抄録
PACSやCRT診断等用のコンピュータシステムは高機能だが, 莫大な経費がかかるのに対しパーソナルコンピュータ (パソコン) は性能は劣るが導入が容易で汎用性がある.しかし, このようなシステムでの画像診断の適応や限界等は明らかにされていない.そこで, パソコン用CRTの物理特性を評価するために, スキャナーで取り込みCRT表示画像と原画像フィルムを放射線科医2名とプログラマー1名で比較する基礎実験を施行した.CRTは輝度とコントラストが低く, 表示できる階調も狭いので原画像より画質の劣化が認められる.スキャナーの取り込み解像度の違いは画質, 画像容量, 画像表示速度の違いに表れ, 操作性の善し悪しを決める重要な要素になる.基礎実験結果から, パソコン用CRTで表示した場合に劣化が目だたない画像は, 辺縁が明瞭でコントララストの強い画像と考えられた.この条件を満たす臨床的意義の高い病変として, 肺野の腫瘤性陰影の検出能を題材に選び, 放射線科専門医6名で合計420例について, ROC解析を行った.肺腫瘤性陰影の検出においてCRT画像と原画像ではStudent t検定 (p<0.05) で有意差はなかった.直径2cm以下の小腫瘤はfalse negativeとなる傾向にあった.画像診断専用機では画像処理により胸部単純写真を凌駕する診断能を有する場合があることが知られている.現在のパソコンを用いた画像表示能力では, 容量が小さく, コントラストが強い画像を扱う程度であるが, 将来的に価格が低下し, 処理能力, ソフトウェア, CRT表示性能が向上すれば, より厳しい画質を要求する病変の診断も実現できるようになると思われた.