昭和医学会雑誌
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51 巻, 3 号
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  • 菊嶋 修示, 小林 洋一, 蔵野 康造, 矢澤 卓, 馬場 隆男, 向井 英之
    1991 年 51 巻 3 号 p. 249-260
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Adenosine三リン酸 (ATP) は上室性頻拍 (PSVT) の停止薬として用いられるが心停止, 灼熱感などの副作用が多い.ATPの刺激伝導系への作用はATP自身とadenosineに基づき, 副作用もATP自身とadenosineに基づくと思われる.ATP使用に際し, dipyridamole (DIP) (adenosineの細胞内吸収阻害薬) を併用しATP作用のadenosineに依る作用のみ増強させることで, ATPの副作用を軽減し得るか検討した.対象は32例, 内20例がPSVT例である. ATPの半減期は短いため, ATPは漸増注入 (0.025-0.5mg/kg) した.前処置薬としてDIP, aminophylline (adenosineの競合的阻害薬) , atropine, propranolol, isoproterenolを用いた.前研究として洞調律時にATPを注入し, 前後での洞周期と房室伝導時間を経時的に求め, ATP注入前後でcyclic-AMP (c-AMP) , epinephrine, norepinephrine血中濃度を測定した.ATPを洞調律時に注入すると, 一過性の陰性変時作用と陰性変伝導作用が出現, その後陽性変時作用がみられた.陰性変時作用と陰性変伝導作用はDIPで増強, aminophyllineで減弱, atropineでは不変であった.陽性変時作用はaminophyllineで増強された.陰性変時作用はisoproterenolで増強, propranololで抑制された.血中epinephrine, norepinephrine, c-AMPはほぼ全例でATP注入後上昇した.以上より, 陰性変時作用, 陰性変伝導作用は主にadenosineに基づき, 陽性変時作用は自覚症状などに基づく二次的作用と考えられた.少量のATP投与時には陰性変時作用が陰性変伝導作用より早期に出現したことより, ATPでのPSVT停止に際し, 少量のATPほど停止時に洞停止が短かかった.PSVT停止に関しては心房内回帰性頻拍以外のすべてのPSVTで停止が得られ, 停止量は房室ブロック量の約半量であった {ATP単独 (停止量vs房室ブロック量: 0.16±0.07mg/kgvs0.30±0.12mg/kg, p<0.01) , DIP=0.1mg/kg併用 (0.09±0.06mg/kgvs0.15±0.07mg/kg, p<0.05) } .停止量はDIP=0.1mg/kg併用でATP単独投与時の約半量となった (p<0.01) .停止時に房室ブロックを回避でき, ATP量が小であるDIP=0.1mg/kg併用が最適と考えられる.灼熱感, 嘔気などがATP単独投与時には全例にみられたが, DIP併用時には2例で消失, 他の全例で減弱した.ATP-DIP (0.1mg/kg) 併用療法は副作用を軽減し, 有効であると考えられた.
  • 毛利 友次, 石田 美由紀, 深道 修一, 渡辺 泰樹
    1991 年 51 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    生体における骨格筋発達の諸相を明らかにする一環としてErdheim10高 (下腹部高) におけるCT写真について, 同高における筋の断面積を計測, 相互に比較するとともに個体差の検討を行った.研究対象は30歳代から70歳代にわたる健康な成人99名 (男: 50, 女: 49) で, 30歳代から70歳代までの5段階に区分するとともに, ローレル指数によってA, C, D3体型に区分した.観察した筋は脊柱起立筋, 腸骨筋, 大腰筋, 大殿筋, 中殿筋, 小殿筋, 腹直筋, 内腹斜筋, 腹横筋の9筋で, それぞれについてCT写真をトレースして断面積を計測, 性別, 年齢別, 体型別に比較検討し, 機能的な変化を考察した.結果: 1.各筋断面積を比較すると, 中殿筋が筋総断面積の33%を占め最も大, 大殿筋が約23%でこれに次ぎ, 腸骨筋と大殿筋が各10%前後, 脊柱起立筋, 小殿筋, 腹直筋が各5%前後, 内腹斜筋と腹横筋は各3%前後であった.2.性別的には, 一般に男性が女性よりも大であったが, 脊柱起立筋, 腸骨筋および腹直筋では特に著明であった.また, 女性では男性におけるよりも相対的に大殿筋が大となる傾向が認められた.3.年齢的には, 総筋断面積は男女とも30歳代が最も大, 70歳代が最も小で加齢減少の傾向が認められた.各筋については, 腸骨筋 (男性) , 大腰筋, 殿筋群および腹直筋において加齢減少の傾向が認められた.4.体型別には, 男女とも腸骨筋と中殿筋と小殿筋はC体型が, 腹壁筋群と脊柱起立筋はD体型がそれぞれ最も大で, 大殿筋は男性ではC体型で, 女性ではD体型で最も大であった.すなわち, 体幹筋と下肢帯筋では体型により発達要因が相違することが考えられた.
  • 信澤 宏, 蜂須 玲子
    1991 年 51 巻 3 号 p. 268-273
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    1.目的MH134肝癌細胞に対するC3Hマウス免疫脾細胞の抗腫瘍活性 (腫瘍細胞増殖抑制効果) およびその放射線感受性をin vivoで調べ, 放射線が免疫脾細胞の腫瘍特異的遅延型過敏症 (DTH) 反応惹起性に及ぼす効果と比較検討した.2.方法 (1) 足礁反応免疫脾細胞と腫瘍細胞をE: T比10: 1で混合し, マウス足踪皮内に接種し, 接種前と24時間後の足蹠の腫脹を測定した.測定値の差 (footpad increment) をDTH反応の反応値とした. (2) チェンバー法免疫もしくは正常脾細胞と腫瘍細胞をE: T比1000: 1で混合しチェンバーに入れin vivoで培養した.3日後, 発育した腫瘍細胞数を測定した.足蹠反応, チェンバー法ともに, 脾細胞にはあらかじめ種々の線量の放射線を照射した.3.結果マウス足蹄反応を利用したDTH反応は, 12~24Gyの線量の範囲で線量に依存して低下した.20Gy照射した免疫脾細胞に, 正常脾細胞の付着性分画を加えた場合にはDTH反応は回復した.しかし, 非付着性分画を加えてもDTH反応の回復は認められなかった.免疫脾細胞の抗腫瘍活性は, 2.5~20Gyで消失した.正常脾細胞の抗腫瘍活性は, 2.5~10Gyで消失した.免疫脾細胞には正常脾細胞より強い抗腫瘍活性が認められた.4.考察・結論腫瘍特異的抗腫瘍活性は, 免疫脾細胞と正常脾細胞での抗腫瘍活性の差として評価できる.そしてその活性は, 10~20Gyで消失した.免疫能の点では本実験系で発現する腫瘍特異的免疫はDTH反応に依存すると考えられ, その放射線感受性は12~24Gyであると考えられた.本実験系で腫瘍特異的な腫瘍増殖抑制効果を示したのはDTH反応であり, DTH反応が10~20Gyで放射線感受性を示したと考えられた.
  • 宮下 芳夫, 赤松 達也, 小松崎 一則, 秋山 敏夫, 河村 栄一, 齎藤 裕, 矢内原 巧
    1991 年 51 巻 3 号 p. 274-280
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Cortisol (F) の分泌に日内変動があることはよく知られているが, 妊娠中に増加するestrogenの前駆物質であるdehydroepiandrosterone (DHA) -sulfate (S) およびpregnenolone-sulfate (P5-S) などの副腎性ステロイドの日内変動については明らかでないため, 正常妊娠初期, 中期, 末期の母体末梢血中のこれらのステロイドについて日内変動を検討した.対象は, 8~41週の正常妊婦9例で, 9時より3時間ごとの8回, 留置カテより採血し, P5-S, DHA, DHA-S, Fの変動を, Gas chromatography-Mass spectrometry (GC-MS) 法にて測定した.なお, 副腎性ステロイドのACTHの反応性を見るためにACTH負荷テストを行なった.妊娠中の一各ステロイドの日内変動は, DHA-Sを除き, 振幅は異なるが妊娠週数にかかわらず一定の傾向が認められた.FとDHAは6時に一致したピークがあり15時~18時に最低になった.DHA-Sは, 夜間低値であった以外は一定の傾向は見られなかった.P5-Sは9時にピークがあり21時~0時に最低となった.F値はDHA値との間に有意な相関が見られたが, P5-S値, DHA-S値とは相関が見られなかった.次に正常妊婦2例 (12週, 30週) に末梢よりACTH (コートロシン (R) ) 0.25mgを投与した際の各ステロイドの反応性を検討したところ, ACTH投与により, DHAはFと共に速やかに上昇したが, P5-Sは軽度上昇, DHA-Sには変動は少なかった.以上より1) DHA-Sを除く測定した副腎性ステロイドすべてに日内変動が認められたがステロイドによってその変動は異なった.2) DHAとFはその日内変動に有意な相関を認め, かつ, ACTH投与による反応性が一致したことから, 両者は副腎より同一の産生機序で分泌されていることが推察された.3) DHA-S, P5-Sの日内変動パターンは, Fと異なり, またACTHによる反応性に差異が見られたことから, 副腎からの分泌様式はF, DHAのそれとは異なることが示唆された.
  • 高宮 有介
    1991 年 51 巻 3 号 p. 281-288
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    当院の実状に合い, 医師・看護婦が使用しやすい癌性疼痛対策マニュァルを作成し, 臨床に応用した.対象は当院入院中の癌性疼痛患者で1989年4月より1990年3月までの1年間にペインクリニックに依頼のあった87名である.マニュアルは, WHOが1986年に発表した“CANCER PA-IN RELIEF”の除痛階段をモデルとしたが, その違いは, (1) ステップ2のコデインの代わりにブプレノルフィンを使用した. (2) ステップ2, 3では, 経口不能な患者や急速にコントロールが必要な激痛を有する患者に対して, 積極的に持続皮下注入法を使用した. (3) 経口投与は4回/日とした. (4) ステップ1より神経ブロック療法, 放射線療法の併用を考慮した.以上の4点である.除痛の評価は, 患者申告制とし, 0~10点の11段階評価で, 0点は全く無痛, 10点は最高に痛いとした.点数の合計を測定回数で除し, 疼痛点の平均点より有効度を検討した.鎮痛薬・投与経路は各症例で多様に変化したが, ステップ1では4例, ステップ2のブプレノルフィンでは34例がペインコントロールできた.有効限界に達しモルヒネに移行した症例は17例であった.ステップ3のモルヒネでコントロールできたのは49例であった.0-0.9点を著効, 1.0-2.9点を有効, 3.0-4.9点をやや有効, 5.0点以上を無効とすると, 著効76例, 有効10例, やや有効1例, 無効0例であった.ブプレノルフィンは, 長所として麻薬指定を受けていないので病棟管理が簡便であること, 便秘が軽度であること, 短所としては有効限界が存在すること, 副作用として嘔気の出現頻度が高いことがあげられる.持続皮下注入法を積極的に使用したが, 簡便かつ調節性に富んでおり, また感染の危険性も低くターミナル期の患者に適している.ほぼ全症例に本マニュアルの有用性は認められたとはいえ, モルヒネ大量投与にても11例に痛みが0とはならない症例を経験した.これらは, 神経直接浸潤例6例と胸腰椎転移の圧迫骨折による体動時痛例5例であったが, 神経ブロック療法または放射線療法を併用し, 疼痛の軽快は可能であった.疼痛を除去するには, まず患者との信頼関係をつくり, また, 身体のみならず, 患者のおかれた精神的, 社会的, 家庭的状況などを考慮して治療にあたることも重要である.
  • 高山 秀明, 新川 淳一, 川田 泰司, 尾町 秀樹, 眞 重雄, 八田 善夫
    1991 年 51 巻 3 号 p. 289-295
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    エチオニン単回投与による膵障害をラットを用いて作製し, 障害後の再生現象を組織学的・生化学的に検討した.エチオニン膵障害の程度はエチオニンの投与量に応じて強くなり, 急性膵炎を作製するのに必要なエチオニン単回投与量は40mg/100g body weightであった.障害程度が強いほどmitotic index, DNA合成能, labeling indexのピーク値は高く, 障害程度に応じた再生現象を確認できた.膵炎発症後のDNA合成能は5-7日目にピークを認める一峰性の変化を示し, autoradiogramによる検討では, 腺房細胞が主体をなし, そのlabeling indexも高値を示した.膵障害発症後の再生現象が腺房細胞と非腺房細胞の総和として観察され, 障害程度が軽度なほど腺房細胞の再生は早期に開始された.
  • ―栄養管理法の違いによる相違―
    伊東 司, 嘉悦 勉, 河村 正敏, 新井 一成, 高木 康
    1991 年 51 巻 3 号 p. 296-302
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    開腹手術を施行された胃癌患者33例を対象とし, これら患者を栄養管理上から経口栄養群と中心静脈栄養群とに分類して, それらの血清脂質成分を経時的に測定した.血清コレステロールは経口栄養群では術前206.7±31.9mg/dlが術後3日目には135.9±26.1mg/dlと最低値となった後に漸増したが, 術後14日目でも152.7±24.1mg/dlと術前値の73.8%に回復しただけであった.一方, 中心静脈栄養群では術前値は155.0±32.0mg/dlで, 経口栄養群と比較して低値であり, 術後1日目には106.7±24.5mg/dlと術前値の69%の最低値となった後, 経口栄養群と同様上昇したがその回復は著明であり, 14日目には153.5±29.0mg/dlと術前値に復した.血清脂質では遊離コレステロールとリン脂質がこの総コレステロールとほぼ同様な変動を示した.また, 血清HDL-コレステロールは経口栄養群では, 術前に47.2±10.3mg/dlが術後徐々に低下し, 7日目に32.3±12.1mg/dlと最低値となった後, 回復傾向が認められず術後14日目でも38.3±11.9mg/dlと術前値の81.1%に回復しただけであった.これに対して, 中心静脈栄養群では術前に35.6±11.0mg/dlが術後漸減するが, 最低の5日目でも30.2±7.6mg/dlと経口栄養群と比較して低下率は小さく, しかも術後140目には術前値の93.5%に復した.HDLの構成アポ蛋白であるアポA-Iは, 経口栄養群では, 術後5日目に84.8±23.1mg/dl (術前値の70.8%) と著明に低下し, 術後140でも77.7%に回復しただけであった.一方, 中心静脈栄養群では5日目での最低値も77.1±18.5mg/dl (81.0%) であり, 14日目には90.8%にまで回復した.リポ蛋白は経口栄養群, 中心静脈栄養群ともに, IDLが術後経過とともに出現・増加した.すなわち, 術前, 経口栄養群では15例中2例で分画比が19.6±3.6%であったものが経時的に増加し, 7日目には15例中10例となり, 分画比は13.9±5.7%であった.中心静脈栄養群では術前にIDLが出現する症例も多く, 18例中4例, 分画比16.6±7.8%が7日Rには18例中6例となり分画比は14.6±4.0%であった.
  • 梅沢 卓也, 浅沼 勝美
    1991 年 51 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回1985~1989年度の5年間に及ぶ松戸市立病院における71例の新生児剖検例で上気道の病理組織学的検索を行い, 壊死性気管気管支炎 (NTB) の検討をした.組織標本の作成は各症例とも気管の縦断面と気管分岐部, 左右主気管支における横断面で切り出し, 通常の病理標本切片を作成後ヘマトキシリンーエオジン染色を施した.病理学的検索としてNTBの組織学的定義をMetlayらのものにならいGrade1~3まで分類し, 各症例の上部, 中部, 下部の気管と気管分岐部, 主気管支の合計5つの領域においてNTBの有無を検索し, 連続して3部位以上にあるもの, または気管分岐部と主気管支の両者にあるものをNTBとした.そして各症例の最も高いNTBのGradeをその症例のGradeとした.こうして分類したNTB群と非NTB群, さらにNTB群の各Grade間において臨床的背景因子として換気日数, 在胎週数, 出生体重, アプガースコア, 死亡日齢, 平均気道内圧 (MAP) および主要死亡原因, 主要肺病変について比較, 検討をした.また組織変化として再生性変化と炎症性変化をおのおの (1) ~ (3) まで3段階のScoreに規定し同じく比較, 検討した.結果として全71例中47例 (66%) にNTBが認められこれらは機械式人工換気 (CMV) を受けた症例であった.Grade別ではGrade1が18例 (38%) , Grade2が15例 (32%) , Grade3が14例 (30%) であった.またNTB群中7例, 非NTB群中2例の高頻度振動換気 (HFO) 併用例が含まれた.解剖学的部位では気管分岐部, 主気管支の末梢に有意にNTBが多く, 臨床的背景因子ではNTB群が非NTB群に比べ有意にMAPが高値で非NTB群より挿管期間が長いことが示された.組織変化では炎症変化Scoreに関して非NTB群がNTB群に比べ有意に高値で, NTB群のなかではgradeの高い群ほどやはり高値を示した.今回の検索でNTBの新生児人工換気例中にしめる頻度は66%を占め, 統計的にはMAPがNTB群に有意に高値で, 炎症変化Scoreでは非NTB群が高値であったことより, NTBの発症には気道組織の循環血流量の影響をうけており, 感染因子はNTBのgradeの高い重症例への進行に関与する可能性が考えられた.
  • 西村 有希, 小林 真一, 藏當 辰彦, 内田 英二, 安原 一, 小口 勝司, 五味 邦英, 山元 俊憲, 黒岩 幸雄
    1991 年 51 巻 3 号 p. 310-318
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    現在, 我が国においては中毒情報センターが筑波, 大阪に設立され, 「中毒110番」として業務が開始されている.しかし, これらの「中毒110番」は中毒情報の提供にとどまり, 中毒医療システムとしての原因物質の同定からそれに対する対処 (治療) までが速やかに実施されているとは言い難い.そこで, 昭和大学の特色を生かし, 本学に中毒医療システムを確立するため, 今回, 医学部の第一, 第二薬理学教室, 臨床病理学教室, 薬学部の薬理学教室, 毒物学教室が共同し, 臨床での中毒の現状を把握する目的で本院及び付属病院の臨床各科 (計49科) に対し, アンケート調査を実施した.アンケートを郵送したところ回収率は57.1% (28科) であり, 次のような結果が得られた.薬物による急性中毒, 慢性中毒の経験は各々年間約81件, 9件であり, 患者は「成人」が多く, 中毒の動機・原因は「薬物療法」, 「自殺」が多かった.原因薬物の推定は「問診」や「臨床症状や所見より」が約80%を占め, 「文献検索や専門家に相談」も9.4%あった, また, 原因薬物の確認は「臨床病理」, 「製薬会社等の研究所」, 「薬学部毒物学教室」で行なわれていた.原因薬物を確認しなかった約半数でも, もし中毒医療システムがあり, 生体サンプルを十分採取していれば原因薬物の確認ができたとの回答であった.治療方針の決定は「独自の経験から」が43.5%と多く, 「文献検索」, 「専門家に相談」が約半数を占めていた.一方, 毒物による中毒では, 急性中毒, 慢性中毒の経験は各々年間約20件, 7.5件であり, 対象の患者, 中毒の動機・原因, 原因毒物の推定, 確認及び原因毒物を確認しなかった理由は薬物中毒の場合とほぼ同様であった.治療方針の決定は「文献検索」, 「専門家に相談」が各々36.4%と薬物中毒の場合より多く, 「独自の経験から」は22.7%と, 薬物中毒に比し, 中毒の治療にはより専門的な知識, 情報を医療現場では必要としていることが示された.このような現状において, 中毒医療システムの確立や教育の必要性は全科で「必要である」 (100%) と回答している.即ち, 昭和大学の特徴を生かし, 個々の機能をシステム化し, 中毒医療に貢献するためのシステムを確立し, さらにこの分野の教育を充実する必要性が今同のアンケート調査により示された.
  • 伊地 佐枝子, 橘 礼子, 毛利 祐三, 島田 千里, 安本 和正, 細山田 明義
    1991 年 51 巻 3 号 p. 319-323
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は21歳女性.PDAの診断のもとに根治術が施行され, 術後左肺の膨らみが悪化した.BFSにより気管分岐部より約1.5cmの部位から3cmにわたって左気管支の狭窄が認められた.狭窄は著明に拡大した右肺動脈により発生したと思われた.左肺の膨らみが改善した第3病日に抜管したところ, 第4病日に左肺無気肺を呈したので, BFSによる吸引・送気, 理学療法等を行った.左右肺独立換気をも検討したが, 以後は順調に経過し, 第8病日には一般病棟へ転出した.上記の症例の紹介と, 管理上の問題点についての考察を加えた.
  • 高木 啓, 遠藤 繁, 金子 教宏, 山田 峰彦, 大塚 英彦, 清水 晋, 田中 一正, 中神 和清, 鈴木 一, 野口 英世, 飯田 善 ...
    1991 年 51 巻 3 号 p. 324-327
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 咳嗽, 発熱, 体重減少を主訴とし, 胸部X線写真にて両側びまん性銭形陰影にて発見された.喀痰細胞診はClass V (扁平上皮癌) であり, 当初転移性肺腫瘍を疑ったが, 種々の検索にもかかわらず原発巣を発見し得なかった為, 原発性肺扁平上皮癌と診断した.剖検にて膵臓, 腎臓, 両肺に腺扁平上皮癌を認め, 膵臓原発腺扁平上皮癌の肺転移例と判明した稀な症例であった.
  • 竹村 博, 安本 和正, 細山田 明義
    1991 年 51 巻 3 号 p. 328-330
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    パルスオキシメータは非侵襲的に連続して酸素化能をモニタできるため, その普及は著しい.今回米国NONIN MEDICAL社製の3種類のパルスオキシメータNONIN8700, NONIN8500, 更にNONIN8604D-LMの精度を, すでに諸家によりその精度について評価を得ているOhmeda社製のBiox3700と比較検討した.呼吸器疾患を有する患者2名, 正常な心肺機能を有する予定手術患者5名, 健康成人6名を対象に, 両社のパルスオキシメータのプローべを同側の手指に装着し, 呼吸器患者では同一日に複数の測定を行い, 手術患者では麻酔下における呼吸抑制時に, 健康成人では閉鎖回路下に呼吸させ, その際にパルスオキシメータにより得た酸素飽和濃度の値を比較した.結果は, NONIN8500とNONIN8604D-LMの値はBiox3700の値とほぼ一致したが, NONIN8700の値はそれらの移動平均の相違からBiox3700の値より若干高い傾向を示した.
  • 南沢 佐代子, 岩永 昌彦, 梅田 知幸, 渡辺 公博, 舩冨 等, 八田 善夫, 浅野 和仁
    1991 年 51 巻 3 号 p. 331-335
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 女性.当院初診の15年前に沖繩旅行.6年前より消化器症状が出現, 3年前より咳嗽, 喀痰を繰り返すようになった.糞便中より糞線虫が検出され, 駆虫剤 (mebendazole, piruvinium pamoate) の投与により消化器症状は改善したが, 初診時にみられた右下肺野の少量の胸水および咳嗽, 喀痰は軽快しなかった.喀痰8週培養にて結核菌を検出し肺結核症の合併と診断した.さらに本症例は原発性甲状腺機能低下症を合併し, また抗HTLV-1抗体陽性であった.末梢血には異常リンパ球を認めなかったがATLVcarrierと考えられた.本症例において肺結核およびAT-LV持続感染は宿主免疫能の低下を介し, 糞線虫症発症に関与しているものと考えられた.
  • 西村 有希, 倉田 知光, 植田 孝子, 内田 英二, 小林 真一, 安原 一, 倉田 知光, 西村 有希, 内田 英二, 小林 真一, 安 ...
    1991 年 51 巻 3 号 p. 364-368
    発行日: 1991/06/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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