昭和医学会雑誌
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洞機能不全症候群の臨床病理学的検討
―連続切片標本による組織学的研究―
廣本 浄子井上 紳
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1990 年 50 巻 3 号 p. 293-298

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抄録

Sick sinus syndrome (以下SSS) の洞結節病変については諸説があり, 心房病変を重視すべきとの意見もある.Rubenstein分類が一般的に用いられているが, この3群に関し臨床病理学的検討は未だ十分なされていない.今回われわれは, SSSの剖検心を用いLev法による連続切片標本を作製し観察, 心電図によるRubenstein分類と比較検討した. (対象および方法) 症例は35例 (Rubenstein I型1例, II型6例, III型21例, 徐脈性心房細動7例) .男19例, 女16例.年齢は42-86歳II型の1例, III型の11例にAdams-Stokes発作があった.電気生理学的検査の施行されたものは10例, 体内式ペースメーカーの植え込み例は15例であった.ホルマリン固定後の心臓をLev法で切り出し, 刺激伝導系連続切片を作製し観察した. (結果) 平均心重量476g.大半に拡張性心肥大がみられ, さらに右心房の拡張が半数に認められた。刺激伝導系各部は洞結節の線維化12例, 炎症細胞浸潤9例, 脂肪浸潤4例.房室結節・His束は炎症細胞浸潤2例, 脂肪浸潤7例, 線維化3例.左脚・右脚の線維化8例.Rubenstein I型は1例であったが, 心房筋に多発性筋炎による変性所見が見られた.II型6例では心アミロイドーシス2例, 肺性心, 制癌剤による心筋障害で変性・線維化がみられた.それに対しIII型21例は, 15例に心膜心筋炎およびその治癒後の所見がみられ, 心外膜肥厚, 心外膜下および心房中隔のリンパ球浸潤, 限界稜・洞房接合部の線維化を認めた.徐脈性心房細動7例では4例に心外膜炎が認められた. (考察) 洞結節は心外膜直下に位置し, 刺激伝導系の中では, 最も心外膜炎の影響を受けやすいところである.Rubenstein II型では変性像が6例中3例にみられた.Rubenstein III型の組織所見の主体をなすのは慢性の心外膜炎であると考えられた.SSSでは洞結節およびその周囲の線維化が認められ, その成因として慢性の心膜心筋炎の存在が高率に示された.

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