昭和医学会雑誌
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30年来の痔瘻に発生した痔瘻癌の一例
岡 壽士楠本 盛一木川 岳吉田 耕三吉沢 康男仲吉 昭夫
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1998 年 58 巻 3 号 p. 285-289

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抄録

症例は30年以上にわたる痔瘻を既往に持つ68歳の女性で, 肛門部痛および腫瘤を主訴に来院した.病変は痔瘻の原発孔と2個の二次口を認め, 12×12cmの腫瘤で, CT検査では多房性で, 一部に外肛門括約筋, および皮膚への浸潤が認められた.手術は, 上方, 下方および側方のリンパ節郭清を付加した直腸切断術を施行した.会陰部では主病巣とともに臀部左側, 会陰部の広範な皮膚病変を切除したのち, 肛門部の皮膚欠損は有茎皮膚弁により形成を施し閉鎖した.両側鼠径リンパ節は浅深部の郭清を行った.痔瘻癌の原発巣は直腸壁外にあり, 長期経過および膿瘍形成により局所病変はきわめて大きいが, 局所の完全な切除により十分な根治が得られる.皮膚の欠損部を有茎皮弁形成術を併用することによって, 広範な病変を充分に切除し, 一期的に創を閉鎖することが出来る.症例は3年を経過した現在, 再発の徴候は認めていない.

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