昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
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60 巻, 4 号
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  • 小峰 光博
    2000 年 60 巻 4 号 p. 423
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • ―新WHO分類を中心に―
    光谷 俊幸
    2000 年 60 巻 4 号 p. 424-434
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 日野 研一郎
    2000 年 60 巻 4 号 p. 435-442
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 森 啓
    2000 年 60 巻 4 号 p. 443-447
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
  • 松本 忠重
    2000 年 60 巻 4 号 p. 448-453
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    膝関節外側半月の板前方の付着線維を調査し, 関節鏡的に前十字靭帯再建術で誤って同部を損傷し, 外側半月板の不安定症を来さないための方策を探った.64解剖体 (平均年齢67.9歳) から得た128膝の外側半月板の前方の形態と付着線維を肉眼的に調査した.外側半月板の前部には, 内側半月板につながる膝横靭帯への線維束aと, 前十字靭帯 (以下ACLと略す) へ移行する線維束b, 最後にACLの後方で脛骨外側顆間隆起に付着する線維束cと3種類の線維束を認めた.これらの線維束幅の比率は, a: b: c=1: 1.3: 1.6であったが, 線維束aはきわめて菲薄で, 外側半月板の前方での力学的な付着にはあまり役立っていないと考えた.反対に線維束bとcの厚さは同じであった.128膝でa~c3種類の線維束は全例に認めることはない.これらの線維束の組み合わせにより次の4型に分けた.タイプIはa+b+c線維を持つもの, タイプIIはb+c線維を持つもの, タイプmはa+c線維を持つもの, タイプIVはc線維単独型と定義した.線維束a~cの3種類を有するタイプIが38膝 (29.7%) あり, 線維束bとcがあるタイプIIが73膝 (57.0%) , 線維束aとcがあるタイプmが9例 (7.0%) , 線維束cのみの単独型のタイプIVが8例 (6.3%) で, その線維束幅は4~5mm (平均4.3mm) であった.外側半月板のおもな付着線維は外側顆間隆起に向かう線維束とACLに合流する線維束である.なお, 組み合わせでa+b型, a単独型およびb単独型は認められなかった.この調査結果によると, タイプ1よりタイプIVまでのすべてのタイプで外側半月板の前方のおもな付着線維成分は, 脛骨外側顆間隆起に関連するものであり, それらの付着線維はACL再建では誤って掻爬されうる位置にあった.それで再建術中にこれらの付着線維を損傷しないための予防法として, 関節鏡的に外側半月板の前方の付着線維束を正しく確認した上で, ACLを郭清するか, あるいはACLの外側部分を温存することが重要である.
  • ―乳がん術後患者のフオローアップ調査結果より―
    藤野 文代, 星山 佳治, 川口 毅
    2000 年 60 巻 4 号 p. 454-461
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    乳がんのために乳房切除術を受けた術後1週目の患者105名のうち, 研究協力の同意が得られた96名について, フィンクの危機モデルをもとに作成した16項目からなる質問票とサポート質問紙ならびに本人の自我状態を示す市販のTEG質問紙と自尊感情を示すSelf-Esteemの質問紙 (Rosenberg 10項目, 菅訳) を用いて, 面接及び自記式・片側郵送法により調査を実施した.その結果, TEG得点の推移をみるとCP (Critical Parent) 得点とAC (Adapted Child) 得点は防御的退行段階から適応段階に移行するに従って低くなる傾向がみられ, 逆にNP (Nurturing Parent) 得点, A (Adult) 得点ならびにFC (Free Child) 得点は防御的退行段階から承認・適応段階に移行するに従って高くなる傾向がみられた.また適応段階にある人のFC得点は防御的退行段階の人のFC得点より有意 (p<0.05) に高くなっていた.FC/AC得点比は防御的退行段階から承認段階, さらに適応段階に至るにつれて有意に上昇していた (p<0.05) .Self-Esteem得点は平均29.6点で防御的退行段階から承認段階, 適応段階へと進むにつれて高くなっていた.このことは自尊感情の高さは危機の進展に何らかの影響を与えたものと推察され, Self-Esteem低得点群の患者に対しては今後, Self-Esteemを高める個別なケアが必要と考える.
  • 本橋 克利, 萩原 民雄, 渡辺 綱正, 山科 聡子, 下島 桐, 竹田 稔
    2000 年 60 巻 4 号 p. 462-470
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    PHAPIはpp32, LANP, APRILの名称でも知られる分子量約32kDaの核タンパク質であるが, 単一動物種から報告された一次構造は同一でなく多様性があるものと予想される.我々はこのタンパク質の多様性を明らかにするため, マウス胚からcDNAのクローニングを行った.マウスには基本となる少なくとも2つのタイプのアイソフォームが存在していた.これらはいずれも分子量約32kDaのタンパク質であり, これまでに報告されているPHAPIタンパク質は2つのタイプのいずれかに分類することができた.また, これら基本となるアイソフォームにはさらに翻訳領域内において欠失が認められる多数のバリエーションが存在していた.欠失部位の大部分はC末端側の酸性アミノ酸の繰り返し配列内に集中しており, 核移行シグナルの欠失, プロテインキナーゼによるリン酸化部位の欠失など様々であった.これらアイソフォームのうちの一群はマウス7日胚において既に発現しており, 発達過程においても組織においても発現量の変化はなく, ハウスキーピング的な挙動を示した.これに対してもう一方のタイプはマウス11日胚以降に発現が見られ, 時間経過にともない発現するアイソフォームの種類に変化が見られた.また, 組織ごとに発現パターンが異なり, このタイプのアイソフォーム群は構造的にも機能的にも多様性があることを示唆している.PHAPIの機能活性や生理機能については未だ不明であるものの, このタンパク質の多様性は機能を考える上で重要な要素であると考えられる.
  • 梅澤 香貴
    2000 年 60 巻 4 号 p. 471-486
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    全日本スキー選手権大会に出場した33選手の実際の競技場面でのスキージャンプのサッツ動作についてAPASのコンピューターで3次元動作分析を行った.33選手を純ジャンプ群, 複合ジャンプ群, ジュニア群の3群に分けて, それぞれの下肢3関節の角速度, 踏切時の助走速度を検討した.純ジャンプ群はLarge hill, 複合ジャンプ群およびジュニア群はNormal hillでのジャンプであった.1.純ジャンプ群と複合ジャンプ群にだけ股関節と膝関節の角速度のピークは同期していた.また, 足関節の底背屈はわずかに行われていた.2.純ジャンプ群の股関節の角速度ピーク値は809~1227, 平均968.9deg/s, 純ジャンプ群の膝関節の角速度ピーク値は620~1124, 平均875.8deg/sに対して, 複合ジャンプ群の股関節のそれは, 439~565, 平均508.6deg/s, 膝関節のそれは469~670, 平均553.5deg/sであった.3.ジュニア群の股関節, 膝関節のカーブは, 種々なカーブを示した.そのピーク値は股関節が269~617, 平均463.6deg/s, 膝関節が320~696, 平均463.5deg/sであった.4.ナショナルチームのほとんどの選手はサッツ動作の際に, 足関節の角速度の最大値にしても, 300deg/s以下であり, ジュニア群の半数以上の選手が300deg/s以上であった.5.純ジャンプ群の助走速度は2312~2372, 平均2333.9cm/sで, take-offの0.1秒前よりサッツ動作を開始する.複合ジャンプ群のそれは2319~2358, 平均2333.3cm/sで, take-offの0.1秒前よりサッツ動作を開始する.ジュニア群のそれは1868~2322, 平均2112.7cm/sで, take-off0.1~0.2秒前よりサッツ動作を開始し, ばらつきが目立った, 以上より, サッツ動作は1.股, 膝関節の角速度のピークは同期していた.2.統計学的に股, 膝関節の角速度は高いほど, 飛距離を長くしていることがわかった.3.足関節はカンテを蹴るのではなく, 押すのである.4.各ジャンプ群の足関節速度に有意差はなかった.5.統計学的に助走速度が速いほど飛距離を長くしていることがわかった.垂直抗力や空気抵抗に負けないで, サッツ動作を起こすためには腰背部, 殿部や下肢の筋力も重要である.
  • 佐々木 英悟, 土佐 泰祥, 保阪 善昭, 塚越 卓
    2000 年 60 巻 4 号 p. 487-492
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    形成外科領域においては, 神経欠損部が非常に長い場合や移植床の瘢痕が高度で神経移植では機能回復が期待できない場合には血管柄付神経移植術を行うことがある.しかし, 神経移植術, 遊離血管柄付神経移植術は神経採取によるなんらかの犠牲を伴うため, 神経欠損部に管腔を移植するいわゆる神経導管が研究されている.一方, 基底膜を構成する代表的糖タンパク質であるラミニンの神経成長促進作用が注目され神経導管にラミニンを付加した実験も行われている.われわれは, 従来より家兎の腰背筋膜より作成した導管を筋膜結合組織管と称し, その代用血管としての可能性について検討してきたが, 筋膜結合組織管を神経欠損部に対する神経導管として用いることが出来ないかと考え基礎的な実験研究を行った.実験は12羽の体重約3kgの日本白色家兎を用いて行った.筋膜結合組織管の作成は, 家兎の腰背筋膜でシリコンロッドを包み込み, 辺縁をナイロン糸で縫合固定して大腿部皮下に2週間埋め込み, それを取り出してグルタールアルデヒドを用いて管腔構造を維持できるように硬化処理をして行った.このようにして作成した筋膜結合組織管を, その兎の一側の坐骨神経切断部に移植した.反対側にはコントロールとしてシリコンチューブを移植した.移植後3週間後, 6週間後, 9週間後の時点でそれぞれ4羽ずつ屠殺し神経の再生を確認した.また, 移植導管の切片標本を作成し, 再生神経を光学顕微鏡で観察した.その結果, 筋膜結合組織管移植群とシリコンチューブ移植群で同程度の神経再生を認めた.われわれが神経導管として用いた筋膜結合組織管は, (1) 自家組織を用いているため異物反応の心配がなく再手術による摘出も要さない, (2) 筋膜結合組織管の径を自由に変えて作成できる, (3) 管腔構造を維持できる, などの特徴がある.また抗ラミニン抗体と抗メロシン抗体による免疫染色の結果, 筋膜結合組織管にラミニン, メロシンが含まれることが確認できている.臨床的には, 外傷による神経の小欠損などの場合には直接神経縫合を行えば縫合部に強い緊張がかかることがあり, 他の部位からの神経採取を余儀なくされることがしばしばあるが, この方法を用いることで神経採取などの犠牲もなく緊張を減少させ, 神経再生をうながすことが可能になり, 神経損傷の治療方法のひとつとして良い方法になりうると考えている.
  • 横山 和彦, 長塚 正晃, 奥田 剛, 柴田 哲生, 赤松 達也, 鈴木 明, 齋藤 裕, 矢内原 巧
    2000 年 60 巻 4 号 p. 493-500
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    進行子宮頚癌の予後改善を目的に, Neoadjuvant Chemotherapy (NAC) として動注化学療法 (IA) を行い, その治療効果と問題点を同時期に放射線療法 (RT) を施行した症例と比較検討した.対象は1991年~1995年に昭和大学病院産婦人科においてIAを施行した進行子宮頚癌14例で, 臨床進行期はIIb期2例, IIIb期10例, IVa期2例である (IA群) .両側内腸骨動脈にカテーテルを留置し, リザーバーを鼠径部皮下に固定した.5-FU2500mg/bodyを左右半量ずつinfuserpumpを使用して10日間持続注入し, さらにCDDP10mg/bodyを半量ずつ10日間one shot (5min.) で注入した.同時期にRTにより治療したIIIb期17例 (RT群) と比較した.IAによる直接効果はCR (奏効) 3例 (21.4%) , PR (有効) 9例 (64.4%) , NC (不変) 1例 (7.1%) , PD (進行) 1例 (7.1%) であり, 奏効率は85.7%であった.骨盤内リンパ節腫大の認めた6症例は全例消失ないし縮小したが, 傍大動脈リンパ節腫大2例には変化がみられなかった.IA後14例中11例に広汎子宮全摘術を施行した.現在までにIIb期2例は無病生存, IIIb期10例中2例は担癌状態のまま癌死, 3例が再発 (肺, 腰椎1例, 傍大動脈リンパ節2例) , 癌死した.1例は他病死した.またIVa期の2例は癌死した.RT群17例中10例が再発 (局所再発7例, 遠隔再発3例) した.IA群では骨盤外の再発が多く (75%) , RT群では局所再発が多かった (70%) .IA群ではRT群に比較して再発までの期間が延長した (平均19.3カ月vs14.5カ月) .Kaplan-Meier法による生存率では3生率 (80%, 31.7%, P=0.023) , 4生率 (60%, 25.3%, P=0.044) は有意にIA群の方が高く, 5生率 (48%, 25.3%) でも予後が良い傾向が示された.NACにおける重篤な副作用は認めなかった.今回の検討で, NAC動注化学療法は放射線療法に比べ局所制御, 再発までの期間の延長, 生存率の改善の可能性が明らかにされた.治療抵抗例や奏効後に再発する症例も存在することより, 今後は進行子宮頚癌はNAC, 手術療法, 放射線療法, adjuvant療法を組み合わせた集学的療法の検討が必要であると思われる.
  • 岡村 康之, 池田 尚人, 松本 清, 立川 哲彦
    2000 年 60 巻 4 号 p. 501-512
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    Glioblastomaは悪性脳腫瘍の中でも, 細胞増殖および浸潤が強く, 周囲脳組織を破壊して進行する予後不良の腫瘍である.この組織の破壊は, 腫瘍細胞から分泌されるproteaseが主役を担っている.中でもmatrix etalloproteinasesやcysteine proteinases, serine proteinasesが代表的なproteaseとして知られている. glioblastomaの浸潤の場合では, 脳組織の基質の特異性により特異的なcysteine proteases (CP) が確認されている.このCPはその阻害剤により制御を受け, その調整バランスの破壊は悪性腫瘍細胞の特徴ともいえ, glioblastoma細胞ではCPの発現と悪性度は正の相関を示している.本研究ではCPの阻害剤がglioblastomaに対して如何なる作用を示し, その作用機序を解明することを目的とした.使用したglioblastoma細胞株は, T98Gと当教室が樹立したヒトglioma由来のglioblastoma cell (SRG4-1) を用い, 一定の条件下で培養した細胞にcysteine proteases inhibitor (CPI) であるALLM (0, 0.5, 1.0μM/mlの3つの濃度) を負荷し, 細胞増殖抑制効果, 細胞周期への効果, 細胞増殖抑制効果とapoptosisとの関連に関する検討を行った.今回, ALLMのglioblastoma細胞株に対する, その細胞抑制効果を見たが, 濃度差による抑制効果が認められた.これに伴う細胞周期での変化を見たところ, G2/Marrestを認めた.そこでDNA fragmentationを見たところ, ladder patternは認められなかったが, 電顕像では核クロマチンの凝集, 核の萎縮が認められた.さらにcaspase-3活性を測定し, 有意に活性の上昇を認めた.また, 免疫染色的にもTunel法やAnnexin Vによりapoptosisが起こっていることが推測され, ALLMによるglioblastoma細胞株の増殖抑制は, apoptosisが関与しているものと考えられた.
  • 松田 信泰, 小野寺 恭忠, 池内 隆夫, 甲斐 祥生
    2000 年 60 巻 4 号 p. 513-517
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    前立腺癌は予後が良いとされる高分化型腺癌であっても内分泌療法に抵抗性を示す例や, 逆に低分化型腺癌であっても著効する例をしばしば経験する.そこで, 未治療前立腺癌患者に対してFlow Cytometryによる細胞周期解析を施行し, 予後因子となり得るか検討した.未治療前立腺癌患者の35例の前立腺針生検組織を用いてFlow Cytometryによる細胞周期解析を行い病理組織学的分化度, 臨床病期および年齢との相関を検討し, 以下の結果を得た.1.前立腺肥大症と比較すると前立腺癌は細胞周期ではG0/G1期が少なくS期が多かった (p<0.01) .2.DNAヒストグラムではDNA diploidが21例 (60.0%) , DNA aneuploidは10例 (28.6%) , DNA tetraploidが4例 (11.4%) であった.前立腺肥大症は全例DNA diploidであった.高分化型腺癌はすべてDNA diploidであり, DNA tetraploidはすべて低分化型腺癌であった.病理組織学的分化度が低下するにともないDNA aneuploidの割合が増加した.3.臨床病期では35例中31例 (88.6%) がStage C以上であり, Stageでの検討はできなかった.4.DNA index1.0の症例と1.0を越える症例を比べるとDNA index1.0の症例のほうが年齢が高かった (p<0.05) .これらの結果より, 前立腺癌は前立腺肥大症と比較すると細胞周期の分布は異なっていること, 病理組織学的分化度とDNAヒストグラムには相関があること, DNA indexと臨床癌となるまでの期間との相関が示唆された.Flow Cytometryによる前立腺癌の細胞周期解析は予後決定因子として有用であると思われた.
  • 藤原 紹生, 長塚 正晃, 鈴木 紀雄, 白土 なほ子, 盛本 太郎, 千葉 博, 齋藤 裕, 矢内原 巧
    2000 年 60 巻 4 号 p. 518-523
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    思春期女子の身体発育にInsulin-like Growth Factor-I (IGF-I) とandrogenが密接に関与することが報告されているが, IGF-I産生における性ステロイド (St) の影響とその作用に性差が存在するかについては不明な点が多い.我々はIGF-Iの主な産生臓器である肝におけるIGF-I産生に注目し, ヒトの思春期前期にあたる幼若の雌雄ラットの性腺を摘除し, 肝におけるIGF-I産生におよぼすStの影響について性差を比較した.Wistar系幼若雌雄ラット50匹を対象とした.日齢14でエーテル麻酔下に卵巣摘除手術 (OVX, n=20) , 精巣摘除手術 (ORX, n=20) を施行し, それぞれに日齢15よりestradiol (E2, 0.01 nmol/body, n=5) , testosterone (T, 1nmol/body, n=5) , dihydrotestosterone (DHT, 0.1 nmol/body, n=5) を連日28日間皮下投与した.雌雄それぞれに偽手術を行い (n=5) 連日生理食塩水を投与した.日齢42に体重を測定し, 血液, 肝臓を採取した後, 屠殺した.血中IGF-IはRIA法で測定し, 肝組織におけるIGF-ImRNA発現をNorthern blot法で検討した.ラット体重の性腺摘除とSt投与による影響性腺摘除により, メスでは体重は増加傾向, オスでは減少傾向を示した.一方, St投与では, 雌雄ともestrogen投与は抑制的にandrogen投与は促進的に作用することが示された.血中IGF-I値の変化: 性腺摘除により, メスでは増加傾向を示したが, オスでは変化が認められなかった.St投与では, androgenは雌雄とも血中IGF-I値を増加させる一方, estrogenではメスはその値を低下, オスでは増加させるという性差が認められた.肝IGF-ImRNA発現の変化: 性腺摘除により, メスではその発現は増強し, オスでは変化を認めなかった.またandrogen投与は雌雄ともその発現を増強させたが, estrogen投与はメスでは抑制, オスでは増強させ, 性差が認められた.これらの変化は血中IGF-I値の変化と同様の傾向であった.幼若ラット肝におけるIGF-I産生はStにより影響を受け, ラットの身体発育, IGF-I産生にandrogenは雌雄とも促進的に働く一方, estrogenはメスでは抑制的に作用するもオスでは促進的に作用することから, IGF-Iに対するStの作用に性差があることが初めて示された.
  • 大倉 史也, 藤川 浩, 齋藤 裕, 矢内原 巧
    2000 年 60 巻 4 号 p. 524-531
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    骨芽細胞にエストロゲンとアンドロゲンのレセプターが発現し, 性ステロイドが骨芽細胞に直接作用して, 骨芽細胞の増殖および化骨に関与すると報告されている.また, ヒト骨芽細胞に種々のステロイド代謝酵素活性とその遺伝子の発現が報告されて以来, 骨芽細胞は性ステロイドの標的細胞のみならず自ら性ステロイドの代謝能を有し, その機能調節に関与している可能性が示唆されている.骨芽細胞におけるエストロゲンの作用については多くの研究報告がされているが, アンドロゲン生成については未だ不明な点が多い.今回我々は, ラット骨芽細胞におけるアンドロゲン生成代謝能を有することについて以下の実験, 観察をおこなった.ラット由来の骨芽細胞様細胞株UMR106-01, C26のcell free homogenateを用いて, [14C] testosterone (T) , [14C] androstenedione (A) とインキュベーションした.UMR106-01細胞株ではTよりdihydrotestosterone (DHT) , Aより5α-androstanedione (5α-A) の生成 (5α-reductase活性) がみられ, Tを基質とした際のKm値は42μMであった.また, C26細胞株では, AからTの生成 (17β-hydroxysteroid dehydrogenase, 17β-HSD) がみられ, そのKm値は41μMであった.骨芽細胞におけるこれら酵素のmessenger ribonucleic acid (mRNA) 発現をRT-PCR法を用いて検討したところ, UMR106-01細胞株では5α-reductase type I mRNAの発現を, また, C26細胞株では17β-HSDtype IのmRNA発現を確認した.今回, 由来の異なるラット骨芽細胞様細胞を用いて, アンドロゲン代謝能を検討したところ, UMR106-01細胞株では5α-reductaseの, C26細胞株では17β-HSDの酵素活性を認め, さらに5α-reductase, 17β-HSD mRNA発現を認めた.以上の結果から, 骨芽細胞がよりアンドロゲン作用の強いステロイドへの転換能を有していることが明らかになり, 骨芽細胞は骨の局所でのアンドロゲン代謝に重要な役割を果たしていることを示唆している.
  • 関谷 雅博, 千葉 博, 長塚 正晃, 河合 清文, 矢内原 巧
    2000 年 60 巻 4 号 p. 532-539
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    思春期は内分泌変化の著しい時期であり特に各種性ホルモンは大きな変動を示す.副腎におけるアンドロゲン分泌もまた同様であり, 恥毛等の二次性徴の発育に関係している.また, その分泌開始の時期が性腺系の発動の時期に先んずることおよび副腎性アンドロゲンの過剰分泌が性早熟をきたすことがある事より, 思春期発来機構への関与が示唆されている.しかし思春期女子における副腎性アンドロゲンの動態に関する詳細な報告は少ない.そこで今回我々は代表的副腎性アンドロゲンであるdehydroepiandrosterone (以下DHAと略) , その抱合型であるdehydroepiandrosterone-sulfate (以下DHA-Sと略) androstenedione (以下△4Aと略) , androsterone (以下5α-Aと略) , androstanediol (以下5α-Adと略) の血中値を6歳~17歳の思春期女子120名を対象として測定しその動態, および初経発来との関係を検討した.DHAは8歳ころより増加の傾向を示すが, 特に11~12歳にかけての増加が著しい.DHA-Sは8歳以降年齢とともに漸増する.△4A値は初経発来以前は著変なく初経発来以降緩やかに上昇する.5α-A値は8歳~9歳にかけ有意に増加し以後年齢とともに漸増する.5α-Ad値は上記各ホルモンと異なり, 初経発来時期の11~12歳にかけ有意に低下し, 未初経発来群は初経発来群に比し高値を示した.以上のようにDHA, DHA-S, △4A, 5α-A値は初経発来群が未発来群に比し高値の傾向を示し, かつ年齢とともに増加傾向を示す.一方5α-Ad値は初経発来時期の11歳~12歳にかけ有意に低下した.以上の成績はDHA, DHA-S, △4A, 5α-Aなど副腎性アンドロゲンが思春期性成熟に従って増加する一方, 中枢抑制作用をもつ5α-Adが初経発来周辺期に有意に低下していることより, 初経発来機構にこれらのステロイドの変化が深く関与している可能性が示唆された.
  • 松本 忠重
    2000 年 60 巻 4 号 p. 540-543
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近我々は若年者の腰椎分離症を2例経験したので若干の文献的検索を加え報告する.若年者でありスポーツおよび生活様式を考え, ファミリーとのインフォームド・コンセントのもと保存療法を選択した.症例1: 14歳男性.主訴: 腰痛.経過; 平成11年7月2日スケート中転倒し腰痛発症.但し以前よりの持続性の慢性腰痛はときに訴えていた.7月3日当院初診となる.所見; 神経学的所見 (-) 下部腰椎に圧痛を認めるのみ.検査; レントゲン上, L5分離症.辷り症 (-) .MRI (軽度椎間板の変性のみ) .骨シンチグラム取込み (-) .治療; 対症療法のみとし, 症状再発なら手術療法と考えインフォームド・コンセントを行った.症例2: 16歳男性.主訴; 腰痛, 神経学的欠損症状 (-) .既往歴; スポーッは剣道, 慢性腰痛 (-) .経過; 平成11年3月頃疼痛出現, 近医受診後, 鍼治療を行うも効果 (-) .所見: 腰痛および左の座骨神経痛.検査; X-P上第4第5腰椎に両側性の分離 (+) .第4では亀裂型, 第5では偽関節型.第4第5腰椎に取り込みがあり保存療法の適応と考え, 体幹ギプス固定後, 硬性体幹装具に変更.症状を伴った若年者腰椎分離症の治療については, 諸家の報告がある.治療法に於いて共通することは, 治療難渋例にのみ手術適応がある.保存療法の骨癒合率は, 約50%程度であるとの報告もある.成績不良例の多くは偽関節型も保存療法で治療しており, 骨の改変の期待できないと考えられる症例にも行っている.保存療法の適応を骨シンチグラフイーを行う事により, 正確に行った.
  • 山口 真彦, 葛目 正央, 松本 匡史, 松宮 彰彦, 吉澤 康男, 真田 裕, 熊田 馨, 楯 玄秀
    2000 年 60 巻 4 号 p. 544-548
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    石灰化を伴った脾類上皮嚢胞の一例を経験した.症例は35歳, 女性で健康診断にて脾嚢胞を指摘され, 脾臓摘出術を行った.脾嚢胞は長径7.5cmの単胞性で, 嚢胞液中のCA19-9, LDH, 総コレステロール値が高く, 嚢胞壁の大部分は硝子変性, 石灰化を伴った線維性結合組織からなり, コレステロールを貪食した泡沫化マクロファージの集積と炎症細胞浸潤を認め, 動脈硬化性病変に類似した慢性炎症像を呈していた.嚢胞壁のごく一部に上皮細胞を認め, 真性嚢胞と診断した.嚢胞液中のコレステロール値が高い真性脾嚢胞ではそれを貪食したマクロファージの集積と炎症細胞浸潤により, 上皮細胞の変性, 壊死を招いて徐々に石灰化が進行することが示唆された.
  • 豊島 修, 森 義明, 堀部 有三, 長谷川 幸祐, 藤元 流八郎, 加藤 崇之, 市川 博雄, 福井 俊哉, 河村 満, 藤田 省吾, 池 ...
    2000 年 60 巻 4 号 p. 549-551
    発行日: 2000/08/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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