昭和医学会雑誌
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乳がん術後患者の危機回復に影響を及ぼす要因の疫学的研究
―乳がん術後患者のフオローアップ調査結果より―
藤野 文代星山 佳治川口 毅
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2000 年 60 巻 4 号 p. 454-461

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抄録

乳がんのために乳房切除術を受けた術後1週目の患者105名のうち, 研究協力の同意が得られた96名について, フィンクの危機モデルをもとに作成した16項目からなる質問票とサポート質問紙ならびに本人の自我状態を示す市販のTEG質問紙と自尊感情を示すSelf-Esteemの質問紙 (Rosenberg 10項目, 菅訳) を用いて, 面接及び自記式・片側郵送法により調査を実施した.その結果, TEG得点の推移をみるとCP (Critical Parent) 得点とAC (Adapted Child) 得点は防御的退行段階から適応段階に移行するに従って低くなる傾向がみられ, 逆にNP (Nurturing Parent) 得点, A (Adult) 得点ならびにFC (Free Child) 得点は防御的退行段階から承認・適応段階に移行するに従って高くなる傾向がみられた.また適応段階にある人のFC得点は防御的退行段階の人のFC得点より有意 (p<0.05) に高くなっていた.FC/AC得点比は防御的退行段階から承認段階, さらに適応段階に至るにつれて有意に上昇していた (p<0.05) .Self-Esteem得点は平均29.6点で防御的退行段階から承認段階, 適応段階へと進むにつれて高くなっていた.このことは自尊感情の高さは危機の進展に何らかの影響を与えたものと推察され, Self-Esteem低得点群の患者に対しては今後, Self-Esteemを高める個別なケアが必要と考える.

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