昭和医学会雑誌
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小児期における血中微量成分の変動
三沢 正男高木 康
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1992 年 52 巻 4 号 p. 393-400

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抄録
小児は身体的成長が著しく, これに付随する体液中成分の変動も激しい.したがって, 成人で検討した生体内微量成分の基準値を当てはめることは適当でない.今回, 唇裂・口蓋裂, 癩痕など内科的疾患を伴わない小児症例1461例を対象として, 主な血中微量成分 (生化学24成分と血液5成分) の年齢, 性別基準値を検討した.加齢による変動は大きく4つのグループに分けることができた.1つは乳児期に高値であり, これが加齢と共に低下する群で, これに属する項目はAST, ALTを始めとする多くの酵素, カリウム, 無機リン, 白血球数, 血小板数などであった.もう1つの群は, 逆に乳児期に低値で加齢と共に増加する項目で, 総蛋白, BUN, クレアチニン, 赤血球数や酵素のなかではアミラーゼがこの群であった.また, 3つめの群は小児期, 成人期でほとんど変動のない項目であり, ナトリウム, クロールの電解質成分がこの群に属し, 4つめの小児期に特徴的な変動をきたしたものはアルカリ性ホスファターゼ (ALP) であった.ALPは乳児・1歳児期と小学童後期に2つのピークをもつ2相性変動を示し, アイソザイム分析によりこの変動が骨性ALPの変動によることが確認された.白.血球分類の変動も特徴的であり, 新生児・乳児・幼児前期ではリンパ球が優位であり, 幼児後期・小学童期では好中球とリンパ球とがほぼ同じ割り合いとなり, これ以後好中球優位となって成人値となる変動であった.
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