昭和医学会雑誌
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イソフルレン深麻酔の内分泌系への影響
池田 東美明世良田 和幸武田 昭平外丸 輝明
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1993 年 53 巻 4 号 p. 376-382

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抄録
乳房切断術例にイソフルレン深麻酔による低血圧麻酔を施行し, 循環動態とともに内分泌系の影響を検索するため血漿ノルエピネフリン, 血漿エピネフリン, 血漿レニン活性, 血漿アルドステロンを測定した.低血圧群として収縮期圧を80から90mmHgの範囲にイソフルレン濃度を調節するのに3から4%濃度のイソフルレンを必要とした.また非低血圧群として1から2%濃度のイソフルレンを吸入させ比較検討した.平均動脈圧は, 当然のことながら低血圧群が非低血圧群に比べて有意の低下を示した.心拍数は, 非低血圧群では有意の変化を示さなかったが, 低血圧群では低血圧前値に比べて有意の増加を示し, 両群間に有意差がみられた.血漿ノルエピネフリンは, 非低血圧群では有意の変化を示さなかったが, 低血圧群では低血圧前値より有意の上昇を示し, かつ非低血圧群と有意差がみられた.血漿エピネフリンは, 両群とも手術後30分値まで低下傾向を示したが, 以後漸増傾向を示し, 全体としては, 大きな変化を認められなかった.血漿レニン活性は, 両群とも低血圧前値に比べ術中有意の増加を示し, 低血圧群は非低血圧群より有意に高値を示した.血漿アルドステロン濃度は, 両群とも低血圧前値に比べ術中有意の増加を示し, レニン活性と同様に低血圧群は非低血圧群より有意に高値を示した.低血圧群では, 非低血圧群に比し, ノルエピネフリン, レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の賦活が生じたが過度の上昇ではなく, 術中, 術後に異常を認めず, イソフルレン低血圧麻酔は安全で有用な方法と考えられた.
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