昭和医学会雑誌
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在宅高齢介護者の疲労に影響を与える要因とその数量化モデルに関する研究
坂本 雅昭安西 将也川口 毅
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1994 年 54 巻 1 号 p. 33-42

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抄録

本研究は在宅要介護老人をもつ世帯のうち, 今後増加が予想される高齢者夫婦世帯の介護者 (配偶者) の疲労に着目して, その実態を把握することおよび疲労に影響を与える要因を明らかにし, その要因の影響度を数量化することを目的とした.対象は高齢者夫婦世帯988世帯のうち65歳以上の高齢者がいる夫婦世帯であること, 要介護者が運動障害を随伴していること, ならびに要介護者が痴呆症状を呈していないことの3条件を満たした72世帯を調査客体とした.調査員の聞き取りにより, 介護者の基本属性, 介護環境に関する基本的背景要因, 介護内容などの21項目および介護者の疲労を検討するため疲労自覚症状を調査した.さらに, 外的基準を自覚的疲労症状訴え率とし, 介護者の基本属性, 介護環境に関する基本的背景要因, 介護内容などの21項目を説明変数 (アイテム・カテゴリー) とした林の数量化1類による分析を行い次のような結果を得た.1) 疲労のタイプは, 起床時II-dominant型 (精神作業型・夜勤型) , 就寝時ではI-dominant型 (一般型) の傾向を示したが特定し得なかった.2) 起床時と就寝時の疲労自覚症状訴え率に有意差が認められず, 起床時にすでに訴え率が高値であったことから, 介護者は慢性的蓄積型疲労を呈していた.3) 疲労に影響を与える要因は, 介護者の健康状態, 職業の有無, 年齢階級, 介護継続の意志, 排泄介助, 介護期間, 介護時間, 褥創の処置, 体を起こす介助, 寝返り介助などであった.4) 疲労の増加に影響を与える主な要因は, 職業 (有) , 介護継続 (限界) , 健康状態 (病気がち) , 排泄介助 (有) , 介護期間 (3年以上7年未満) , 年齢階級 (70~80歳未満) , 寝返り介助 (有) , 体を起こす介助 (有) , 介護時間 (随時) などであった.以上の結果, 在宅高齢介護者の疲労に影響を与える要因を明らかにし, その影響度を数量化することができ, 今後, 在宅高齢介護者に対する支援ニーズの把握やその対策の企画立案を可能とした.

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