昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
進行子宮頸癌に対するNeoadjuvant Chemotherapyとしての動注化学療法の検討
横山 和彦長塚 正晃奥田 剛柴田 哲生赤松 達也鈴木 明齋藤 裕矢内原 巧
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 60 巻 4 号 p. 493-500

詳細
抄録

進行子宮頚癌の予後改善を目的に, Neoadjuvant Chemotherapy (NAC) として動注化学療法 (IA) を行い, その治療効果と問題点を同時期に放射線療法 (RT) を施行した症例と比較検討した.対象は1991年~1995年に昭和大学病院産婦人科においてIAを施行した進行子宮頚癌14例で, 臨床進行期はIIb期2例, IIIb期10例, IVa期2例である (IA群) .両側内腸骨動脈にカテーテルを留置し, リザーバーを鼠径部皮下に固定した.5-FU2500mg/bodyを左右半量ずつinfuserpumpを使用して10日間持続注入し, さらにCDDP10mg/bodyを半量ずつ10日間one shot (5min.) で注入した.同時期にRTにより治療したIIIb期17例 (RT群) と比較した.IAによる直接効果はCR (奏効) 3例 (21.4%) , PR (有効) 9例 (64.4%) , NC (不変) 1例 (7.1%) , PD (進行) 1例 (7.1%) であり, 奏効率は85.7%であった.骨盤内リンパ節腫大の認めた6症例は全例消失ないし縮小したが, 傍大動脈リンパ節腫大2例には変化がみられなかった.IA後14例中11例に広汎子宮全摘術を施行した.現在までにIIb期2例は無病生存, IIIb期10例中2例は担癌状態のまま癌死, 3例が再発 (肺, 腰椎1例, 傍大動脈リンパ節2例) , 癌死した.1例は他病死した.またIVa期の2例は癌死した.RT群17例中10例が再発 (局所再発7例, 遠隔再発3例) した.IA群では骨盤外の再発が多く (75%) , RT群では局所再発が多かった (70%) .IA群ではRT群に比較して再発までの期間が延長した (平均19.3カ月vs14.5カ月) .Kaplan-Meier法による生存率では3生率 (80%, 31.7%, P=0.023) , 4生率 (60%, 25.3%, P=0.044) は有意にIA群の方が高く, 5生率 (48%, 25.3%) でも予後が良い傾向が示された.NACにおける重篤な副作用は認めなかった.今回の検討で, NAC動注化学療法は放射線療法に比べ局所制御, 再発までの期間の延長, 生存率の改善の可能性が明らかにされた.治療抵抗例や奏効後に再発する症例も存在することより, 今後は進行子宮頚癌はNAC, 手術療法, 放射線療法, adjuvant療法を組み合わせた集学的療法の検討が必要であると思われる.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top