抄録
学生以外の方も沢山お集りですが, 最終講義ですので学生さんを対象として行いたいと思います.いつも講義のプリントを作っておりましたので, 今日も作ることにしました.私の考えていたことを総まとめとして書いたつもりです.相当長くなり31頁になりましたが, 保存してお読みいただければ幸いです.
1961年に昭和医大に勤務して以来, 34年間放射線医学の講義をさせてもらいました.はじめの頃は, 放射線は有用であるが生体に対しては危険だという話をしました.だんだん時代が進むにつれて放射線は少量の場合は有害ではないことがわかり, それを強調した講義を行ってきました.今日の結論もそのようになっております.「放射線を好きになって下さい」ということです.1989年に青森放送で行った「みんなで考えよう, 放射線」のビデオがありますので, 5分間だけ見ていただくことにします.
宇宙の初めは放射線であった, というところから話を進めます.宇宙の中で銀河ができ, 太陽が作られ, 地球が誕生します.すべて放射線が関係しています.40億年前に生命が生まれ, 進化して400万年前に人類が出現してきました.その間, 放射線と生物がどのようにかかわったかを見ていきます.1895年, 今からちょうど100年前に人工的放射線が発見され, それによって, はかり知れない利益を得てきました.害も受けてきました.まず放射線の生物学的影響につて, 次いで放射線の診断的利用, さらに放射線による癌の治療の話を歴史的に鳥観していきたいと思います.