昭和医学会雑誌
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保存的治癒が可能であった弁置換術後真菌性心内膜炎の一治験例
村上 厚文饗場 正宏花房 雄治成澤 隆松尾 義昭山田 眞高場 利博李 雅弘
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1995 年 55 巻 6 号 p. 645-650

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抄録
抗真菌薬fluconazoleの単独使用で完治し得たと考えられた弁置換術後真菌性心内膜炎 (Candida prosthetic valve endocarditis, 以下PVE) の稀な1例を経験した.症例は56歳の男性で, 7年前に26mm SJM弁による僧帽弁置換術を施行されていた.平成4年4月, 回盲部腫瘤のため回盲部切除術を受けた.術後広域抗生物質の多剤併用療法を施行したところ血液培養からCandida tropicalisが陽性となり, また心エコー検査にて, 人工弁弁輪に比較的大きな疣贅が認められたため真菌性のPVEと診断された。ただちに手術目的にて当院に救急車搬送されたが, 来院時遊離が原因と考えられる疣贅の縮小化をきたし, 梗塞症状, 不整脈さらに弁機能不全なども認められなかったため, fluconazole 200mg/dayの抗菌療法を開始した.この結果約2週間でCandidaは陰性化しとくに合併症もなく軽快した.塞栓症を併発すること無く疣贅が遊離縮小化したことが結果的に化学療法の効果を相乗的に高め, 保存的治癒可能な状態となったと考えられたが, 今後も血中Candida抗原やD-arabinitolなどの経時的測定により長期的経過観察が重要と考えられた.
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