昭和医学会雑誌
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膝関節外側半月板の前方の付着形態について
松本 忠重
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キーワード: 外側半月板, 前角, 付着線維
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2000 年 60 巻 4 号 p. 448-453

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抄録

膝関節外側半月の板前方の付着線維を調査し, 関節鏡的に前十字靭帯再建術で誤って同部を損傷し, 外側半月板の不安定症を来さないための方策を探った.64解剖体 (平均年齢67.9歳) から得た128膝の外側半月板の前方の形態と付着線維を肉眼的に調査した.外側半月板の前部には, 内側半月板につながる膝横靭帯への線維束aと, 前十字靭帯 (以下ACLと略す) へ移行する線維束b, 最後にACLの後方で脛骨外側顆間隆起に付着する線維束cと3種類の線維束を認めた.これらの線維束幅の比率は, a: b: c=1: 1.3: 1.6であったが, 線維束aはきわめて菲薄で, 外側半月板の前方での力学的な付着にはあまり役立っていないと考えた.反対に線維束bとcの厚さは同じであった.128膝でa~c3種類の線維束は全例に認めることはない.これらの線維束の組み合わせにより次の4型に分けた.タイプIはa+b+c線維を持つもの, タイプIIはb+c線維を持つもの, タイプmはa+c線維を持つもの, タイプIVはc線維単独型と定義した.線維束a~cの3種類を有するタイプIが38膝 (29.7%) あり, 線維束bとcがあるタイプIIが73膝 (57.0%) , 線維束aとcがあるタイプmが9例 (7.0%) , 線維束cのみの単独型のタイプIVが8例 (6.3%) で, その線維束幅は4~5mm (平均4.3mm) であった.外側半月板のおもな付着線維は外側顆間隆起に向かう線維束とACLに合流する線維束である.なお, 組み合わせでa+b型, a単独型およびb単独型は認められなかった.この調査結果によると, タイプ1よりタイプIVまでのすべてのタイプで外側半月板の前方のおもな付着線維成分は, 脛骨外側顆間隆起に関連するものであり, それらの付着線維はACL再建では誤って掻爬されうる位置にあった.それで再建術中にこれらの付着線維を損傷しないための予防法として, 関節鏡的に外側半月板の前方の付着線維束を正しく確認した上で, ACLを郭清するか, あるいはACLの外側部分を温存することが重要である.

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