昭和医学会雑誌
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マウスPHAPIアイソフォームのcDNAクローニング
本橋 克利萩原 民雄渡辺 綱正山科 聡子下島 桐竹田 稔
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2000 年 60 巻 4 号 p. 462-470

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抄録

PHAPIはpp32, LANP, APRILの名称でも知られる分子量約32kDaの核タンパク質であるが, 単一動物種から報告された一次構造は同一でなく多様性があるものと予想される.我々はこのタンパク質の多様性を明らかにするため, マウス胚からcDNAのクローニングを行った.マウスには基本となる少なくとも2つのタイプのアイソフォームが存在していた.これらはいずれも分子量約32kDaのタンパク質であり, これまでに報告されているPHAPIタンパク質は2つのタイプのいずれかに分類することができた.また, これら基本となるアイソフォームにはさらに翻訳領域内において欠失が認められる多数のバリエーションが存在していた.欠失部位の大部分はC末端側の酸性アミノ酸の繰り返し配列内に集中しており, 核移行シグナルの欠失, プロテインキナーゼによるリン酸化部位の欠失など様々であった.これらアイソフォームのうちの一群はマウス7日胚において既に発現しており, 発達過程においても組織においても発現量の変化はなく, ハウスキーピング的な挙動を示した.これに対してもう一方のタイプはマウス11日胚以降に発現が見られ, 時間経過にともない発現するアイソフォームの種類に変化が見られた.また, 組織ごとに発現パターンが異なり, このタイプのアイソフォーム群は構造的にも機能的にも多様性があることを示唆している.PHAPIの機能活性や生理機能については未だ不明であるものの, このタンパク質の多様性は機能を考える上で重要な要素であると考えられる.

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