昭和医学会雑誌
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好酸球性腹膜炎を合併した慢性腎不全の1幼児例
中村 節子宮下 政子広田 保蔵山田 耕一郎石川 昭
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1993 年 53 巻 4 号 p. 383-387

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抄録

1歳9カ月時の痙攣を契機に慢性腎不全と診断され, 経過中に好酸球性腹膜炎を合併した慢性腎不全の1例を報告する.症例は1歳9カ月の男児で生後1カ月より発育不良を指摘されていた.無熱性痙攣を主訴に当科を受診し, 慢性腎不全と診断された.初診時生化学検査においてBUN87.9mg/dl, Crnn2.0mg/dl, Ca4.3mg/dl, P9.5mg/dlを呈しアシドーシスも著明であった.入院治療により, 約1週間で低Ca血症, アシドーシスは軽快し, 初診時に認められた脳波異常, 心電図異常も消失した.以後, 痙攣も出現していない.その後, 3歳6カ月時に腎不全症状の急激な悪化のため, CAPDを開始した.この直後細菌性腹膜炎を発症し, 抗生物質投与に反応したが, 引き続いて排液中に好酸球が増加する好酸球性腹膜炎を併発した.診断後, 抗生物質投与を中止したところ排液中好酸球は減少した.以後, 現在に至るまで急激な変化もなく経過している.一般に乳児期発症の慢性腎不全は年長児や成人に比し, 多くの問題を抱えているが本症例においても発育障害, 精神運動発達遅滞を呈しており, 今後に課題を残している.

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