昭和医学会雑誌
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弓状核後部のニューロン活動から検した非経穴部刺激による鎮痛と下垂体との関係
趙 維華郭 試瑜武重 千冬
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1990 年 50 巻 6 号 p. 622-628

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抄録

鎮痛抑制系破壊後, 非経穴部を刺激して出現する鎮痛 (NAA) は下垂体の除去で出現しなくなるが, 下垂体がNAAの発現にどのように関与するかを検索した.痛覚閾はラットの尾逃避反応によった.弓状核後部 (P-HARN) の単一ニューロン活動は, ガラス微小電極を用いて細胞外から記録した.腹腔内に投与したACTHによって用量依存的に鎮痛が出現した (ED50=0.25mg/kg) .低濃度では痛覚過敏が現れた.鎮痛抑制系であるL-CMを局所破壊した後, あるいはこの系を抑制するCCKの拮抗剤のproglumideの投与後, 非経穴部の刺激によって, P-HARNのニューロン放電頻度の増大が現れた.またこのニューロンは静注したACTH (0.25mg/kg) によっても放電頻度を増大した.このニューロン活動はACTHの拮抗剤であるデキサメサゾンの静注で拮抗された.非経穴部刺激あるいは静注したACTHによって活動するニューロンはpicospritzerを用いて超微量適用したACTH0.1mMで作用時間900msecでは全く反応を示さなかったが, ドーパミンで放電頻度の増大が現れた.下垂体除去後は非経穴部刺激による鎮痛もACTHによる鎮痛もともに出現しなくなったが, 両者の同時作用で鎮痛が出現した.また非経穴部刺激あるいは静注したACTHによるニューロン活動の増大も下垂体の除去で出現しなくなったが, 非経穴部刺激下でACTHを静注すると再び出現する様になった.以上の結果から, NAAの求心路の最終部と下行性痛覚抑制系の起始部のP-HARNとの間にはドーパミンシナプス伝達があり, これは非経穴部の刺激で下垂体から遊離されるACTHがシナプス前性に働いて可能となると考えられた.

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