昭和医学会雑誌
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50 巻, 1 号
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  • 小室 好一, 猪口 清一郎, 伊藤 純治, 熊倉 博雄, 忠重 悦次, 山本 俊雄
    1990 年50 巻1 号 p. 3-12
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    30歳以上の健康な成人100名 (男50, 女50) につき, 体幹5断面高 (Erdheim5, 6, 7, 8, 10) のCT写真を撮影, Rohrer指数によるA (129以下) , C (130~149) , D (150以上) の3体型別に, 各断面の総断面積および組成 (脂肪層, 骨筋層, 体腔) を写真に基づいて比較した.結果: 1.各断面の総断面積を体型別に見ると, 男女各断面ともD, C, A体型の順に大であった.断面別にはA, C体型では男性はE5, E6, E7, E10, E8の順に大であったが, 女性ではE10がE5に次ぎ, D体型でもほぼ同様の傾向が見られた.男性のD体型ではE5とE6とE7およびE8とE10とのそれぞれ相等しい2群に分かれた.2.年齢的には男性ではA, C体型における断面別順位は各年代とも同様で, D体型も含めて加齢減少の傾向が見られたが, C体型の腹部断面 (E8, E10) とD体型の全断面では70歳代で急増の傾向が見られた.女性では男性に比べて骨盤部を含むE10が大でE5に近くなり, E7とE8はA, C体型では等しくなる年代が多く, D体型では60歳代以降他よりも著しく小となる傾向が見られ, E10は60歳代から急減した.3.構成比を体型別に見ると, 男性では各体型ともE5, E6, E7では体腔比が最も大で骨筋層比がこれに次ぎ, E10では骨筋層比が最も大で体腔比がこれに次いでいた.E8ではA, C体型は骨筋層比が最も大であったが, D体型は骨筋層比と体腔比が相等しかった.これに対して女性ではE5, E6, E7は体腔比が, E10では骨筋層比が最大であり, E8では各組成とも30%前後から30%台で, かつ断面間の差は各体型とも僅少であった.すなわち, 女性では各断面とも男性に比べて脂肪層比が高く, 特にE8, E10において著明であった.4.各組成の年齢別体型別変化については, 脂肪層比は男女, 各断面, 各体型とも加齢減少の傾向を示したが, D体型の男性では各断面とも70歳代で増加の傾向が見られた.骨筋層比は男性では一般に40歳代あるいは50歳代で最も大, 70歳代で最も小となる傾向が一般的であったが, E7ではA, D体型で加齢減少の傾向が見られた.女性では各断面, 各体型とも変化が少なかった.体腔比は男性では各体型, 各断面とも60歳代あるいは70歳代で最高となり, 女性では腹腔の加齢的増大傾向が認められた.
  • ―神経障害と皮膚障害について―
    藤元 ますみ, 臼杵 淳子, 西島 久雄, 井上 道雄, 津村 良子, 奥羽 徹
    1990 年50 巻1 号 p. 13-27
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1987年10月1日から1988年9月30日までの1年間に昭和大学病院神経科・精神科外来を受診したてんかん患者314例のうち, 抗てんかん薬を10年以上服薬している221例について, 副作用の重複性や副作用の出現に影響を及ぼす臨床的諸因子について多角的に調査を行い, 次のような結果を得た.1) 対象例のてんかん分類は, 通常のてんかん分類と比較すると症候局在性てんかんが多く, 特発全般性てんかんが少ない傾向にあった.2) 神経障害は92例 (41.6%) , 皮膚障害は92例 (41.6%) , 血液障害59例 (26.7%) , 骨代謝障害42例 (19.0%) , 消化器障害は182例 (82.4%) であった.なお, 消化器障害はγGTPの上昇が大部分を占めていた.3) 神経障害と皮膚障害, 血液障害と骨代謝障害は同一症例に重複する可能性が有意に高かった.4) 皮膚障害は服薬後10年未満に出現する割合が有意に高かった.また, 神経・皮膚重複障害は, いずれかの障害が先行することが有意に多く, 皮膚障害先行群は, 皮膚障害が出現した後, 神経障害が出現するまでの期間は平均10年であった.5) 神経障害は, 症候全般性てんかん, 乳幼児期脳疾患の既往, 精神遅滞の合併, 初発年齢が10歳未満の症例に有意に多く出現した.皮膚障害は, 症候全般性てんかん, 精神遅滞を合併する症例に有意に多く出現した.6) 副作用初回出現時投与薬剤は, 神経障害, 皮膚障害のいずれの副作用においても, PBやDPHが70%以上を占めていたが, どの薬剤が副作用出現に関し責任薬剤であるかを決定することは困難であった.また, 投与量には有意差はみとめられなかった.7) 神経障害, 皮膚障害出現時の薬剤の投与量, 薬剤数は非障害群と比較して有意差はみとめられなかった.8) 神経障害群の中で症候全般性てんかん, 乳幼児期脳疾患の既往, 精神遅滞の合併の有無によらず, 副作用出現時の薬剤の投与量, 薬剤数には有意差はみとめられなかった.9) 皮膚障害群の中で症候全般性てんかん, 精神遅滞の合併の有無によらず, 副作用出現時の薬剤の投与量, 薬剤数には有意差はみとめられなかった.10) 神経障害群, 皮膚障害群において, 症候全般性てんかんは他のてんかんよりも投与薬剤数が多剤傾向にあった.以上より, 神経障害と皮膚障害は重複する可能性が高く, 副作用の出現には個体因子の影響が大きいことが示唆された.
  • 山永 裕明
    1990 年50 巻1 号 p. 28-34
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    (目的) コンピューターを利用した振戦の定量的方法を用いて, 生理的振戦の周波数, 振幅を定量的に評価, 分析を行い, その特徴を示すことで病的振戦との鑑別の基礎ならびにマイクロサージャリー医の適性判断の参考にすることである. (対象) 健常人340例 (男性87例, 女性253例, 3-86歳, 平均年齢43.3歳±20.4歳である) . (方法) 両上肢前方挙上, 手指伸展位にて, 示指先端にMV pick up装着し, その出力を30秒間, アンプ, フィルター通し, シグナルプロセッサー7T08にてフーリエ変換を行い, パワースペクトルをブラウン管上に描記し, ポラロイドカメラにて記録し, 周波数, パワー (振幅の2乗) の分析を行った. (結果) 1) 周波数帯域パターン (パワースペクトル) : 周波数帯域パターンは, 7型に分類できた.340例中著明なピークを持ち固有周波数として認められた例は, 157例 (46.1%) であった.固有周波数を認める可能性のない型 (VI, 田型) もあり22.3%を占めた.2) 固有周波数, パワーと年齢: 年齢 (X) と固有周波数 (Y) は, 有意の負の相関を示した (r=-0.616, p<0.001, Y=11.3198-0.0428X) .平均周波数9.469±1.418Hz (5.953-12.492Hz) .年齢別では, 固有周波数を認めた頻度は, 0-9歳に最も低く, 22%であった.年齢とパワーには, 有意の相関を認めなかった.3) 振戦の日差, 日内変動: 周波数の日差, 日内変動は少なく, 周波数帯域パターンにも変化は認められなかった.パワーは, 日差, 日内変動が認められなかった. (結論) 1) 健常人においては, 特別の固有周波数を認める群と全く固有周波数を認めない群に大別でき, 健常人すべてに固有周波数をもつ生理的振戦を認めるものではない.2) 固有周波数をもつ群においては, その周波数は, 加齢とともに減少を示す.3) 個人における周波数帯域パターンは, ほとんど一定で, 日差日内変動は示さない.
  • 志水 康雄, 友松 英男, 新井 景子
    1990 年50 巻1 号 p. 35-47
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    重度聴覚障害児に対する補聴器のフィッティング法である「60dBフィッティング法」の理論と方法を検討し, その妥当性を重度聴覚障害児の (1) 聞こえの実態の分析, (2) 発音の実態の分析の点から検討・考察した.その結果, 次のことが明らかとなった.1.聞こえのダイナミックレンジは20dB位であり, 最も狭くなると10dB位の所もあり, 聴力が厳しくなるに従ってまた, 周波数が高くなるに従ってより狭くなる傾向が著明であった.このことは, 聴力が重度であるときは、聞こえのダイナミックレンジが著しく狭くなるために, 補聴器の性能上MCL対応等の方法は不可能である.2.対象者の補聴器装用域値は, 60dBSPL付近であった.3.単語了解度検査結果および子音明瞭度検査結果は, 重度な聴覚障害者であっても以前に比べて向上がみられた.これは早期教育, 補聴器性能の向上などによるものであろう.また, 補聴器装用域値が60dBSPL台まで矯正されていれば単語了解度はかなり良くなることが判明した.このことから重度な聴覚障害児のための補聴器のフィッティング法として「60dBフィッティング法」の妥当性が立証された.4.発音明瞭度検査の結果から, 以前の重度な聴覚障害者よりも全体的に発音明瞭度が良くなっていることが明かとなった.このことは筆者らの実践してきた補聴器フィッティング法による聴覚活用教育の成果の向上を示すものと考えられた.以上の分析に基づいて, 「60dBフィッティング法」の妥当性を考察した結果, 現在の時点で, この方法が重度聴覚障害児の補聴器フィッティングの実際的方法として最善であることが立証, 確認された.
  • 古山 公英, 杉村 たか子, 多田 仁
    1990 年50 巻1 号 p. 48-66
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    飼料中の蛋白質含有量の差が, メチル水銀毒性の発現および臓器内への蓄積量におよぼす影響について, 高蛋白, 通常蛋白および低蛋白飼料を作製し, さらにそれぞれに対照群, 水銀単独群とセレン併用群を設けラットを用い15ヵ月間の長期投与実験を行い検討した.飼料中の蛋白含有量の違いによる体重増加量, すなわち発育の抑制は見られなかったが, 水銀投与の影響と思われる発育阻害が見られた.メチル水銀中毒による後肢の交叉現象は, 低蛋白飼料で飼育した水銀単独群でのみ4例認められた.しかも病理所見でもこれら中毒症状を示した4例では坐骨神経に脱髄を認め, 低蛋白で毒性が強まる事が示唆された.しかし, セレン投与によって脳内水銀量が高まるにもかかわらず同低蛋白飼料のセレン併用群では中毒症状は認められず, セレンのメチル水銀毒性発現に対する抑制効果も再確認された.また, 最初の発症例から最小発症量は平均飼料摂取量と飼料中メチル水銀の実測値からは310.8μ9/kg/dayで, メチル水銀添加の理論値からは258.5μ9/kg/dayと求められた.臓器内への蓄積量については脳と肝では水銀単独群, セレン併用群共に総水銀, メチル水銀の蓄積量は低>通常>高蛋白飼料の順で蛋白含有量の低い飼料群の方が蓄積量が高かった.しかし, 腎では明確な差は認められなかった.各飼料の水銀単独群とセレン併用群の比較ではセレン併用群の方が高い蓄積量であった.総水銀量に対するメチル水銀量の割合では, 低蛋白飼料の水銀単独群の腎でメチル水銀量の占める割合が他と比べ高く, 飼料中の蛋白は腸内細菌による脱メチル化に影響を与えている可能性が示唆された.
  • 島田 明範, 倉田 幸令, 竹田 二美代, 紺野 邦夫, 菅谷 慶三, 竹田 稔, 佐藤 永雄
    1990 年50 巻1 号 p. 67-75
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    生体はストレスにさらされるとさまざまな反応を起しこれに対応, 適応する事が知られている.今回われわれはラットに水浸固定法でストレスを負荷し, 下垂体, 線条体および副腎でのMethionine-Enkephalin (Met-Enk) , Catecholamine (CA) の動態について検討した.Met-EnkはRIA法で, CAはHPLC-ECD法で定量した.副腎では30分, 3時間の水浸固定でMet-Enkはコントロールの約2倍を示したが, 長時間 (15時間) の負荷ではコントロールと同じレベルであった.30分の水浸固定を室温水から氷浴水に変えてもMet-Enkの増加の程度には変化を来さなかった.線条体では30分の負荷でコントロールの約1.6倍, 3時間では2.5倍とストレス負荷時間と共にMet-Enk量は増加し, かつ15時間の負荷後でもコントロールの1.6倍のMet-Enkの含有が認められた.また, ストレッサーを室温水から氷浴水に変えるとMet-Enkはコントロールの約2倍に増加し, ストレス強度に対応した異なった応答を示した.下垂体のMet-Enk量の変動も線条体の場合と同じ傾向を示したが, その変動幅はより大きく, 3時間負荷ではコントロールの4倍, 15時間でも2.5倍の高値を示した.さらに下垂体においても線条体と同様ストレス強度を識別する応答を示した.長時間のストレス負荷下における副腎と線条体のMet-Enkの合成について検討すると, 副腎ではMet-Enkの前駆体タンパクからのペプチドの生成は抑えられているのに対し, 線条体では高分子前駆体から中間サイズのぺプチド, さらにMet-Enkそのものも高濃度に存在し, releasableなMet-Enkの合成がスムースに行われている事を示唆する結果が得られた.一方, 同じストレス条件化でのCAの動態を検討すると, 副腎では30分のストレス負荷でエピネフリンがわずかに増加するが, 3時間の負荷ではやや減少し, 15時間の負荷ではコントロールの約1/3であった.CA合成律速酵素であるTyrosine hydroxylaseの活性はストレス負荷により上昇し, 15時間の負荷ではコントロールの約1.5倍を示し, また, ドーパミン (DA) 量はコントロールの約3倍の高値を呈したことから, 副腎では長時間のストレス下ではDAからノルエピネフリン (NE) , あるいは, NEからエピネフリンの生成ステップで抑制がかかることが示唆された.一方, 線条体においては30分のストレス負荷でDAはコントロールの2倍, 3時間では2.7倍に増加するのに対し, 15時間ではほぼコントロールと同じレベルであった.下垂体では, 30分, 3時間, 15時間のストレス負荷でDA量に差は認められなかったが, DAの代謝産物であるDihydroxy phenyl acetic acid (DOPAC) と, DAの比が, ストレス負荷時間の増加と共に高値を示し, 下垂体ではDAのturnoverが亢進していることが認められた.
  • 廣本 雅之, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 真田 裕, 増尾 光樹, 小林 建一, 中山 旭
    1990 年50 巻1 号 p. 76-81
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胃内併存病変を有する胃癌18例について臨床病理組織学的検討を加えた.胃潰瘍併存胃癌は大部分陥凹型で, 早期癌と進行癌, 分化型と低分化型はそれぞれほぼ半数ずつであった.併存潰瘍はU1-II, IIIのものが多く, 瘢痕化したものが多かった.胃癌と胃潰瘍の位置関係については, 癌が併存潰瘍の幽門側に存在するものが多かった.十二指腸潰瘍併存胃癌はすべて陥凹型で, いずれも幽門前庭部に位置していた.併存潰瘍はU1-III, IVとやや深い傾向にあった.ATP併存胃癌は隆起型を呈するものが多く, 胃濱瘍併存例に比べやや高位に存在する傾向にあった.深達度はすべてm癌で, 組織型もすべて高分化型管状腺癌であった.ポリープ併存胃癌は1例のみであった.以上のごとく, 胃潰瘍, 異型上皮を併存する胃癌は, 併存病変の形態を模倣するように発育進展する傾向が伺われ, 興味深い.また, 胃内併存病変を有する胃癌は早期癌が多く, 胃良性病変を有するものについては, 病変部以外の胃内の観察を十分に行うとともに経時的な観察により, 胃癌の早期発見に努めるべきと思われる.
  • ―特に髄膜炎における変動とNSE値との比較―
    古荘 純一, 田角 勝
    1990 年50 巻1 号 p. 82-90
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    小児の中枢神経疾患50例について髄液中のcreatine kinase BB (CK-BB) , neuron.specific enolase (NSE) をradioimmunoassey法で測定した.特に髄膜炎症例 (化膿性髄膜炎4例, 無菌性髄膜炎13例) では, 経時的変動を検討した.その結果, (1) CK-BB値は19例が異常値を呈した.特に化膿性髄膜炎 (4例中3例) , 無菌性髄膜炎 (13例中7例) , 中枢神経系Lupus (3例中3例) が高率であった.NSE値は22例が異常値を呈した.両者ともに髄膜炎群が高率に異常値を示した. (2) 化膿性髄膜炎におけるCK-BB値は, 急性期に有意の上昇を認め, 回復期には速やかに低下した.NSE値は, 急性期の上昇は軽度で, 同復期ではCK-BB値に比べて徐々に低下した. (3) 無菌性髄膜炎におけるCK-BB値は, 化膿性髄膜炎と同様に急性期に上昇を認めた症例が多く, 回復期には速やかに低下した.NSE値は, 多くの症例において急性期の上昇を認めず, 回復期に一過性の上昇を認めた.以上より, 髄液中CK-BBは, 髄膜炎の急性期に上昇し回復期には低下し, 病勢を反映しうると考えられた.またNSEとは異なった変動を示し, さらに検討を要すると考えられた.
  • 石代 欣一郎, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 真田 裕, 増尾 光樹, 吉利 彰洋, 渡辺 敢仁, 平瀬 吉成, 中山 旭
    1990 年50 巻1 号 p. 91-94
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去6年間に当科で経験した胃切除後胆石症10例を対象として検討を加え, 以下の結果を得た.1) 胃切除の原疾患は胃癌7例, 胃潰瘍3例であった.2) 胃癌例の切除術式は胃全摘2例, 胃亜全摘4例, 幽門側胃切除1例であり, 胃潰瘍例は幽門側胃切除が施行されていた.3) 胆石発見までの経過年数と原疾患の関係は胃癌例で最短1年, 最長9年で, 7例中5例が3年以内に胃切後胆石を確認され, 胃潰瘍例は3例中2例が27年, 30年と胃切後胆石発生まで長い傾向を示した.4) 胆石の存在部位は胆のう内は全例に, 総胆管6例, 肝内1例で, 総胆管 (肝内) 結石例は全例手術の対象となった.5) 胆石手術が施行された6例について結石成分を分析すると, ビリルビン系5例, コレステロール系1例であった.6) 胆石の発見手段は7例がUS, 2例がPTC, 1例がERCPにより発見された.
  • 小嶋 信博, 唐沢 洋一
    1990 年50 巻1 号 p. 95-99
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 男性.腹部膨満感, 下腹部痛を主訴として来院.右下腹部に圧痛を伴う表面平滑, 可動性の腫瘤を触知.腹部超音波検査では同部に3.5×8.0cmの嚢腫像が認められた.注腸では盲腸に表面平滑な隆起性病変を認め, 虫垂は造影されなかった.開腹すると, 虫垂は長径11cmに腫大し, うち5cmが盲腸内に陥入しており, 回盲部切除を行った.嚢腫の内容は淡黄色半透明のゼリー状で, 切除標本の病理組織的検索にて虫垂粘液嚢腫と診断された.本症発生には (1) 虫垂内腔の閉塞 (2) 虫垂粘膜の粘液産生 (3) 内腔が無菌的であることが必要とされる.治療は本症が腸重積, 拘扼性イレウス, 腹膜偽粘液腫の原因となるため, 発見後は早期に嚢腫全摘を行う.
  • 縄田 淳, 加古 結子, 新里 勇二, 古荘 純一, 長谷川 真
    1990 年50 巻1 号 p. 100-104
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は8歳男児.発熱, 腹痛, 嘔吐を主訴に第4病日に入院急性腹膜炎の診断で緊急開腹手術を施行したが, 虫垂をはじめ消化管に病変を認めなかった.腹水より化膿性連鎖球菌が検出されたため原発性腹膜炎を考え, 化学療法を施行した.その後も, 臨床症状, 検査所見の改善を認めず, 他疾患の合併を疑い, 繰り返し腹部エコーを施行した.第11病日膀胱周囲に異常エコー域, 第12病日MRIにて骨盤内腹膜外腔に炎症巣と思われる広範囲の高信号域を認め, 骨盤内蜂窩織炎と診断した.なお, 患児は強力な化学療法で全治した.骨盤内および後腹膜腔の炎症性疾患の診断には, 従来の診断法に加えMRIが有用であると考えられた.
  • ―膵頭部領域癌の臨床的鑑別診断を含めて―
    鈴木 博, 安井 昭, 西田 佳昭, 熊谷 一秀, 真田 裕, 増尾 光樹, 吉利 彰洋
    1990 年50 巻1 号 p. 105-110
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    当科で切除された下部胆管癌の1例を検討し膵頭部領域癌の問題点を考察し報告する.症例は71歳男性.黄疸を主訴として来院.術前ERCP, PTC, 腹部血管造影, 超音波検査および胆汁細胞診 (class IV) などにより下部胆管癌の診断を受くも切除標本の割面では腫瘍は膵組織を圧排性に浸潤し膵癌か下部胆管癌の鑑別は困難であった.病理組織学的検索では, 癌の中心部は胆管側へ偏り胆管の内腔へ乳頭状発育を示し胆管壁の一部に上皮内癌も認められたことなどにより胆管原発と判断された.本症例は胆道癌取扱い規約によるとStage IVとされるが, 仮に膵癌取扱い規約に準ずるとStage IIとなり, 原発不明な膵頭部領域癌においては大きな問題を残すと思われた.
  • 岡 壽士, 石田 康男, 浅川 清人, 金城 喜哉, 金 潤吉, 小嶋 信博, 楠本 盛一, 宮山 信三, 鈴木 快輔, 荒木 日出之助
    1990 年50 巻1 号 p. 111-114
    発行日: 1990/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    患者は排尿障害と下腹部異和感を主訴とする72歳の女性で, 排尿中に腔から鶏卵大の脱出があり, 精査をすすめられ当院婦人科を受診した.右下腹部には表は平滑, 辺縁整, 弾性硬で若干の可動性を有する腫瘤が触知された.超音波およびCTでは右下腹部に9×6cmの球状で内部は比較的均一な嚢胞性腫瘤が認められた.卵巣嚢腫の術前診断で開腹したところ, 腫瘤は虫垂の嚢腫で虫垂の根部は明瞭に認められたが, その約1cm末梢部から先端部は灰白色の嚢腫状の腫瘤を形成しており, 虫垂切除術を施行した.病理診断はMucous adenocarcinomaであった.術後約1年半を経過したが、再発の兆候は認められない.
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