昭和医学会雑誌
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大うつ病の初発年齢からみた統計的検討
河合 正登志豊田 益弘西島 久雄井上 道雄平良 雅人石井 正宏桜木 章司
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1989 年 49 巻 3 号 p. 243-261

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抄録

1979年1月から1985年12月までの7年間に昭和大学病院神経科精神科外来を初診し, DSM-IIIRにより大うつ病に該当した295症例より無作為に抽出した132例のうち, 初回病相期間中に初診した単極性うつ病75例を対象とした.これを初発年齢で2分し, 45歳未満で初発した28例を若年初発群, 45歳以上で初発した47例を初老期初発群として, 初診時のDSM-IIIRの多軸診断項目, DRS-S78のプロフィル, 性差, 軽快に至るまでの期間, 入院, 再燃, 受診期間, 転帰, DRS-S78の経時的変化について比較し, 次のような結果を得た.1) 初診時の評定で両群間に有意差がみとめられたのは, 重症度, 性格特徴, 発病に関与したストレスの加わり方, およびDRS-S78の5つの項目 (不安焦燥, 離人症, 睡眠障害, 希死念慮, 心気症状) であった.2) 経過で両群問に有意差がみとめられたのは, 入院率, 再燃回数, 服薬中断による再燃率とその同数, 受診期間, および転帰であった.3) 初老期初発群のプロフィルは, “強迫性”の人格傾向を有する“女性”が, “急激に起こった事象が優位”のストレス下に発病し, 比較的“軽症”で, “不安焦燥, 不眠, 心気傾向が強く, 離人症と希死念慮は軽度である”うつ病といえる.4) 初老期初発群の方が, “入院につながりやすく”, その後も“再燃を繰り返しやすく”, “長期にわたって通院を続けるものが多い”.5) 若年初発群では, 再燃する比率では変わらないが, 服薬中断に起因する再燃の比率が高かった.6) 初老期に初発するうつ病は, より若年期に初発するうつ病と比較していくつかの特徴点を有するが, 両者の共通点は多く, 1つのclinical entityであるとは考えにくい.7) しかし, 初老期に初発するうつ病は, Tellenbachの記載した精神病理学的特徴をもつうつ病に近く, 若年期に初発するうつ病はKraepelinの記載した内因性精神病としての躁うつ病の特徴に近く, 本研究を通して両古典的研究の関係を結び付けることが出来た.

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