昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
精巣腫瘍におけるAgNORsとKi-67の臨床的意義
益山 恒夫, 鈴木 俊一, 井上 克己, 吉田 英機
著者情報
キーワード: 精巣腫瘍
ジャーナル フリー

1997 年 57 巻 3 号 p. 245-251

詳細
抄録
精巣腫瘍は化学療法の進歩により飛躍的に予後が改善された腫瘍である.しかし悪性度の判定が困難であり, 予防的化学療法の適応に迷うことがある.そこで今回我々は細胞増殖能を反映するとされているAgNoRsとKi-67の測定を試み, その臨床的意義について検討した.対象は1982年から1994年に昭和大学病院泌尿器科において精巣腫瘍として治療され, AgNoRsおよびKi-67を染色し得た26例である.対照として不妊症の診断のため施行した精巣生検組織のうち, 精索静脈瘤患者のJohnsen's score 8以上の病理学的異常のない精細管10例を用いた.AgNORsはパラフィン包埋標本を鍍銀染色し, 1000倍顕微鏡下に腫瘍細胞の核内染色顆粒数を計測した.Ki-67はシランコーティングしたパラフィン包埋標本をMIB-1抗体をもちいてSAB法にて染色し, 腫瘍細胞1000個の養成細胞率を算出した.AgNORsの結果は精巣腫瘍の6.70±1.50に対し対照は2.62±0.40と精巣腫瘍で有意 (p<0.001) に高かった.セミノーマに限ってもAgNORsは7.08±1.61と, 対照に対し有意差 (p<0.001) を認めた.またKi-67は精巣腫瘍の33.65±13.34%に対し対照は2.76±1.96%と精巣腫瘍で有意 (p<0.001) に高かった.セミノーマに限ってもKi-67は29.10±9.76%と有意差 (P<0.001) を認めた.Stage別ではAgNORs, Ki-67ともにstageIとIIの間で有意差を認めなかった.また, AgNORsとKi-67との間には相関を認めなかった.AgNORsやKi-67による悪性腫瘍の細胞増殖能は様々な腫瘍において検討されているが, 対照より有意に高く, 悪性度と相関するとされている.しかし, 精巣腫瘍においてAgNORsとKi-67とを同時に比較検討した報告はない.今回の我々の検討結果からAgNORsとKi-67は精巣腫瘍においても増殖マーカーとして有効であることが示唆された.増殖能の高い症例は悪性度が高く, 再発転移を起こす可能性が高いと考えられるため, AgNORsやKi-67は精巣腫瘍術後の予防的化学療法の適応の指標となり得ると考えられた.
著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top