昭和医学会雑誌
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マクロアミラーゼに関する研究―結合アミラーゼアイソザイムと免疫グロブリンの検索を中心に―
馬場 正道高木 康五味 邦英
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1992 年 52 巻 4 号 p. 401-407

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抄録
体液中酵素の異常の1つに, 免疫グロブリンと結合して高分子化したマクロ酵素がある.アミラーゼにおけるマクロアミラーゼは, このマクロ酵素として最初に報告された酵素である.昭和大学病院臨床検査部でアミラーゼアイソザイム分析時に検出されたマクロアミラーゼ13例につき, 結合免疫グロブリンとアイソザイム, さらにS型アミラーゼ阻害抗体を用いた分析法に対する態度などについて検討した.電気泳動で異常分画を示した症例につき薄層ゲル濾過法を行い, マクロアミラーゼと同定できたのは13例であった.これら症例の血清アミラーゼ活性は742±4641U/1と高値であり, アミラーゼ・クレアチニンクリアランス比 (ACCR) は0.95±0.74%と低下し, 高分子となることにより尿中への排泄が低下したことが確認された.また, 臨床診断は肝疾患が6例と最多であり, 糖尿病, 膵疾患が3例と続いた.これらマクロアミラーゼは免疫混合法および免疫電気向流法により結合免疫グロブリンの検索を行った.結合免疫グロブリンはIgA (k) が4例, IgA (λ) が8例, IgG (k) が1例であり, 他のマクロ酵素と異なりIgAに特徴的な偏りが認められた.免疫グロブリンと結合するアイソザイムを再結合実験と酸性解離実験により検索したところ, 6例はS型とのみ, 6例はPとS型両方と, そしてP型のみとの結合は1例だけであった.S型アミラーゼが糖鎖を多く含むことと考え合わせ興味深い結果であった.また, S型アミラーゼと親和性のある12例にS型アミラーゼを加え, 高S型アミラーゼ阻害抗体で分析したところ, 3例でP型アミラーゼが30%以上の高値となった.この原因としては, S型アミラーゼが抗体と結合することにより高次構造に変化を生じたこと, 極めて近い部に両者のエピトープが存在することなどが考えられた.
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