抄録
心電図同期心プールイメージング (マルチゲート法) より求められる駆出分画 (ejection fraction: EF) , 最大収縮速度 (peak ejection rate: PER) , 最大拡張速度 (peak filling rate: PFR) 等の心機能パラメータの精度とデータ収集のサンプリング間隔の関係を計算機シミュレーションと臨床データから検討した.安静時のR-R間隔の変動に伴う一心拍ごとの左室容積曲線の変化は, 曲線の各部が等しい割合で伸縮するモデルを仮定し, R-R間隔, 統計雑音, window幅, サンプリング間隔を考慮したマルチゲート法のシミュレーションを行った.このモデルでは駆出分画, 最大収縮速度, 最大拡張速度はサンプリング間隔によらず, 10~40msecで一定となった.サンプリング間隔10msecで収集した心アンギオプルの臨床データより, サンプリング間隔20~40msecの左室容積曲線を作成し算出した心機能パラメータは, やはりサンプリング間隔に無関係に一定となりシミュレーションと同じ結果になった.一方, 負荷EF検査では負荷の段階とともに左室容積曲線の形が安静時と著しく変化し, 特に最大収縮速度, 最大拡張速度はサンプリング間隔を20msecより40msecにすると低く算出された.この理由は負荷の段階が増すにつれ駆出分画が増加する症例では, 左室容積曲線の微分曲線から推定されるようにその左室容積曲線は安静時より高い周波数成分を含むためと考えられる.イメージの画質の点からみて, 壁運動の異常の有無の診断はサンプリング間隔20msecのイメージで充分可能である.以上のことから, マルチゲート法の最適なサンプリング間隔は安静時で20~40msec, 負荷時で20msecと結論した.