抄録
1.目的MH134肝癌細胞に対するC3Hマウス免疫脾細胞の抗腫瘍活性 (腫瘍細胞増殖抑制効果) およびその放射線感受性をin vivoで調べ, 放射線が免疫脾細胞の腫瘍特異的遅延型過敏症 (DTH) 反応惹起性に及ぼす効果と比較検討した.2.方法 (1) 足礁反応免疫脾細胞と腫瘍細胞をE: T比10: 1で混合し, マウス足踪皮内に接種し, 接種前と24時間後の足蹠の腫脹を測定した.測定値の差 (footpad increment) をDTH反応の反応値とした. (2) チェンバー法免疫もしくは正常脾細胞と腫瘍細胞をE: T比1000: 1で混合しチェンバーに入れin vivoで培養した.3日後, 発育した腫瘍細胞数を測定した.足蹠反応, チェンバー法ともに, 脾細胞にはあらかじめ種々の線量の放射線を照射した.3.結果マウス足蹄反応を利用したDTH反応は, 12~24Gyの線量の範囲で線量に依存して低下した.20Gy照射した免疫脾細胞に, 正常脾細胞の付着性分画を加えた場合にはDTH反応は回復した.しかし, 非付着性分画を加えてもDTH反応の回復は認められなかった.免疫脾細胞の抗腫瘍活性は, 2.5~20Gyで消失した.正常脾細胞の抗腫瘍活性は, 2.5~10Gyで消失した.免疫脾細胞には正常脾細胞より強い抗腫瘍活性が認められた.4.考察・結論腫瘍特異的抗腫瘍活性は, 免疫脾細胞と正常脾細胞での抗腫瘍活性の差として評価できる.そしてその活性は, 10~20Gyで消失した.免疫能の点では本実験系で発現する腫瘍特異的免疫はDTH反応に依存すると考えられ, その放射線感受性は12~24Gyであると考えられた.本実験系で腫瘍特異的な腫瘍増殖抑制効果を示したのはDTH反応であり, DTH反応が10~20Gyで放射線感受性を示したと考えられた.