昭和医学会雑誌
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アルコール性脂肪肝の禁酒後の経時的病理組織学的変化について
―画像解析による肝細胞内脂肪の定量的解析―
飯田 善樹九島 巳樹塩川 章太田 秀一
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1990 年 50 巻 3 号 p. 285-292

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抄録

飲酒による脂肪肝は禁酒により改善すると考えられている.今回, アルコール性脂肪肝の禁酒後経時的肝生検材料を用いて全自動画像解析装置により, 脂肪滴の沈着面積, 大きさを肝小葉内の領域ごとに測定し, 分布様式や改善率を検討した.検索した症例はHBs抗原陰性の常習飲酒家で, 初回の肝生検にてアルコール性脂肪肝と診断され, その後禁酒持続期間に追跡肝生検を施行し得た10症例で, 28歳から78歳 (平均51.1歳) , 全例男性であった.5例に肥満, 2例に糖尿病を合併していた.初回生検時の肝実質に対する脂肪沈着面積は0.92%から18.33%まで平均6.96%であった.小葉内での脂肪沈着の分布様式は, 中心帯 (平均4.32%) に最も強く, 次いで中間帯 (2.18%) , 周辺帯 (0.46%) の順であった.脂肪滴の大きさでは小脂肪滴 (2μ2未満) は平均0.72%, 中脂肪滴 (2μ2以上400μ2未満) 4.61%, 大脂肪滴 (400μ2以上) 1.63%であった.10例中2例では脂肪沈着が増加したが, 8例は減少し, 禁酒後2から3カ月以内にほぼ消失した.初回の脂肪沈着面積と積算飲酒量には相関傾向がみられた.改善群では禁酒2, 3カ月後に平均して初回の8.73%に減少し, 肥満例と糖尿病例を除いた症例では4.17%に減少していたが, 肥満例では4.56%, 糖尿病合併例では22.01%であった.糖尿病合併症ではとくに小脂肪滴の改善率が悪い傾向にあった.光顕的目測による脂肪沈着面積の判定は画像解析装置の測定結果よりも多い傾向がみられた.

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