昭和医学会雑誌
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閉塞性黄疸時の脾摘に関する実験的研究
五味 明
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1993 年 53 巻 1 号 p. 84-91

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抄録
胆汁うっ滞性肝障害発現時における脾臓の機能に関する研究は少ない.4週齢のWistar系雄性ラットの総胆管結紮による胆汁うっ滞性肝障害モデルを作成し, 脾摘による肝障害への影響及び肝臓の貪食能についても同時に検討した.脾摘群では, 軽微な肝細胞壊死, ならびに傷害された肝細胞の修復傾向が認められ, また非脾摘群では白脾髄の軽度萎縮を呈したことより, 急性肝障害時の脾摘が肝細胞障害を軽減する可能性が示唆された.結紮後6日目ラットの肝のKupffer細胞の貪食能を墨汁を用いて細胞内の墨汁滴数で検討した.総胆管結紮群で血清総ビリルビン値9mg/dl前後の閉塞性黄疸におけるKupffer細胞の貪食指数は偽手術群の1/10程度に低下していた.また総胆管結紮に脾摘を加えた群では, Kupffer細胞内の墨汁滴数は偽手術群とほぼ同じであるが, 貪食された墨汁滴の大きさは総胆管結紮群と比べて大きいものが観察され, 脾摘を行なうことによりKupffer細胞の貪食率が回復した.これは黄疸時の脾臓よりKupffer細胞の貪食能を抑制する因子が放出され, 脾摘によりその抑制因子から解放されたため貪食能が回復したと推測された.本実験より血清総ビリルビン値9mg/dl前後で, 肝腫大はあるが, 脾腫はない条件下における脾臓は, Kupffer細胞の貪食能を抑制していると推測された.従って, 臨床的には5歳以上で, 先天性胆道閉鎖症術後充分な減黄が行なわれない場合, 脾腫を認めなくても, この時点で脾摘を行なうと, Kupffer細胞の貪食能も回復し, 肝の線維化も抑制される可能性があり, 術後合併症である上行性感染や門脈圧亢進症の発症頻度を低下させることが期待できると思われた.
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