昭和医学会雑誌
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精神分裂病の臨床的遺伝様式に関する研究
大岩 恭子竹村 堅次
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1989 年 49 巻 2 号 p. 187-193

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抄録
Kraepelin, E.が内因性精神病の疾病単位として, 早発性痴呆と躁うつ病を定義した後も, 精神分裂病の診断基準と境界設定について, 多くの議論がなされてきた.分裂病の基礎に遺伝の問題があるということは, 古くより想定されているが, 今回, 中核を形づくる症状を観察することにより, 基礎にある遺伝の問題について考えてみた.その方法として, 従来よりある患者を発端者とする家族研究の集積であり, 昭和61年12月現在の烏山病院で加療中の全分裂病者1068例の家族についての調査を行った.優性遺伝との考え方に妥当性がみとめられたものの, これだけでは説明しがたく, ここでとくに発端者からみた三親等の同型分裂病に注目し, これを経由する親の性格が, 臨床的に疾病とどのような関係があるかを検討してみた.正常と質的に違う病的性格者の存在, 環境的修飾因子の影響, 遺伝子の発現性の動揺, 浸透度の問題などの副因子の作用により, 不規則優性遺伝の形をとる優性遺伝子である主遺伝子が, 遺伝子型から表現型に関わりをもち, 分裂病の病因となっていると考えられた.
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