抄録
胃内併存病変を有する胃癌18例について臨床病理組織学的検討を加えた.胃潰瘍併存胃癌は大部分陥凹型で, 早期癌と進行癌, 分化型と低分化型はそれぞれほぼ半数ずつであった.併存潰瘍はU1-II, IIIのものが多く, 瘢痕化したものが多かった.胃癌と胃潰瘍の位置関係については, 癌が併存潰瘍の幽門側に存在するものが多かった.十二指腸潰瘍併存胃癌はすべて陥凹型で, いずれも幽門前庭部に位置していた.併存潰瘍はU1-III, IVとやや深い傾向にあった.ATP併存胃癌は隆起型を呈するものが多く, 胃濱瘍併存例に比べやや高位に存在する傾向にあった.深達度はすべてm癌で, 組織型もすべて高分化型管状腺癌であった.ポリープ併存胃癌は1例のみであった.以上のごとく, 胃潰瘍, 異型上皮を併存する胃癌は, 併存病変の形態を模倣するように発育進展する傾向が伺われ, 興味深い.また, 胃内併存病変を有する胃癌は早期癌が多く, 胃良性病変を有するものについては, 病変部以外の胃内の観察を十分に行うとともに経時的な観察により, 胃癌の早期発見に努めるべきと思われる.