昭和医学会雑誌
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スキージャンプ競技の踏切動作に関する研究
梅澤 香貴
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2000 年 60 巻 4 号 p. 471-486

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抄録

全日本スキー選手権大会に出場した33選手の実際の競技場面でのスキージャンプのサッツ動作についてAPASのコンピューターで3次元動作分析を行った.33選手を純ジャンプ群, 複合ジャンプ群, ジュニア群の3群に分けて, それぞれの下肢3関節の角速度, 踏切時の助走速度を検討した.純ジャンプ群はLarge hill, 複合ジャンプ群およびジュニア群はNormal hillでのジャンプであった.1.純ジャンプ群と複合ジャンプ群にだけ股関節と膝関節の角速度のピークは同期していた.また, 足関節の底背屈はわずかに行われていた.2.純ジャンプ群の股関節の角速度ピーク値は809~1227, 平均968.9deg/s, 純ジャンプ群の膝関節の角速度ピーク値は620~1124, 平均875.8deg/sに対して, 複合ジャンプ群の股関節のそれは, 439~565, 平均508.6deg/s, 膝関節のそれは469~670, 平均553.5deg/sであった.3.ジュニア群の股関節, 膝関節のカーブは, 種々なカーブを示した.そのピーク値は股関節が269~617, 平均463.6deg/s, 膝関節が320~696, 平均463.5deg/sであった.4.ナショナルチームのほとんどの選手はサッツ動作の際に, 足関節の角速度の最大値にしても, 300deg/s以下であり, ジュニア群の半数以上の選手が300deg/s以上であった.5.純ジャンプ群の助走速度は2312~2372, 平均2333.9cm/sで, take-offの0.1秒前よりサッツ動作を開始する.複合ジャンプ群のそれは2319~2358, 平均2333.3cm/sで, take-offの0.1秒前よりサッツ動作を開始する.ジュニア群のそれは1868~2322, 平均2112.7cm/sで, take-off0.1~0.2秒前よりサッツ動作を開始し, ばらつきが目立った, 以上より, サッツ動作は1.股, 膝関節の角速度のピークは同期していた.2.統計学的に股, 膝関節の角速度は高いほど, 飛距離を長くしていることがわかった.3.足関節はカンテを蹴るのではなく, 押すのである.4.各ジャンプ群の足関節速度に有意差はなかった.5.統計学的に助走速度が速いほど飛距離を長くしていることがわかった.垂直抗力や空気抵抗に負けないで, サッツ動作を起こすためには腰背部, 殿部や下肢の筋力も重要である.

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