昭和医学会雑誌
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小形条虫虫卵抽出抗原のマウス腸間膜リンパ節細胞の増殖に及ぼす影響
村松 邦彦
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1990 年 50 巻 6 号 p. 614-621

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抄録

宿主マウスの小形条虫に対する感染阻止機構を調べる.一環として, 虫卵抽出可溶性粗抗原が感染マウスから採取した感作細胞に及ぼす影響を調べた.BALB/c系雄マウス1匹当り1000個の小形条虫虫卵を経口投与し, 10日目の感作腸間膜リンパ節細胞 (感作MLNC) を採取した.虫卵抽出可溶性粗抗原の存在下またはこの粗抗原をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分画後ニトロセルロース膜に転写・固相化した抗原分画存在下で, 採取した感作MLNCを培養, tritiated thymidine (3HTdR) の取り込みを調べ, 次の結果を得た.1) 虫卵抽出可溶性粗抗原存在下に5×105個の感作MLNCをin vitroで96時間培養したところ, 3HTdRの取り込みは対照の未感作MLNCのそれに比べて著しい増加を示した.2) 感作MLNCを抗Thy-1.2モノクローナル抗体, あるいは抗L3T4モノクローナル抗体で処理した後, 虫卵抽出粗抗原の存在下で96時間培養したときの3HTdRの取り込みは著しく減少し, 粗抗原無添加で抗体無処理感作MLNC培養の場合の値に近似していた.3) 虫卵抽出可溶性粗抗原を固相化したニトロセルロース膜の存在下で感作ML-NCをin vitroで96時間培養したところ, 固相化に用いた粗抗原量が2μgと極めて少量の場合でも3HTdRの取り込みは未感作MLNCの場合に比べて著明に増加した.4) 虫卵抽出可溶性粗抗原をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (ゲル濃度7.5%) により分画, 抗原分画を電気的に転写・固相化したニトロセルロース膜を5mmX5mm角に連続的に切断, これらの転写膜切片存在下で感作MLNCを96時間培養, 3HTdRの取り込みを調べたところ, 分子量200000~250000に相当する抗原分画固相化膜存在下で非常に強い取り込みの増加が観察された.

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