抄録
膝関節における半月板の機能的役割が明らかになるにつれ, 半月板損傷の治療に際して損傷半月板の温存が重要であることは諸家の一致した意見であり, 血管が分布する半月板辺縁部での損傷に対して, 今日では半月板縫合術が積極的に行われるようになった.しかし, 修復された損傷半月板が機能的にも正常化するかどうかは不明な点が多い.また, 半月板には神経分布もあると言われているが, 諸家の文献はまちまちであり, 一致した意見がない.そこで今回我々は, 微細血管および末梢神経線維を同一切片上で同時に観察できるneurovascular double staining法 (以後NVDS法と略す) を開発し, イヌ膝関節の半月板における神経線維と血管の分布を観察した.また, 人工的に内側半月板辺縁部損傷を作製した後, 半月板縫合術を行った雑種犬18頭を術後2, 4, 6, 8, 12, 24週で屠殺し, 半刀板辺縁部において断裂された神経と血管の修復過程を, NVDS法をもちいて経時的に観察した.正常半月板では血管は半月板辺縁部より1/2~1/3程度まで内側へ分布していた.しかし神経は1/5程度内側までしか分布していなく, またその数も極めて少なかった.なお神経終末は全て自由神経終末であり, mechanoreceptorは存在しなかった.半月板修復過程において血管系の再生は術後約6週でみられたが, 神経線維の再生は術後24週までみられなかった.NV-DS法は, 半月板の神経・血管分布および両者の相互関係を検索するのに有用な方法であることが実証された.また, 辺縁部断裂縫合後の修復半月板は短期的には完全に再生されていないことが明らかとなった.