昭和医学会雑誌
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植皮部位とその周辺健常部位及び恵皮部位の皮膚の角質細胞の比較検討―植皮部と恵皮部の角質細胞有核率の比較検討―
西村 篤
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1994 年 54 巻 1 号 p. 27-32

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抄録

角質層は生体と外界の境界に位置し, 体内・対外的な防御機能を果している組織である.この角質層の機能は, 角質細胞と細胞間脂質などの状態で変化する.最近, 正常部や疾患部における角質機能を比較した種々の解析が試みられている.今回, 我々は, 表皮の角化状態を非侵襲的に解析するべく, 植皮部とその周辺健常部及び恵皮部の皮膚表面に水溶性粘着剤付き透明テープを接着させ, 角質細胞を採取した.採取した角質細胞をエタノール水溶液にて溶解分散させ, プロピジウム・アイオダイド (PI) 染色液とフルオレセイン・イソチオサイアネート (FITC) 染色液にて多重染色した後, 光学顕微鏡下で術後2週, 4週, 8週の3回観察し, 角質細胞の有核細胞出現率 (有核率) を求めた.植皮部は健常部に比して有核率が高かった.本来, 無核の角質細胞に有核細胞が高率にみられたことは, 不全角化が強く起こったためと考えた.分層植皮部に比してその恵皮部では有核率が高かった.これは, 恵皮部では表皮が欠損しているので, 防御機構を維持するために分層植皮部に比して強く不全角化が起こったためと考えた.分層植皮部では全層植皮部に比して有核率が高かった.これは, 植皮片は薄いほど早期に血行が再開されるので, それに伴い不全角化も強くそして早期に起こったためと考えた.植皮部と恵皮部の有核率は共に時間経過に伴って低下した.これは, 創傷治癒の過程で植皮部も恵皮部も落ち着いてきたためと考えた.年齢, 性別では有核率に特に差はみられなかった.

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