昭和医学会雑誌
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胃, 大腸癌の5-FUとCisplatinを中心とした化学療法によりMDRとBcl-2発現が誘導される
山崎 武志
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キーワード: 癌化学療法
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1997 年 57 巻 4 号 p. 373-378

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抄録

胃, 大腸癌組織のmdr-1遺伝子 (Multi Drug Resistant gene: mdr-1) , bcl-2, p53遺伝子の発現を免疫組織学的染色法により検索し, 抗腫瘍剤の治療効果との関連を検討した.対象は, 手術不適の進行胃癌14例, 進行大腸癌6例の20例であり, 抗腫瘍剤療法前後の組織を採取して検討した.その結果, 対象として検索した早期胃癌での発現率はMDR, Bcl-2ともに0%でP53が22.2%であるのに対して, 進行胃大腸癌化学療法症例は, 胃癌ではMDR, Bcl-2, p53の陽性率はともに, Well50%, Poor55.6%だった.大腸癌ではMDRとBcl-2発現陽性率は100%, p53は81.8%であった.これらの結果より胃大腸癌において, MDRおよびBcl-2, p53の発現は組織学上, 分化の程度とは関係なく, 癌の進行度に比例して頻度が高くなったと考える.化学療法による奏効率との関係では, 胃癌partial response症例ではMDR, Bcl-2, p53の発現頻度が0%であり, 胃癌progressive disease症例ではMDR, Bcl-2が100%, p53が88.9%の発現であった.このことより抗癌剤耐性機構の獲得によるMDRの発現とアポトーシス抑制遺伝子であるBcl-2発現が抗癌剤治療の有効性に深く関わっていることが示唆された.さらにbcl-2遺伝子の発現が胃癌, 大腸癌の予後判定因子として化学療法の適応を含めた新しい腫瘍マーカーになる可能性が示唆された.

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