昭和医学会雑誌
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食道・胃静脈瘤に対する胃上部血行遮断・胃壁縫縮術の検討
―組織血流量測定による実験的研究―
田村 清明新井 一成小池 正
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1993 年 53 巻 1 号 p. 75-83

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抄録
現在, 食道・胃静脈瘤に対する治療法の選択として直達手術では, 胃上部血行遮断・胃壁縫縮術を施行している.この術式の有効性を検討するために, 胃粘膜および漿膜血流量をレーザードップラー組織血流量計 (ALF 2100アドバンス社) を用いて術前・術後に測定し, 対比する実験を行った.実験は雄の成犬12頭を用い, 静脈麻酔下に胃上部血行遮断・胃壁縫縮術を施行し, 手術前・後に粘膜・漿膜血流量を, また術後2, 4, 8, 12週に粘膜血流量を胃壁縫縮部より口側として胃体上部で, 肛門側として体下部で測定した.また臨床例の検討は, 入院治療をした食道・胃静脈瘤症例82例を内視鏡的硬化療法群 (37例) , 食道離断術群 (33例) , 胃壁縫縮術群 (12例) の各治療群に分け, 平均年齢, 基礎疾患, 肝機能障害度, 入院日数, 内視鏡所見, 死亡症例について比較検討した.なお, 最近施行した本術式の臨床例1例で実験と同様の方法で血流量測定を施行した.成犬による実験では, 本術式施行により, 粘膜側, 漿膜側ともに縫縮部より口側の胃体上部血流量は, 術前の約3分の1と低下し, さらに術後12週まで粘膜血流量は術前の約2分の1と有意な低下を維持した.臨床例でも同様に, 胃体上部粘膜血流量は術後12週まで術前比30~50%と有意な低下を維持し続け, さらにその低下の程度は縫縮部より肛門側となる体下部よりも有意であった.臨床例の各治療群の比較では, 基礎疾患は肝硬変が主で各群間に差はなく, 本術式施行群は, 平均年齢では内視鏡的硬化療法施行群より若く, 平均入院日数は2倍を要したが, 食道離断術施行群と差はなかった.肝機能障害度と術後内視鏡所見は, 本術式施行群が他の2群より良好で, 死亡例は, 胃静脈瘤破裂にて術前状態不良なるも緊急手術を施行した1例のみであった.本手術は, 食道・胃静脈瘤の発症機序である遠肝性側副血行路, 局所流入動脈血流路が胃上部血行郭清により遮断され, さらに胃壁内を上行して食道静脈瘤へ向かう血流が, 体上部に全層・全周性の胃壁縫縮を行うことにより遮断され直達手術の意義を成すものである.今回の血流測定により, 本術式の血流遮断効果が確認され, さらに臨床例の検討から術式の有効性, 安全性, 普遍性が証明されたと考え, 手術適応のある待期および予防症例には, 有効な術式の一つであると考えられた.
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