルコール性肝硬変例の腎糸球体変化の主体はメサンギウム基質の増加であり, 脂肪肝例65.8%, 脂肪性肝硬変例96.4%にびまん性のメサンギウム基質の増加をみた.中等度以上の変化がみられたものに限ってみれば, それぞれ14.6%, 50%の頻度で変化がみられ, 対照の正常例 (9.1%, 中等度以上0%) とは明らかな差を認めた.免疫組織化学的な検索では, IgA免疫グロブリンのメサンギウム基質への沈着が高率にみられた.IgA免疫グロブリン陽性率は, 脂肪肝例21.1%, 脂肪性肝硬変例55.6%であり, メサンギウム基質の増加には, IgA免疫グロブリンの関与が考えられた (対照例では7.7%にIgA陽性) .また, さらにアルコールによる変化を精査する目的で糸球体瘢痕化率および小動脈を検索したが, 特に糸球体瘢痕化率において, 対照例では, 30歳代で平均1.07%, 40歳代では2.36%, 50歳代では3.33%, 60歳代では10.27%の値を示すのに対して, 慢性アルコール性肝硬変例では30歳代の低年齢層から平均値で7.37%と高い率を示しており, 非アルコール性肝硬変例が対照例と同程度の瘢痕化率に留まっているのとは対照的な結果を得た.今回の検索では, 従来言われているように, 慢性肝疾患例における腎糸球体病変と同様に脂肪肝, 脂肪性肝硬変に代表される慢性アルコール性肝傷害例においてもメサンギウム基質の増加が確認され, IgAとの関連も示唆された.これはアルコールによる肝傷害の影響と考えられるが, これとは別に肝傷害に関係なく, アルコールによる二次的な変化と考えられる糸球体瘢痕化が高度に認められた.これはその瘢痕化の分布状況等から考えて細動脈レベルの障害による虚血性変化と考えるのが妥当と思われた.以上のように, 慢性アルコール性肝疾患における腎糸球体病変は, 他の慢性肝疾患における変化と同様に, 肝疾患に伴うIgA腎症と考えられる変化が高率に認められたが, その他にアルコールによる二次的な変化が加わり腎糸球体変化を複雑にしているものと考えられ, 特に高血圧性変化の関与が示唆された.
  • 原田 康雄
    1988 年 48 巻 3 号 p. 401-424
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    半無限媒体の水に面一方向線束が垂直に入射したときの, 光子の反射と透過の問題をモンテカルロ法で解いた・二次放射線のスペクトルと, それらを積分して得られる光子束, エネルギー束, 線量再生係数, およびいろいろな照射野における深部線量を, 200keVから25keVの線源について5自由行程の深さまで計算した.これらのエネルギーの光子に対する水中での重要な過程として, 光電効果, 干渉性散乱, 非干渉性散乱を考慮した.得られた結果を既報のものと比較すると, 100keVの入射エネルギーを除いて, 一般にはよく一致するが, 深いところでは相違が現れる.
  • Alpha-Naphthyl-Acetate-EsteraseとAdenosine-Triphosphatase染色による検索
    杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 斉藤 司, 大塚 敏彦, 広本 浄子, 小倉 享子, 鈴木 孝
    1988 年 48 巻 3 号 p. 425-428
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肉芽腫性リンパ節炎 (5例の結核性リンパ節炎, 2例の梅毒性リンパ節炎および1例のサルコイドーシス) におけるTcellとB cellの量的変動を, リンパ節スタンプ標本におけるAlpha-Naphthyl-Acetate-Esterase (ANAE) とAdenosine-Triphosphatase (ATPase) 両染色により検索した.最近の単クローン性抗体を用いた諸家の報告と比較し次のような事項が示唆された.1) 肉芽腫性リンパ節炎においてはT cellが優勢であるが一部の症例ではANAE-Droplet positive cellの明らかな増加は認められなかった.2) したがってANAE-negative cellやATPase-positive cellの少なくとも一部の細胞にはT8 cellが含まれている可能性がある.3) 梅毒の早期の反応からT cellはB cellより多く, 結核性炎と同様に細胞性免疫反応が病初から起っている現象と思われる.肉芽腫性リンパ節炎とともにPiringerリンパ節炎, 伝染性単核症のリンパ節各1例が検索され, いずれもT cellが多数を占めたが, 特に伝染性単核症でそれが著明であった.
  • 杉山 喜彦, 太田 秀一, 塩川 章, 九島 巳樹, 斉藤 司, 大塚 敏彦, 広本 浄子, 小倉 享子, 鈴木 孝
    1988 年 48 巻 3 号 p. 429-432
    発行日: 1988/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    比較的まれとされているリンパ節疾患7例につきANAEおよびATPase染色によりT-cellとB-cellの量的変動を検索した. T-zone LymphomaにおいてはややT-cellが多く, Prolymphocytic LeukemiaおよびCastleman's LymphomaにおいてはB-cellが大半を占めた.Non Hodgkin's Lymphomaの諸分類においていまだ一定の疾患単位とされていないT-zone Lymphoma, 細胞の発生起源に関して諸説のあるProlymphocytic LeukemiaやCastleman's Lymphomaにおいては, 今回のわれわれの検索結果は少なくともこれらのまれな疾患においてその増生の主体をなすリンパ球の機能の一面を示す所見と考えられる.
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