昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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53 巻 , 1 号
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  • 高木 啓, 大塚 英彦, 清水 晋, 鈴木 一, 野口 英世, 金子 昌弘, 小野 良祐, 池田 茂人
    1993 年 53 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    肺癌症例705例について, 発見動機よりみた組織型, 発生部位, 病期, 手術率, 診断遅延等より, 肺癌検診の有用性を検討した.検診で発見された症例の割合は33.0% (233例/705例) であった.病期O・I期の症例は, 検診発見群で40.3%, 自覚症状発見群で9.3%であった.絶対的治癒手術率では, 検診発見群で46.8%, 自覚症状発見群で18.4%であった.肺癌検診は早期発見に有用と思われたが, 検診発見群では治療開始迄に平均37.9週間を要し, また全症例の52.9%に平均39週間の診断遅延を認めるなど, 検診の精度管理になお改善の余地が認められた.
  • 安部 康之, 井口 喬, 田玉 逸男, 大地 武, 出井 恒規
    1993 年 53 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    平成1年12月末において, 昭和大学病院精神科外来通院中の分裂病811例のうち, 5年以上観察し得た277例を, 入院未経験群76例, 経験群201例の2群に分け, 社会生活状況の実態について調査し, 以下の結果を得た. (1) 両群の精神症状, 社会生活技能, 社会適応状況, 家族状況については, 有意差はなかった. (2) 入院の有無に関わらず対象者全体でみると, 精神症状においては57.8%は良好群であり, 社会適応状況の良好なものも68.9%と軽症であることを示しており, 親族との同居に支えられているものが83.4%, 就業しているものは69%といずれも高率であった. (3) さらに, 発病年齢の高いこと, 結婚歴を有するものが多いこと, 入院群は短期入院であり, かつ経過の初期の入院が多いことなどが社会適応上有利に作用していると推定された. (4) 精神分裂病の軽症群の特徴として, 疾病の示す生物学的要因とともに環境的要因としての社会的背景も良好であることが反映していると考えられた.
  • 鈴木 良洋, 高橋 寛, 藤田 力也, 菅田 文夫
    1993 年 53 巻 1 号 p. 19-24
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    内視鏡, CTscan, 超音波等の諸検査にて器質的疾患が完全に否定されたにもかかわらず上腹部不定愁訴を慢性的に訴えるnon-ulcer dyspepsia (NUD) 患者に対して食道と胃の機能面より検討した.すなわち, アセトアミノフェン法による胃排出能の測定, 食道内の24時間pHモニター, 食道下部括約筋帯圧の測定を施行した.その結果, 胃排出能はNUDではアセトアミノフェン服用後の血中濃度はnormal volunteerと比較して有意に低下していた.一方, 24時間食道pHモニターリングにおいてはnormal volunteerではpHが4以下とならなかったがNUD患者ではpH4以下は89.75±99.3minであり自覚症状のうち『胸やけ』の発現と相関していた.また下部食道括約筋帯圧 (lower esophageal sphincter pressure: 以下LESP) はnormal volunteerに対してNUD患者では有意に低下していた.以上よりNUDは胃の排出能の低下とLESPの低下による食道胃の機能異常によって生じることが示唆された.
  • 阿部 和男, 与芝 真, 菅田 文夫
    1993 年 53 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    劇症肝炎 (Fulminant Hepatitis: FH) 16例, 肝硬変 (Liver Cirrhosis: LC) 12例の血清胆汁酸を測定し, 病態との関連を検討した.血清胆汁酸はHPLC法を用いて15分画を測定した.1) 15分画を合計して得られた血清総胆汁酸量 (TBA) はFHにおいてLCと比較して有意な上昇を認めた.2) 胆汁酸15分画のなかでは, ケノデオキシコール酸のグリシン抱合体 (GCDC) , およびコール酸グリシン抱合体 (GC) がFHにおいてLCよりも有意な上昇を認めたがその他の分画には有意差は見られなかった.3) またFHにおいてLCよりも一次胆汁酸/二次胆汁酸比が有意な上昇を認めたがグリシン体/タウリン体 (G/T) 比, コール酸 (C) /ケノデオキシコール酸 (CDC) 比, 抱合率には有意差は認めなかった.以上の結果は急激かつ広汎な肝細胞破壊により重篤な肝不全をきたすFHとそれが相対的により軽度であるLCとの重症度の差を反映するものと考えられ, 両群の病態の差を知るうえで有用と思われた.
  • 藤田 安幸, 藤田 力也, 平田 信人, 菅田 文夫
    1993 年 53 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    総胆管結石症に対する内視鏡的乳頭括約筋切開術 (Endoscopic sphincterotomy; EST) の有用性を明らかにする目的で, 主たる結石除去術がバスケットカテーテル法のみであった1985年までの前期と, 機械的砕石具や経口胆道鏡下での電気水圧衝撃波法, レーザー照射法による砕石処置, あるいはドレナージ処置が経乳頭的に可能となった1986年以降の後期に別けて, 截石成功率, 早期合併症および中長期的予後について臨床的検討を行った.対象は1975年11月から1985年までの前期465例, 1986年以降1992年5月までの後期202例, 計667例の総胆管結石症である.截石成功率は前期の92.5%から後期では95.5%に向上し, 全体では93.4%であった.合併症の発生頻度は前期6.9% (内要手術例1.7%) から後期には3.5% (同0.5%) と半減し, 全体では5.8% (同1.3%) であった.重篤な合併症による死亡率は前期0.6%, 後期0%, 計0.4%であった.予後に関してはEST施行後4~9年間中期的に追跡調査が可能であった110例中5例 (6.2%) に結石の再発が認められた.胆嚢炎は有胆嚢結石症26例中2例 (7.7%) に発生したが, 無石例では皆無であった.10年以上の長期間追跡調査が可能であった46例では結石再発が6例 (13.0%) に, 胆嚢炎が有胆嚢結石症の2例 (4.3%) に認められた.ESTは内視鏡および処置具の発展と技術の向上により, より安全で確実な截石術へと進歩した.さらに中長期的な追跡調査の結果から, 当初危惧されたほど結石再発率, 胆道感染症発生率は高くなく, ESTは総胆管結石症に対する極めて有用な治療手段であると考えられた.
  • 田島 博之, 足立 満, 木村 輝明, 河野 泰朗, 高橋 昭三
    1993 年 53 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Sulphidopeptide leukotriene C4とD4 (LTC4, LTD4) は強力な気管支収縮作用を有する.アレルギー性気管支喘息におけるロイコトリエンの役割を検討する目的で, ハウスダスト (HD) 皮内反応およびRAST陽性患者29名にHDによる抗原吸入誘発試験 (BPT) を実施し, 経時的にLTC4, LTD4の安定した尿中最終代謝産物であるLTE4を測定した.1) HDによるBPTで呼吸機能 (FEV1.0, PFR, V50, V25) の変化がみられなかった症例では, 12時間の尿中LTE4の変動はなかった.2) 即時型喘息反応 (IAR) のみを示した症例では, 吸入後3時間で尿中LTE4の有意な増加 (p<0.01) を認めた.3) 二相性喘息反応 (DAR) を認めた症例では, 吸入後3時間で尿中LTE4の有意な増加 (p<0.01) を認めたが, 3~12時間の問では有意な増加はなかった.4) IAR, DARを認めた症例において, 吸入後3時間の尿中LTE4の変化率と呼吸機能の最大変化率の間には相関はなかった.以上の結果よりLTE4の前駆物質であるLTC4, LTD4はアレルゲン吸入後のIARを引き起こす重要なmediatorであることが示唆された.
  • 野崎 忍
    1993 年 53 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    両側唇裂に対する2次修正として開発された鬼塚の一条痕化手術は, 両側唇裂患者の白唇部の創痕を1本にすると同時に, 鼻柱延長が行える画期的な手術法である.しかし上口唇の組織量が健常者より少ない両側唇裂患者で, 上口唇組織の一部を鼻柱の延長に用いることにより, 上口唇が緊張を持って縫合されるために肥厚性瘢痕の発生が懸念される.今回, 一条痕化手術後の瘢痕の病態を明らかにするために臨床的観察を行った結果, 口唇の裂型では完全唇裂が不完全唇裂より, 口蓋裂非合併例が口蓋裂合併例より肥厚性瘢痕の発生が多かった.初回一条痕化手術を施行した10例中6例に肥厚性瘢痕を認めた.また手術時年齢の高いほど, 肥厚性瘢痕の発生率は低くかった.以上のことより上口唇組織に余裕がある症例ほど一条痕化手術後に肥厚性瘢痕を生じにくいと結論できる.両側唇裂の2次修正としての一条痕化手術後の肥厚性瘢痕発生率は全体では27.8%であった.部位としては鼻孔底 (横) に多かった (25.7%) .しかし1986年以後年々発生率が低下し, 1990年には19.0%と著明に改善していた.その原因としては, 鼻翼基部の皮弁を鼻孔底に挿入するという術式の改良が最も考えられた.また小三角弁を右に作成した症例が左に作成した症例より肥厚性瘢痕の発生が少なかった.表在X線照射, トラニラスト投与による肥厚性瘢痕発生率に有意差は認められず, 症例の選択にも問題はあろうが, 一条痕化手術後の肥厚性瘢痕予防には否定的であった.性別, 手術既往は肥厚性瘢痕の発生に影響を与えなかった.
  • 出井 恒規, 井口 喬, 田玉 逸男, 大地 武, 安部 康之
    1993 年 53 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    単科の精神病院である昭和大学付属烏山病院 (精神病院群) と総合病院としての昭和大学病院精神科 (大学病院群) において, 5年以上観察し得た, 初診時までに治療経験のない通院分裂病患者について対比して調査した結果, 以下の点が明かとなった.1) 両群間には社会適応度に差はなく, 良好な社会適応を示しているものが全体のほぼ2/3を占めていた.しかし, 精神症状評価点でみると大学病院群の方が精神症状の残遺の程度が少なかった.2) 精神病院群は大学病院群よりも長期観察群が多く, 発病年齢が低く, 入院同数, 総入院期間および1回当たりの入院期間が多く, 入院歴のない患者が少なく, 発病から受診までの期間が長かった.3) 入院歴のあるものについては両群ともに経過の前半における入院が多く, 最終社会生活維持期間の平均は約10年であった.4) 初発時症状別では妄想のみの群が大学病院群に多かったが, 他の症状群区分には有意差はなかった.5) 家族状況には有意差はなく, 80%以上が家族と同居していた.6) 就業状況, 自給率などの自活力において有意差はなかったが, 精神病院群がやや劣っていた.7) 両施設受診まで未治療であった.長期観察をしえた通院分裂病における経過と予後は全体的には良好群で占められているが, これらは精神病院群を中心とする一群と, 大学病院群を中心とし, さらに精神病院群にも少なからず存在するいわゆる軽症型の一群に二分される可能性が示唆された.そしてこのような軽症型の一群が無視し得ない程度に存在していることは現在における分裂病の軽症化の現れの一端を示しているものと考えられた.
  • 武山 静夫
    1993 年 53 巻 1 号 p. 67-74
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    今回麻酔導入時にベクロニウムを0.07から0, 45mg・kg-1まで増量投与し, 作用発現時間, 気管内挿管状態および作用持続時間について検討した.対象は, ASA1-2度の予定手術患者163例を9群に分けてベクロニウム0.07~0.45mg・kg-1をそれぞれ投与した.麻酔前投薬は手術室入室30分前に硫酸アトロピン0.5mgとヒドロキシジン50mgを筋注した.麻酔の導入はチオペンタール3mg・kg-1を静注し, 患者の入眠後直ちにDatex社製のRelaxographを前腕の尺骨神経部に装着した.コントロール値を求めた後, 各投与量のベクロニウムを単回静注し, 50%笑気一酸素による用手人工呼吸を行った.20秒おきの4連刺激による誘発筋電図を記録し, ベクロニウム投与よりEMG振幅の最小値 (最大筋弛緩) までを作用発現時間とした.最大筋弛緩となった時点でチオペンタール4mg・kg-1を追加投与し気管内挿管を行い, その状態をFaheyらの4段階の挿管スコアにて評価した.その後, 50%笑気―酸素―1.3MAC程度のイソフルレンにて麻酔を維持し, 15%回復まで追跡し得た76例について作用持続時間を測定した.それぞれの投与量において年齢, 身長, 体重, 麻酔導入時の動脈血ガス分析結果に差はみられなかった.結果, 単回静注法では0.15mg・kg-1以上のベクロニウム投与で満足のいく気管内挿管状態が得られた.最大筋弛緩効果までの作用発現時間に関しては, 0.07mg・kg-1の288秒から0.2mg・kg-1の141秒まで用量依存性に短縮したが, 0.2~0.45mg・kg-1の問ではそれ以上の短縮が認められなかった.作用持続時間については0.07mg・kg-1の36.0分から0.3mg・kg-1の134.4分と用量依存性に延長する傾向がみられたが, それ以上では個体差が多く一定の傾向を示さなかった.以上, ベクロニウムを麻酔導入時に0.07から0.45mg・kg-1まで増量投与し, 作用発現時間, 気管内挿管状態, 作用持続時間について検討したところ, 気管内挿管には0.15~0.2mg・kg-1が適切であり, 0.3mg・kg-1以上のベクロニウムの投与は臨床的に効果的でないと思われた.ベクロニウムは安全性が高く, 臨床的に非常に有用であるが, 大量投与では個体差が大きくなるため, 筋弛緩モニターを装着した上での使用が望ましいと考える.
  • 田村 清明, 新井 一成, 小池 正
    1993 年 53 巻 1 号 p. 75-83
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    現在, 食道・胃静脈瘤に対する治療法の選択として直達手術では, 胃上部血行遮断・胃壁縫縮術を施行している.この術式の有効性を検討するために, 胃粘膜および漿膜血流量をレーザードップラー組織血流量計 (ALF 2100アドバンス社) を用いて術前・術後に測定し, 対比する実験を行った.実験は雄の成犬12頭を用い, 静脈麻酔下に胃上部血行遮断・胃壁縫縮術を施行し, 手術前・後に粘膜・漿膜血流量を, また術後2, 4, 8, 12週に粘膜血流量を胃壁縫縮部より口側として胃体上部で, 肛門側として体下部で測定した.また臨床例の検討は, 入院治療をした食道・胃静脈瘤症例82例を内視鏡的硬化療法群 (37例) , 食道離断術群 (33例) , 胃壁縫縮術群 (12例) の各治療群に分け, 平均年齢, 基礎疾患, 肝機能障害度, 入院日数, 内視鏡所見, 死亡症例について比較検討した.なお, 最近施行した本術式の臨床例1例で実験と同様の方法で血流量測定を施行した.成犬による実験では, 本術式施行により, 粘膜側, 漿膜側ともに縫縮部より口側の胃体上部血流量は, 術前の約3分の1と低下し, さらに術後12週まで粘膜血流量は術前の約2分の1と有意な低下を維持した.臨床例でも同様に, 胃体上部粘膜血流量は術後12週まで術前比30~50%と有意な低下を維持し続け, さらにその低下の程度は縫縮部より肛門側となる体下部よりも有意であった.臨床例の各治療群の比較では, 基礎疾患は肝硬変が主で各群間に差はなく, 本術式施行群は, 平均年齢では内視鏡的硬化療法施行群より若く, 平均入院日数は2倍を要したが, 食道離断術施行群と差はなかった.肝機能障害度と術後内視鏡所見は, 本術式施行群が他の2群より良好で, 死亡例は, 胃静脈瘤破裂にて術前状態不良なるも緊急手術を施行した1例のみであった.本手術は, 食道・胃静脈瘤の発症機序である遠肝性側副血行路, 局所流入動脈血流路が胃上部血行郭清により遮断され, さらに胃壁内を上行して食道静脈瘤へ向かう血流が, 体上部に全層・全周性の胃壁縫縮を行うことにより遮断され直達手術の意義を成すものである.今回の血流測定により, 本術式の血流遮断効果が確認され, さらに臨床例の検討から術式の有効性, 安全性, 普遍性が証明されたと考え, 手術適応のある待期および予防症例には, 有効な術式の一つであると考えられた.
  • 五味 明
    1993 年 53 巻 1 号 p. 84-91
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    胆汁うっ滞性肝障害発現時における脾臓の機能に関する研究は少ない.4週齢のWistar系雄性ラットの総胆管結紮による胆汁うっ滞性肝障害モデルを作成し, 脾摘による肝障害への影響及び肝臓の貪食能についても同時に検討した.脾摘群では, 軽微な肝細胞壊死, ならびに傷害された肝細胞の修復傾向が認められ, また非脾摘群では白脾髄の軽度萎縮を呈したことより, 急性肝障害時の脾摘が肝細胞障害を軽減する可能性が示唆された.結紮後6日目ラットの肝のKupffer細胞の貪食能を墨汁を用いて細胞内の墨汁滴数で検討した.総胆管結紮群で血清総ビリルビン値9mg/dl前後の閉塞性黄疸におけるKupffer細胞の貪食指数は偽手術群の1/10程度に低下していた.また総胆管結紮に脾摘を加えた群では, Kupffer細胞内の墨汁滴数は偽手術群とほぼ同じであるが, 貪食された墨汁滴の大きさは総胆管結紮群と比べて大きいものが観察され, 脾摘を行なうことによりKupffer細胞の貪食率が回復した.これは黄疸時の脾臓よりKupffer細胞の貪食能を抑制する因子が放出され, 脾摘によりその抑制因子から解放されたため貪食能が回復したと推測された.本実験より血清総ビリルビン値9mg/dl前後で, 肝腫大はあるが, 脾腫はない条件下における脾臓は, Kupffer細胞の貪食能を抑制していると推測された.従って, 臨床的には5歳以上で, 先天性胆道閉鎖症術後充分な減黄が行なわれない場合, 脾腫を認めなくても, この時点で脾摘を行なうと, Kupffer細胞の貪食能も回復し, 肝の線維化も抑制される可能性があり, 術後合併症である上行性感染や門脈圧亢進症の発症頻度を低下させることが期待できると思われた.
  • 北村 勉
    1993 年 53 巻 1 号 p. 92-102
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    不妊ないし外性器発育不全を主訴に来院した19例のKlinefelter症候群に対し, 臨床心理学的調査を行い, その結果について検討を加えた.その中の6例に対してtestosterone補充療法を施行し, その結果についても言及した.1) WAIS (Wechsler Adult Intelligence Scale) : 18例中7例 (38.9%) に軽度精神遅滞を認め, 残り11例 (61.1%) はaverage, dull normalの平均水準にあった.11項目にわたる下位検査の検定で, 言語性IQ【ls<】動作性IQが明白で言語領域, 殊に単語問題での低下が有意差をもって示された.すなわち知的水準の検討で質的な不均衡が本症候群で確かめられ, 認知の不安定性が明らかにされた.2) Y-G (矢田部・Guilford性格検査) , TPI (東大式人格目録) , Rorschach testによる人格検査で, 内的・外的統制は不均衡で収縮型を示し, 消極的で自発性に乏しく, 課題の解決様式そして日常的精神生活空間を極力狭小化させ自己の安定を計ろうとする姿勢が浮きぼりにされた.なお, Rorschach testで「反復」, 「無力」, 「当惑」, 「保続」のorganic signに通ずる反応が散見され, 頭部CT (大脳基底核石灰沈着2例) , 脳波所見 (徐波傾向, 境界2例, 著明異常7例) で異常所見が並存するという興味ある所見がみられた.心理検査を補填する上で行った詳細な問診と継時的面接で, 【ls<】大人しい【rs>】, 【ls<】人なつこい【rs>】, 【ls<】消極的【rs>】といった性格特性が再認できた.この所見についてはテスト内容で整合される.さらに, 多少とも爪かみや手指で手背をこすり, 幼児退行を示す行動が再々みいだされた.Testosterone療法の効果を継時的にみたところ, 病像は良性に反応し, この所見は性格と行動面の改善で明白であった.知能の構造的変化はKlinefelter症候群で特異的で, この心理テストでの確認をホルモンの定量投与とのかかわりで検討したいところである.前病性格と病変による性格の二つの問題について今回確答はできなかった.しかし, テストの導入でこの古くて新しい問題がこの疾患で再確認された.単一疾患をモデルにすることで性格のパターン化は可能であり, これは分裂病研究に通ずることを指摘した.精神科・泌尿器科のinterdisciplinaryの調査で, 症状について無知であった患者へのサービスは一層深められ, 不要な不安から患者を解放し, しかも病態の解明は一層容易となることが知らされた.
  • 井関 雅一, 新井田 修, 川口 哲也, 小池 正
    1993 年 53 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性.既往歴として50年前, 戦争中背部に爆弾の破片を受け, 以後X-Pにて, 腹腔内異物の診断を受けていたが, 無症状のため放置していた.今回, 心窩部痛を主訴とし, 当院内科受診, 胃内視鏡検査, 生検にて, 胃悪性リンパ腫と診断され, 手術目的で当科転科となった.手術は胃亜全摘, 胆摘術を施行, 爆弾の破片が胆石の核となっていることが判明した.異物を核とした胆石症の報告は稀であり, 自験例の如く, 爆弾の破片を核とした胆石症はさらに稀有と考えられ, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 根本 洋, 鈴木 隆, 北見 明彦, 山城 元敏, 堀 豪一, 池田 忠明, 高橋 博義
    1993 年 53 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    われわれは21歳の男性に発症した自然気胸に対し, 胸腔鏡下のブレブ切除術を行った.当症例は9年前再生不良性貧血と診断されたが, その治療に起因すると考えられる肝炎, 両側大腿骨頭壊死・糖尿病を併発した.再生不良性貧血の増悪に対し骨髄移植が施行された.移植後の経過は順調であったものの, その後糖尿病のため入院治療を行っている際に左自然気胸を認めた.第一回目は保存的治療により軽快したがまもなく再発した.両側大腿骨頭壊死に対する人工骨頭置換術が予定されていたので, 手術の際の緊張性気胸を回避するため, 自然気胸の治療を先行させた.この症例はいわゆるpoor riskと考えられたので, 手術侵襲を少なくする目的で胸腔鏡下に自動縫合器 (以下, ENDO-GIA) を使用してブレブ切除術を行った.術後第8病日に一度退院し, その後大腿骨頭の手術を行ったが, 自然気胸の再発は認めていない.胸腔鏡下による手術に関する統計学的な安全性はまだあきらかにはされていない.しかし, 胸腔鏡下の手術は皮膚切開創と胸膜切開創が小さく侵襲が少ないため入院期間の短縮化が可能であり, 今後poor riskの症例に対しての適応が拡大されていくと考えられる.また今回われわれの用いたENDO-GIAは根治性が高いと思われた.
  • 堀之内 達郎, 副島 和彦, 神田 実喜男, 吉村 誠, 福島 一雄, 阪本 桂造, 藤巻 悦夫
    1993 年 53 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    血管腫は, 良性腫瘍としては比較的多い腫瘍であるが, 筋肉内血管腫は比較的まれな腫瘍で, 臨床的に特徴的な所見に乏しく病変が深部にあることが多いため, 診断が困難である.今回我々は, 大腿中間広筋内にびまん性に発生した筋肉内血管腫を経験した.症例は, 28歳, 男性, 左大腿部腫瘤と疼痛を主訴に来院.左大腿部に8×6cmの弾性硬, 境界不鮮明で圧痛のある腫瘤を触知した.CT, MRIで同部に境界不明瞭な腫瘍陰影を認めた.血管造影では, 静脈相で不整な集積像を認めた.手術所見は, 中間広筋内に1~2cmの腫瘍を数個認め, 内容は暗赤色を呈しており, 一部正常組織を含めて一塊として摘出した.病理組織所見では, 筋肉内血管腫の混合型で主に海綿型を呈し, 一部に毛細管型を伴っていた.
  • 辻 祐一郎, 大庭 敏夫, 近岡 弘, 板橋 家頭夫, 瀧田 誠司, 奥山 和男
    1993 年 53 巻 1 号 p. 116-121
    発行日: 1993/02/28
    公開日: 2011/06/23
    ジャーナル フリー
    肝腫大と肝酵素の上昇を指摘され当科に入院した2歳男児について, 糖原病を疑いフェルナンデスの負荷試験 , 血球酵素学的検査を行い糖原病VIII b型と診断しえた1例を経験した.糖原病におけるVIII型の本邦での頻度は岩本ら2) によれば肝型糖原病のうち28.8%を占めると報告されているが, その臨床像, 診断法, 臨床経過について詳しく述べられた報告は少なく, 今回ここに報告するとともに糖原病VIII b型について若干の考察を加えた.
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