昭和医学会雑誌
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下腸間膜動脈を温存した直腸癌の上方隔清 (D3) の手技
岡 壽士八木 秀文金 潤吉笹屋 昌示松本 扶喜子葛目 正央白 英仲吉 昭夫熊田 馨
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1995 年 55 巻 6 号 p. 630-635

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抄録
S状結腸および直腸癌に対するリンパ節の郭清をD3で行うなら, 下腸間膜動脈 (以下IMA) をその根部で切断することが基本とされ, それに伴い, 末梢の左結腸動脈およびS状結腸動脈も切断されることになる.しかし, 現状では, そうした血管の処置を行いつつ, 腸管の再建の際, 口側腸管の切除端は, 辺縁動脈を残した左結腸動脈あるいはS状結腸領域で行われている.したがってIMA領域の確実な郭清が行えるならば, これを根部で結紮せずに温存することのほうが残存腸管の血行の面から望ましいと考えられる.IMA領域の郭清を確実に行うには, S状および下行結腸間膜の大動脈付着部からIMA根部の約1.5センチ上方の腸間膜に穴をあけ, 左結腸動脈の分岐部と辺縁動脈の中間に向かって腸間膜を切離する.これによってIMA領域の郭清範囲が識別される.IMAの根部から左結腸およびS状結腸への分岐部に向かって, IMAの頂部で血管周囲組織を遊離させるとIMA領域のリンパ節が一固まりで採れ, 完璧な郭清が行える.われわれは本論文で, 下腸間膜動脈および左結腸動脈を温存する, 直腸癌に対するの主幹動脈の郭清手技について述べる.
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