抄録
生体における骨格筋発達の諸相を明らかにする一環としてErdheim10高 (下腹部高) におけるCT写真について, 同高における筋の断面積を計測, 相互に比較するとともに個体差の検討を行った.研究対象は30歳代から70歳代にわたる健康な成人99名 (男: 50, 女: 49) で, 30歳代から70歳代までの5段階に区分するとともに, ローレル指数によってA, C, D3体型に区分した.観察した筋は脊柱起立筋, 腸骨筋, 大腰筋, 大殿筋, 中殿筋, 小殿筋, 腹直筋, 内腹斜筋, 腹横筋の9筋で, それぞれについてCT写真をトレースして断面積を計測, 性別, 年齢別, 体型別に比較検討し, 機能的な変化を考察した.結果: 1.各筋断面積を比較すると, 中殿筋が筋総断面積の33%を占め最も大, 大殿筋が約23%でこれに次ぎ, 腸骨筋と大殿筋が各10%前後, 脊柱起立筋, 小殿筋, 腹直筋が各5%前後, 内腹斜筋と腹横筋は各3%前後であった.2.性別的には, 一般に男性が女性よりも大であったが, 脊柱起立筋, 腸骨筋および腹直筋では特に著明であった.また, 女性では男性におけるよりも相対的に大殿筋が大となる傾向が認められた.3.年齢的には, 総筋断面積は男女とも30歳代が最も大, 70歳代が最も小で加齢減少の傾向が認められた.各筋については, 腸骨筋 (男性) , 大腰筋, 殿筋群および腹直筋において加齢減少の傾向が認められた.4.体型別には, 男女とも腸骨筋と中殿筋と小殿筋はC体型が, 腹壁筋群と脊柱起立筋はD体型がそれぞれ最も大で, 大殿筋は男性ではC体型で, 女性ではD体型で最も大であった.すなわち, 体幹筋と下肢帯筋では体型により発達要因が相違することが考えられた.