抄録
症例は36歳男性.発熱, 右季肋部鈍痛を主訴に入院した.末稍血白血球25900/μl, CRP21.9mg/dlと上昇しており精査の結果, 肝膿瘍と診断した.便や膿瘍ドレナージ液から虫体は検出されなかったが, 同性愛嗜好があることより赤痢アメーバによる肝膿瘍を強く疑い, 治療を開始した.大腸内視鏡検査上, 盲腸に不整形の潰瘍性病変を認め, 病変部の辺縁より生検を施行したがあきらかな虫体が証明されなかった.血清赤痢アメーバ抗体が6400倍と上昇していたことが後に判明したため赤痢アメーバによる肝膿瘍と確診した.本症例は, 治療が奏効し臨床症状が消失しても, 発症17カ月目まで腹部CT上膿瘍腔が残存しており, このような症例には注意が必要と思われた.